十二正義:さよなら全身タイツ
お報せ:
あらすじ を 変更 しました。
キーワード を いくつか 削除 しました。
ようやく 主人公 の 能力 が 登場 します。
ヒーロー の 能力名 に ルビ を 振りました。
「はあ……」
思わず溜息が零れ出る。
この状況から察するに、作戦は失敗だという事だろう。
俺の目の前には戦々恐々といった様子のタケシと、そんなタケシを同情気味に見つめる爆田と篠川の姿。
ちなみに、布山は相変わらず熱心に、壁の穴を塞ごうとベニヤ板に釘を打ち込み続けていた。
…というか、そんな作業は後にしろよ。
爆田たちを見習え。この人達は突然のタケシの登場にも素早く対応して、もう一丁取り出した拳銃をタケシに向けているぞ?
タケシは長い金髪を肩の後ろに掃いながら、爆田たちの方へと向き直り、やる気なさげに腰に手を当てると言った。
「ばれちまった以上、もう演技は止めだ。てめぇらの持つ情報を、一つ残らず俺に寄越しな。でないと、てめえらを殺す」
オイオイ、どこの独裁者だ?
「言っておくが、悪屋には、お前たちの欲しい情報は無いぞ?それに…」
爆田はタケシの脚へと視線を落とし、
「膝が震えているぞ?そんな状態で戦えるのか?」
爆田の指摘に、タケシは舌打ちで返す。
「冷凍カジキの刑…トラウマになりそうだよ。…まあ、んな事ァどうでも良いんだよ。悪屋に情報が無いとしても、手に入れる手段なら幾らでもあるんじゃねえのか?三姉妹…いや、四姉妹の皆様方の親のコネでも使えよ」
タケシはそう言いながら俺にそっと目配せする。
四姉妹…なるほど、きっと美香が葵さん達の妹であることを暗に伝えているのだろう。
しかし、手段が幾らでもある、というのはいったいどういう事だ?
というか、親のコネ?何の話だ?
「葵から話を聞き出したのか…言っておくが、葵たちは家出してきたのだ。つまり、お前の提案はしたくても出来ない。するつもりも無いがな」
「家出?へえ…」
タケシは納得したように頷く。
というか…
「おい、なに勝手に話を進めてやがる。俺に分かるように説明しろ」
「…まあ、俺の観察眼によると、嘘はついてねえようだな。だとしたら、ここに来たのはとんだ無駄足だったってワケだ」
こら、無視するな。
ちなみに、タケシは能力を使って他人の嘘を見破ることも出来たりする。
相手の視線の動きや表情から察知できるそうだ。
全く、便利な能力だ、俺の物と交換してほしいくらいだ。
「簡単に逃がすと思うか?俺たちを舐めるのも大概にしろ」
爆田の篠川がタケシに向かって狙いを定めると、二回、銃声が鳴り響く。
しかし、弾丸がタケシの体を貫くことは無かった。
「大した速度と威力だな。おっかねえよ、その銃。撃たれた方はたまったもんじゃねえぜ。なあ明?」
しっかりと避けているくせに、何を言ってるんだコイツは。
そもそも、弾丸を視認するどころか、銃について全く詳しくない俺が、銃の威力の良し悪しなんて分かる訳が無いだろう。
しかし、この状況はヤバイ。
実力行使に出るにしても、流石に多勢に無勢という物だ。
いくらヒーローたる俺たちが、常人とはかけ離れた運動能力を持っていようとも、銃弾一発食らえばそこで試合終了だ。
タケシだって、何でもなさそうにしているが、銃弾を躱すのはかなりの集中力を必要とする筈だ。
長続きするものではないだろうし、そもそも実力行使に出る理由が無い。
ここで採るべき最良の選択と言えば…
「タケシ、俺に構わず逃げろ」
「そうだな」
タケシは何も躊躇する事なく、修復中の壁に向かって突進し、そのままベニヤ板を突き破って姿を消したのだった。
「…あれ?ここってもう少し躊躇いを見せる場面じゃないの!?仲間を見捨てる事の後ろめたさを感じながらも、目的の遂行のために涙を呑みながら去っていく場面じゃないの!?」
一人取り残された俺に、爆田は少し考え込むと…
「簡単に逃げられたな…まあいい。美鈴、アレを用意しろ」
指示を受けた篠川はスイッチを取り出し、ドクロマークの描かれた赤いスイッチを押した。
すると、俺の真下の床が割れ、下から一本の黒い筒が生えてきたのである。
一見すると大砲のようだが…というか、大砲にしか見えないのだが?
そのまま大砲は俺の頭まですっぽりと飲み込んだところで、動きを止めた。
「…なんだこれ?」
前述したとおり、俺の体にはダイナマイトが巻きつけられている。
そこからは一本の導火線が伸びており、どういう訳だろう?それは大砲の底へと続いているのである。
まさかとは思うが、ダイナマイトの導火線が、そのまま大砲の導火線にでもなっているのだろうか?
いやいや、そんな事がある訳が無い。もしそうならば、これは人間大砲という事になる。
もちろん、砲弾は俺だ。
「アルファ。貴様の全身タイツフェチと同様に、俺は爆弾フェチであり、爆薬フェチであり、爆発フェチである。そんな俺が、昔から心底叶えたいと考えていた夢…さっきも言ったが、俺の夢は人間爆弾を作る事だ」
何故だろう?嫌な予感がする。
「人間爆弾を作ってそこで終わりか?いいや、違う。爆弾は爆発させてこそ意味がある。爆発しない爆弾など、ただの爆弾だ。そうは思わないか?アルファ」
…アレか?飛べないブタはなんとやらってヤツか?
