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三正義:殺されかける正義の味方

「やっぱり、慣れない道なんか使うもんじゃねえな」


俺は、迷子になったことに対して少しばかり焦りを感じながら、自分の頭をかきむしる。


「…まあ、歩いていればそのうち着くかな」


とりあえず路地裏から出るまで歩き続けることにする。幸いなことに、まだ午前中だ。

バイトには余裕で間に合う。


「そういえばバイトの張り紙見つけたのも路地裏だったっけ…」


先週、俺は路地裏で壁に張り紙を見つけ、悪屋でバイトの面接を受けてみることにしたのだ。


「なんでこういう、人目に付きにくい場所に貼ってたんだろうな…」


まあ、「悪の組織のバイト募集」と書かれたチラシを駅前で配ったりとか新聞に挿んだりとか出来るわけないが、もっと他にやりようはあった気もする。


そんなことを考えていると、何者かの気配を感じる。

前方に誰かいるようだ、声が聞こえる。


「なんで悪の組織の幹部である私がこんな地味な作業を延々と繰り返さなきゃならないのよ。それこそバイトにやらせるべきでしょう、まったく…」


暗くてよく見えないな…誰だ?


「こんな人目に付きにくいところに張り紙を張り付けなくても、もっとやりようはあると思うんだけど…」


その人物は独り言を呟きながら、こちらへと歩いてきた。手には紙の束を持っている。


あれ?この声って、もしかして…


相手の正体は紫さんだった、よかった、事情を説明して悪屋への道を聞こうと一歩踏み出す…のだが。


「誰だっ!?」


紫さんがこちらに気付き、身構えた。

まずいな、警戒されている。

…ああ、いつもの事か。


「待ってくれ。俺は別に怪しい者じゃない。話を聞いてくれ」


「その制服!ヒーロー学園の生徒かっ!?」


まるで話を聞いちゃくれない、…っていうか制服着てたの忘れてた。

紫さんは敵対心をむき出しにしたまま、チラシの束を放り捨て、腰からサバイバルナイフを抜き放つ。

物騒だなオイ。


「こんなところを見られてしまったからには、死んでもらうしか無さそうだな」


物騒だなオイ。


「こんなところって言っても壁に悪の組織のチラシ貼ってただけで…うわっ!?」


紫さんがナイフを俺の首目掛けて一閃。

俺はヒーロー特有の運動神経と動体視力でそれを躱し、後ろに跳び退る。

紫さんが追撃してくる。

物騒…ってか危険だよオイ!


「死ねっ!」


「ちょっと待ってくれ!!」


紫さんの右腕を掴む。


「くそっ!はなせっ!」


「なあ、頼むから落ち着いてくれ。確かに俺はヒーロー学園の生徒だが、別にあんたに危害を加えるつもりは無いんだよ」


「え?そうなの?」


紫さんはポカンとした様子でこちらを見てくる。

よし、ようやく話が通じた。


「ああ、ちょっと道に迷ったんだ。この路地裏の出口を教えて欲しいだけで、あんたが悪の組織の人間だとしても、戦うつもりは無い。出口さえ教えてくれればそれでいい」


「なあんだ、そうだったのか。正義のヒーローだからと襲い掛かってしまって悪いな」


紫さんが安心したように笑う。

案外、笑うとかわいいなこの人…







「…とでも言うと思ったか?」


グサッ


「…あ?」


思わず間抜けな声が出る。腹にはナイフが刺さっていた。だが、俺の脳は痛みを知覚していない、刺されたのだと、頭で理解していても身体が理解できていないのだ。

今起こったことが、余りにも唐突過ぎて。


「ナイフは一本だけだと思ったか?残念、予備のナイフは腐るほど隠し持ってるんだよ」


そう言って紫さんは左手・・に持っていたナイフを俺の腹から抜き、もう一度俺の腹に突き刺し、腰から新しいナイフを取り出す。

そこでようやく、俺の腹の痛みが脳に伝わり、俺は腹の痛みを認識する。


「―――――――――っ!?」


あまりの痛みに俺は苦悶に満ちた叫び声を上げながら膝から崩れ落ちる。

腹には一本のナイフが刺さっており、そこともう一箇所、最初に刺された所から大量の血が流れ出ていた、思わず腹を押さえる。もちろんこんな事で出血が止まるわけがない。

痛みを堪えながら顔を上げ、紫さんに尋ねる。


「な…んで?」


「はあ?悪の組織がヒーローを倒すことに理由がいると思ってんの?どんだけアマちゃんなワケ?さすが正義のヒーローね、平和ボケしてるわ」


「戦う気はねえって…言ったのに…」


周りの地面が赤く染まる。


(これ、全部俺の血かよ…)


「だからさ、アンタに戦意が有ろうが無かろうが関係ないって言ってんのよ。アタシは悪の組織の幹部、アンタは正義のヒーロー、戦う理由なんてそれで十分でしょう?」


紫さんがこちらに近づいてくる。

紫さんは右手に持っていたナイフの柄を逆手に持ち、振りかぶる。

その瞬間、俺は自分の能力を発動―――――


ガラガラガラガラガッシャーーーーン!!


