一正義:正体は正義の味方
俺は夜中の十時頃、自分の住んでいるアパートへと帰り着いた
今は戦闘員の格好はしておらず、覆面は鞄の中へ、全身タイツは上に普段着を着て隠している
俺は妹の亜美とアパートで二人暮らしだ
ちなみに、俺のバイトのことを知っているのは妹だけだ、学校の友達なんかに教えて噂が広まると面倒だからな
家の鍵を開けて中に入ると、六畳一間の部屋の奥から亜美が顔を覗かせた。
その側頭部にはヒーローモノのお面を着けており、知らない人が見れば、夏祭りにでも行ってきたのかと思う事だろう。
実はこれはコイツのお気に入りのお面で、起きてる間はずっと着けている。
そこまでこのお面を気に入っている理由は簡単だ。
好きな言葉は正義
趣味は正義のヒーローごっこ
将来の夢は世界を自分の正義の炎で燃やし尽くす事
つまり、コイツは根っからのヒーロー大好き少女なのだ。
まあそんな事はどうでも良い。伏線でも何でも無いからな。
「ただいま」
「お帰り―、お兄ちゃん。ご飯にする?お風呂にする?それとも~ワ・タ・シ?」
「風呂に入ってから飯にするよ」
「分かったー、その服の下に来てる全身タイツ、ちゃんと自分で洗濯してね」
「はいよー」
亜美のジョークを受け流しながら洗面所へと向かい、普段着とその下来ている全身タイツを脱ぎ、洗濯機に入れる
次にカバンの中から覆面を取り出し、洗濯機に放り込む
さて、全身タイツを脱いだら俺はどうなるか?
答えは全裸だ、すっぽんぽんだ、ヌードだ、ネイキッドだ。
全身タイツの中に下着などは着用していなかったため、
俺は今日一日中ノーパンだった事になる。
…ド変態じゃねぇか
俺は風呂場へと入っていき、シャワーを浴び、体を洗う
…野郎の入浴シーンなんか興味ないって?
では、俺が風呂に入っている間に俺の正体について説明しようか。
知ってのとおり俺の名前は赤松明、高校一年生だ
ただし、俺が通っているのは普通の高校ではない、ではどんな高校かというと…
「お兄ちゃん、明日はヒーロー高校の入学式なんだから、早寝しないとだめだよっ!」
…亜美から声がかかる
そう、俺の通っている高校は、いや、正確には俺のこれから通う高校は『正義のヒーロー候補育成学校高等部』、通称『ヒーロー高校』だ。初等部と中等部も合わせて『ヒーロー学園』と呼ばれている。
この学校は日本中から「正義のヒーローの才能がある子供たち」、つまり特殊な力に目覚めた子供を集め、初等部、中等部、高等部と小中高一貫教育、学費はかからず、卒業した者は「ヒーロー」として必ず正義の味方の組織に就職できるのだ。
俺は今年の冬に中等部を卒業し、明日から高等部に入学するというわけだ。
「そろそろ上がるか」
俺は風呂から上がり、体をタオルで拭いた後、妹が用意してくれていた下着と寝間着を着る
「今日の晩飯なんだろう?」
そういえばバイトに集中しすぎて昼飯を食っていなかった、腹がグルルルルルルルル、と獣のうなり声のような音を出す。
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四月二日、入学式の日だ。
ジリリリリリリリリリリリリリ……
目覚まし時計が鳴っている
朝だ
眠い…
たしか、昨日は晩飯を食った後、そのまま布団に倒れこみ、眠りについたのだったか…
隣の布団に目を向けると亜美がすやすやと寝ていた
次に目覚まし時計に目を向ける
時計は八時を指していた
(確か入学式は八時から…)
「うおああああああああああっ!?」
布団から跳ね起きる、眠気はもう完全に吹き飛んでいた
「おい!起きろ亜美!遅刻だっ!」
必死に亜美を揺り起こす
「まっ、まさかこんなにも大きな冷凍カジキが釣れるなんてっ!?…ムニャムニャ…あれ?もう朝?」
なんて寝言だ、あと冷凍カジキは釣るものじゃないぞ?