「ついでに、貴様の口封じも出来るしな」
俺を殺すのはついでなのか…
「爆田さん…いや、爆田。あんたの言いたいことは分からないけど分かった。ただし、あんたは三つ、大きな誤解をしている」
「誤解だと?…あ、手が滑って導火線に火が付いた」
別に言い残してやる必要は無いが、このままだと、どうしても俺の気が済まない。
「まず一つ、こんなことをしても、俺は死なない」
「9…8…」
「二つ、俺の名前はアルファでも戦闘員Aでもない。赤松明、それが俺の名だ」
「5…4…」
「三つ、俺は…俺はなぁ!」
「1…0!」
ダイナマイトが起爆し、俺は悪屋の天井を突き破りながら、空の彼方へと発射された。
「全身タイツフェチじゃねえぇぇぇぇぇぇぇ!」
・
・
・
時刻は既に七時を回っており、既に街には電灯の明かりが、街をほの暗く照らしている。
住宅街の一角にある公園。そこのベンチに俺はもたれかかっていた。
ふと、空を見上げたその瞬間、一発の大きな花火が打ちあがり、漆黒の空を一瞬、光が照らす。
「…あれは人間爆弾というよりは、人間花火だろう」
公園のベンチに座っていた俺は、それを見上げながら静かに呟いた。
「きたねえ花火だ」
グゥゥ…と腹が鳴り、思わず腹を手で押さえる。
飢餓感に蝕まれ、体の力が抜けていくような感覚に苛まれる。
あまりの空腹に眩暈がして、一瞬意識が飛びかけたが、気力を振り絞って持ちこたえた。
「…チッ。これだから能力を使うのは嫌なんだ」
俺の能力名は、補助系能力『活性』。
自らのスタミナを消費しなければ発動する事が出来ない、極めて珍しい、代償が必要な能力だ。
その効果と言えば、
生命体に触れれば、その身体能力を大幅に上昇させ、
非生命体に触れれば、そこに自分の意識を宿らせて、思いのままに動かす事が出来る。
消費するスタミナの量によって、効果が上昇するのだが、調子に乗って能力を使い続ければ、体力切れでぶっ倒れてしまうのだ。
使い勝手の悪い能力なので、あまり使わないようにしているのだが…
「あのまま生身で悪屋に行ってたら、間違いなく死んでたな」
正確には木端微塵、爆発四散になっていただろう。
全身タイツに自分の意識を宿らせておいたのは正解だった。
だとしても…
グギュルルルルルルルルルル…
夜の静寂を破らんばかりに腹の虫がけたたましく鳴き声を上げる。
空腹で、家に帰るほどの体力も残っておらず、途方に暮れていたその時だ。
「これ、食べるかい?」
声の方へと目を向ければ、そこには背の高い人影。
昨日、紫さんを蹴飛ばした時に出会った医者のおっさんが、俺にアンパンを差し出しながら立っていた。
アンパン。
パンの中にアンコが入った、日本発祥の菓子パンの一種だ。
それを元にした〇ンポンタンとかいう絵本もあるらしいが、俺は読んだことはない。まあ、それはどうでもいい話だろう。
そんなアンパンが、俺の目の前に差し出されていたのである。
思わず伸ばしていた左手を、必死に右手で抑える。
「静まれ俺の左手!知らない人から物を貰ったり、付いていったりするのはダメだって、亜美も言ってたじゃないか!」
「要らないなら僕が食べ…」
「やっぱり下さい」
・人類は
・空腹に
・勝てない
「ふぃあーふぉんほにふぁふふぁりまひた。ふぁりがとうふぉざいまひゅ」
「飲み込んでから喋ったらどうかな?」
オッサンの指摘を受けた俺は、急いで口の中に詰め込んでいたアンパンを飲み込み、礼の言葉を述べる。
「アンパン、ありがとうございます。おかげで助かりました」
「なに、少し買いすぎて困っていたところだよ。これも食べてくれると、私としては助かるんだが…」
そう言って、オッサンはコンビニのビニール袋を俺に渡した。
中を覗けば、菓子パンやらおにぎりやらがギッシリと入っていた。
「こ、コレは…」
思わず喉をゴクリと鳴らす。
これ全部、タダで貰えるのか?
「いいんですか?俺みたいな、赤の他人に、こんな…」
「困った時はお互い様だ。気にしないでいいよ」
最後まで言い切る前に、オッサンに遮られる。
「それでも、何か礼がしたいと言うのなら…」
オッサンは俺の隣に腰を下ろすと、言った。
「君がもし、困っている人を見つけた時に、その人を助けてやってくれ。それが、私への礼だと思ってね」
・
・
・
「ふぅ…久しぶりに満腹になった」
腹を撫でながら、俺は上機嫌でそう述べる。
しかし、それも束の間の事で、俺は夜空を見上げながら、誰ともなしに呟く。
「どうしたもんか…」
はぁ…と、溜息が零れ出る。
こうなった以上、悪屋には二度と行けないだろうし、これから打つ手を考えなければならない。
明後日には計画が始まってしまう。時間は有限なのだ。
「何かあったのかい?私でよければ相談に乗るが?」
腹がふくれた事による満足感と、しばらく寝ていない事で溜まった疲れのせいで、俺ははっきりした意識無しに、『ヒーロー学園生徒抹殺計画』の事を口走ってしまった。
ゴッドイーター2を買った。
前作はやったこと無いけど
面白いんですよコレが。
するとね、俺の中の『うわぁファンタジー書きてえな』って気持ちが高まってきたのよ。
だから、早くこの連載終了させて
ファンタジー書きたい。
よって、抹殺計画云々は大幅カットして
簡潔に終わらせようと思います。
異論は認めんよ。