―――――俺の背後で轟音がした。いったい何が起こったというのだ?

後ろを振り返ると、すぐ目の前に青い壁があった。

なんとなく聞いたことのある声が聞こえてくる。


『おいブルー!ちゃんと右手を操縦しろよ!』


『無理言うんじゃねえよレッド!五人がそれぞれ違う箇所を操縦しているんだから、息合わせるの難しいんだよ!』


『二人ともうるさいよっ!さっさと起き上がらないと!』


『でもイエロー!コイツがみんなと息を合わせないのが悪いんだぞっ!』


『レッドさんもブルーさんもうるさいです、それに、レッドさんは頭担当だから技名叫んでるだけで、操縦してないでしょう?』


『そんなことねえよピンクッ!ちゃんと首動かしてるよ!』


俺の背後にあった壁…否、巨大ロボットはゆっくりと起き上がり、建物の残骸を踏み潰しながら去って行った。


「「は?」」


何が起こったのか解らずに、一瞬だが動きが止まってしまった。

だがこれは好都合だ、紫さんが呆けているうちに逃げよう。

俺は自分の腹からナイフを抜き、紫さんに投げつける。


「なっ!?」


紫さんは動揺しつつも持っていたナイフで反射的に防御する。


「痛ってえなチクショウ!」


俺は痛みを堪えながら立ち上がり、建物の残骸へと走り出す。

だが、明らかにフラフラで、大したスピードも出ずにいた。


「待てっ!」


紫さんの怒鳴り声が聞こえ、それに紛れてヒュンッ、という風切り音が聞こえる。

俺の直感が警鐘を鳴らす。

後ろから何か飛んできているのだ。

慌てて身をひねり、死角から飛んできたそれを躱す。


ナイフだ。


飛んできたナイフは直前まで俺が立っていた所を通過し、遠くの地面に突き刺さった。

俺は急に身をひねったせいで受身を取れず、バランスを崩して地面に倒れこむ。


ゾクリ…


再び直感が俺に危険を知らせる。

咄嗟に俺は地面に落ちていたコンクリートの欠片を拾い上げ、振り向きざま後ろに向かって投げつける。


ガキンッ!


鈍い音を立てて、ナイフとコンクリートがぶつかる、二本目のナイフだ。


「チッ!」


紫さんが両手にナイフを持ってこちらに向かって走ってくる。俺はコンクリートを拾い上げつつ、立ち上がる。視界には紫さんの姿を収めたままだ。


「いい加減死ねっ!」


二本のナイフを同時に投げつけてきた、俺は一本をコンクリートで撃ち落とし、もう一本を躱す。


(ヤベえな…)


一般人ならば、あまりの痛みに立つことすらままならないであろう傷を負いつつも、常人には備わっていない、ヒーローの持つ強靭な精神力と体力で腹の痛みを我慢してなんとか動き回っていたが…


(目が霞んできた…)


血を流しすぎたかな、さすがにこれはヤバイ。冗談抜きに…


バタリ


倒れる。

もうまともに立つこともままならなかった。

痛みは我慢できても、大量出血によるダメージはどうしようも無い。血が流れていくのと一緒に自分の命も流れ出ているような気がする。

意識が朦朧とし、視界が明滅する。


「なんだ?もう終わりか?」


紫さんがナイフを持ったままこちらへと歩み寄ってくる。


もはや体はいうことを聞かず、体が鉛のように重かった。

路地裏なんかに入ろう、と思いついた少しばかり過去の俺を呪いながら、静かに目を閉じる。


「だれだお前?新手か?」


紫さんの声だ、何かあったのだろうか?

俺は目を開ける。


視界が霞んでいる中、辛うじて見えたのは、ヒーロー学園の制服を着た、

一人の男の姿だった。

ああ、もう安心のようだ。

俺は再び静かに目を閉じる。

それでも意識は保ったままだ。


・第三者視点


「クックック、俺が何者か?だと?まさか俺の顏を知らない者がまだこの世に残っていようとはな…」


その男は春だというのに顔をマフラーとバンダナで殆ど覆い隠し、その隙間から右目を覗かせていた。左目はバンダナで隠している。


「そんなに知りたいのなら教えてやる。だがこの名を聞いたとき、貴様は真の絶望というものを味わうことになるだろう。」


指貫グローブをはめた手で、紫に向かってビシッ!と指を指して言う


「我が名は佐々木卓郎!冥界の支配者にしてこの男の闇の盟友、そしてっ!貴様を奈落の底へと誘う者だ!」


明のクラスメイトだった

キャラ紹介なう


佐々木卓郎


中二病

能力は『回復』

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