三悪:シフト表と全身タイツ
この町によく出没する正義のヒーローの細かなデータや、その本拠地の予想地点、組織の予算や町の侵略の計画などが書かれた書類を整理しながら、俺は事務所の時計を見る。時計は午後八時五十分を指していた。道理で疲れているわけだ、今日は朝八時からずっとここで戦っていたからな、書類と。
あれ?なんか労働時間がおかしいような…
…っていうかバイトにかなり重要な書類見せちゃってるよね?大丈夫かこの組織?
「戦闘員A、もう帰っていいぞ。っていうか帰れ」
紫さんに命令される、今日の仕事はこれで終わりのようだ。慣れない書類仕事なんかやったから流石に疲れた、まあこれだけ働けば誰でも疲れるか、いくら俺が…おっと、話が脱線した
「了解しました。お疲れ様です」
俺は机の上に置いていた鞄を手に取り、紫さんに挨拶して家に帰ろうと…
「やっぱ待て、戦闘員A」
呼び止められた。俺は出口を向いていた足を方向転換、紫さんの座っているソファーの方を向く
「何でしょうか?」
「まあそこに座れ」
今日は朝からずっと働き続けていたのだ。早く帰りたかったが、俺はその様子をおくびにも出さず、紫さんの対面のソファーに座る
やはり2メートルの距離は空いたままだ
「アンタ、明日から学校があるんだろ?シフトを決めておこうと思ってさ」
説明がかなり遅れたが、今日は日曜日だ。昨日の面接が土曜日である。
なるほど、バイトに行く日と休む日、バイトの時間はしっかりと決めておかねばなるまい。
「まず、お前の高校は何時に授業が終わるんだ?」
シフト表にバイトの時間をき込んだりはしないのだろうか?紫さんは今、手に何も持っていない
「十七時です」
「高校からここまで来るのに何分かかる?」
「徒歩で三十分程ですかね」
「部活には入っているのか?」
「いえ、帰宅部ですが…」
「そうか、平日は毎日午後五時時三十分迄にはここへ来てろ」
「はい、分かりま…え?」
「午後十時まで働いたら帰ってよし、土曜は午前八時から午後十時まで、日曜は休みをやる、以上」
「え?あの…それはいくらなんでも働きすぎじゃないでしょうか?」
「ああ、お前はバイト経験無いんだったな。どこのバイトもこれぐらいは普通だぞ?」
「そうなんですか?」
知らなかった、バイトというのものは想像以上に大変なようだ
「まあ、しっかり働くといい(コイツ、なんでこんなに騙されやすいんだ…?)」
こうして、無事にシフトも決まり、俺は家へと帰って行ったのだった
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・第三者視点
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午後十時頃、事務所の二階、悪屋の本部で紫は二人の姉とソファーに座りながらティータイムを楽しんでいた。
ソファーの前にあるテーブルの上にはケーキを乗せた皿が三つ、と紅茶を入れたカップが三つ、葵は優雅な手つきで紅茶を啜り、話を切り出す
「紫、ちゃんと仕事してましたか?まさかあたし達が居ないからって、タイツくんに仕事押し付けたりとかしてないでしょうね?」
「そうだぞ紫、お前の怠け癖は治したほうがいいぞ?ただでさえやるべき仕事が溜まってるっていうのに…ハァ、嫌なことを思い出してしまった」
一番上の姉、結が続けて言い、憂鬱そうに溜息をつく
「それは心配する必要なくなったよ、結姉さん、もう全部終わったから」
紫がそう告げると、葵が困惑した様子で尋ねる
「全部終わったって…何が?」
「何がって溜まってた仕事だよ、戦闘員Aが全部片付けていったんだ」
紫に言わせれば、どれだけやってもキリがなかった仕事をあのバイトはたった半日で終わらせたのだ。常に戦闘スーツを着ていることを除けば完璧と云わざるを得なかった。
それを聞いた姉二人の反応はというと…
「「…え?」」
紫はテーブルに置かれていたケーキを一口食べ、呟く
「あいつを雇ったのは正解だったわけだ」
キャラ紹介ナウ
黒内葵
紫の双子の姉
『冷凍カジキの刑』の執行者