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二悪:悪の幹部と全身タイツ

俺は悪の組織、通称「悪屋」の二階の事務室――――昨日面接を受けた所だ――――で戦っていた

正義の味方と?

違う

警察や自衛隊?

それも違う

俺は…、書類の山と戦っていた

要は書類仕事、ただし、書類になにか書き込んだりする訳ではなく、書類を分類ごとに分けるというものだ。

ちなみに服装は戦闘スーツこと全身タイツ。

昨日の面接終了後に紫さんから受け取った物だ。


「おい、全身タイツ、これもやっとけ」


ドサリ、と俺の事務机に新たな書類の束が積み上げられる

二メートルの距離は空いていた


「…了解です」


俺は、今やっていた仕事を急いで終わらせ、猛スピードで新しく追加された仕事に取り掛かる…って


「なんで悪の組織の仕事が書類仕事なんですか!」


思わず叫ぶ、ちなみにただの高校生である俺が、書類仕事をできるのは紫さんに最低限仕事のやり方を教えてもらったからである


「うるさいぞ全身タイツ、黙って仕事しろ」


紫さんに言われる

確かに悪の組織だからって常に何らかの計画を行ったり、ヒーローと戦ったり、高笑いしているとは俺も思って無いよ?実は書類仕事とかもやっているのだろう。それは分かっている。

だからと言っても…見過ごせないことがある…


「紫さん、質問があるんですが?」


「気安く呼ぶな全身タイツ、紫様と呼べと言ったはずだ」


相変わらずそっけない態度だ、っていうか紫様って何だよ?何でそんな偉そうに…ああ、この人幹部だった…


「紫様、三つほど質問がございます」


そう、質問がある


「…まあいいだろう、言ってみろ」


「まず一つ目、葵さんと首領はいないのでしょうか?」


質問しながらも俺は書類を片付けていく…


「二人とも今は別件で外出中だ、別件に関しては機密事項だから言えない。私は留守番、以上」


別件とはやはり秘密の計画だろうか?気になる


「二つ目、全身タイツって呼ぶの止めてくれませんか?」


「なんで?」


「なんで?って…確かに戦闘スーツこそ着てますが、これはこの組織の支給品だし、戦いのために着てくる必要があったのかと思って…。仕事内容が書類仕事だと知っていれば…」


そこで俺は口を噤む


「知っていれば…何だ?全身タイツが好きで好きでたまらないんだろ?いいじゃないか。それに、首領がわざわざお前のために『バイトは職場で戦闘スーツ以外を着用してはいけない』という決まりまで作ってくれたんだ、感謝しろよ?気持ち悪い」


ゴミを見るような目で言われた

そう、俺が言い返せなかったのにはそんな理由があった。

昨日の面接終了後、こんなことがあったのだ



「さて、面接も終わったことだし」


結さんが立ち上がって言う


「ええ、じゃあ、始めましょうか」


葵さんが続けて立ち上がる


「結局、面接に来たのは一人だけか…チッ」


紫さんが立ち上がりながら少しだけ不満げに呟く


「あの、始めるって何をでしょうか?」

俺は少しだけ困惑しながら尋ねる


「「「歓迎会!」」」


なんでも、バイトがこの組織になじみやすいようにちょっとしたパーティーを開こう、という紫さんの配慮から企画されたものらしい

口調とは裏腹に気が回る人のようだ、…やはりツンデレなのか?

んなことを考えていたら、嫌悪感を露わにした目つきで見られた、何がいけなかったというのだろうか?

その後、クッキーやらケーキやらを一緒に食べ、色々と話をした、

俺は、バイトはこれが初めてですが、一生懸命頑張りますだとか、そんな話をしていたのだが、

葵さんと結さんは、「そんな固い話をせずに、気楽にしろ」と言ってくれた。優しい上司で安心した。


その会話の最中、結さんがこんなことを言った


「もし他のバイトを雇った時に、この新人バイトが浮かないようにルールを決めようじゃないか」


「ルール?」

俺は思わず聞き返していた


「ああ、もし新しくバイトを雇ったときに、周囲が普通の服を着ているのにお前だけ戦闘スーツを着ていては浮いてしまうだろう?だから、『バイトは職務中は常に戦闘スーツを着用する』という決まりを作ってはどうだ?」


「まあ、それは名案ね」

葵さんがすかさず賛成する


「ハア、もういいよ別に、面倒くさい」

紫さんはもはやあきらめている様子だった


「ちょっと待ってください、それだと誰が誰だか区別つかなくなるんじゃないでしょうか?」

俺は慌てて反論する

俺のせいで犠牲者を生むわけにはいかない、そんな使命感のようなものが俺を突き動かしていた


「別に区別つかなくても大丈夫だろう」


「……」

言い返す言葉が見つからなかった

結さん曰く、「バイトの見分けがつかなくても特に問題ない」らしい

そんな適当でいいのか、悪の組織


結局、「首領の命令は絶対」の効果でこのルールは適用されることとなった

なんでも、ルールを破ったものは即刻『罰』を受けるらしい

『罰』の内容を尋ねたのだが、三人とも口を割らなかった

ただ、葵さんがポツリとつぶやいた言葉を耳にして、俺は背筋を凍らせた


「冷凍カジキの刑」


まったく想像出来なかった、なんだよ冷凍カジキの刑って

とにかく嫌な予感がしたので、俺はルールを破らないことを心に決めたのだった



「せめて全身タイツ以外の呼び名にしてくれませんか?他のバイトが入ったときややこしいですし…」


「フム…そうだな、じゃあフルタイツ」


「フルハウスみたいに言わないでください」


「タイツ大明神」


「嫌なご利益ありそうですね」


「タイツヒーロー」


「戦闘員なのにっ!?」


「キング・オブ・タイツ」


「タイツから離れてください!」


「じゃあ戦闘員A」


「…もうそれでいいです。最後の三つ目の質問ですが…」


俺はそこで手を止める

机の上に置かれていた書類に付箋が付けられており、「紫の仕事」と書かれている。恐らく葵さんか結さんの書いた物だろう


「なんで紫さんの仕事まで僕がやっているんですか?」


紫さんはソファーで寝ころびながら言う


「アタシの仕事をやらせてあげてるんだ、感謝しろ。あと紫様と呼べ」


正直このバイトを辞めたくなった

キャラ紹介なう


黒内紫

悪の組織「悪屋」の幹部

実は腰にナイフを隠し持っていたりする。

男のような口調で気が強い。

好きな物:甘い物

嫌いな物:戦闘員


十九歳

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