亜美は放置して急いで学校に行く支度を始める
入学式なので必要なものはほとんど無い、制服さえ着ておけばいいだろう。
そう思い、学校の制服に手を伸ばす
(あ、戦闘スーツ)
今日の学校は午前中に終わるだろう、時間的にはバイト迄には十分な時間がある。しかし、わざわざ家に帰って戦闘服を着てからバイトに行くのは面倒だな、学校からの方角は逆だし
(着ていくか…)
制服の下に戦闘スーツを着ておいて、入学式が終わったら適当に時間をつぶしてそのままバイトに行こう、どうせ誰にもバレないだろう、それに、通常授業になれば時間の都合上、嫌でも着ていかなければならないからな
そう思って戦闘スーツを探す
(確か昨日は洗濯機に放り込んで…)
その瞬間、嫌な予感がした、全身タイツは洗濯機で洗っても大丈夫なのか?
洗面所へと直行、洗濯機の蓋を開ける
(無い…)
「おい亜美!俺の全身タイツはどうした!?」
寝室へと戻り、妹に尋ねる、少々声がでかくなったがしょうがない、こちらは急いでいるのだ
「キャッ!?今着替え中なんだから出てって!」
「お前の着替えシーンなんかどうでもいいよっ!俺の全身タイツをどこへやった!?」
寝室では半裸の妹が制服に着替えていた、慌てているのだろう、ボタンを掛け違えている
「知らないよっ!ベランダに干してるんじゃない!?いいから早く出てって!」
「分かった!ボタンはちゃんとしとけよ!」
ベランダの窓を開ける、妹の服や、俺の服、靴下、パンツ、あとは真っ黒な靴下が片方だけと同じく真っ黒なハイソックスが片方…あれ?この靴下とハイソ、なんか形が…
「縮んでるじゃねえか!!?」
覆面は靴下サイズに、全身タイツはハイソレベルにまで縮んでいた、これでは着れない、履くことはできそうだが…
「一応持っていくか…」
俺は全身タイツだった物を回収し鞄に入れる、制服に着替え、鞄を手に取って家から飛び出す
「行ってきます!」
「ああっ!待ってよお兄ちゃん!」
亜美を無視して学校へ走る、待つ必要は無い、あいつは能力使えば俺より速いから…
「早くしないと置いてくよーーー!」
俺の隣を亜美がすさまじい速さで通り過ぎていく、時速六十キロくらいだろうか?あいつにとってはジョギング程度の速さだな。
というかもう追い抜かれた、少しショックだ
亜美のヒーロー能力は『加速』と言って、まあ文字通り加速する力だ。
「周囲の動作がスローモーションになって、自分だけ普通の速度で動ける」というイメージだ。
もちろん限界はあるがな。
ヒーローにはそれぞれ違った能力がある。
空が飛べる、変身する、力が強くなる、視界を広げる、傷を癒す、ビームを放つ、それこそヒーローの数だけ能力はあるといっても過言ではない
…まあ似たような能力はたくさんあるらしいが
そんな風に、ヒーローは能力こそ違うが、一つだけ共通点がある、身体能力が高く、動体視力や集中力、さらには勘まで常人を凌駕している、だからこんなこともできるのだ。
「ちょっと急ぐか」
俺は足に思いっきり力を込め、跳躍。近くの民家の屋根に飛び乗り、忍者のように屋根から屋根へと飛び移る。
こっちの方が速い、信号も待つ必要なく飛び越えれるし。
…不法侵入だがな、もし誰かに見つかれば即逮捕だろう。
まあ、そんなヘマはしないが。
徒歩で約三十分、全力で五分、家から学校までかかる時間だ、能力を使えばその限りではないが…俺の能力は少し使い勝手が悪い。
そんなことを説明しているうちに学校が見えてきた
「まあ、遅刻は決定か」
キャラ紹介なう
黒内結
武器は不明(考えてない)
悪屋の首領ポジション、ただし肩書きだけ
姉妹の一番上
二十二歳