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八悪:カジキ登場

序盤から言われ続けてきたあの人が遂に登場!

悪の組織の秘密が今、明らかになる!(嘘)

さんがその名前の通り青い・・顔をして部屋から去っていった後、俺たちは天井から響く破壊音と怒鳴り声をBGMに、のんびりと歓談に興じていた。


「へぇ~、ここの武器ってそんなに凄いんですか?」

「ああ、爆発的な威力だ。厚さ二十センチの鉄板を打ち抜くほどにな」

「凄すぎるよっ!?」

「アルファ君、強化型戦闘スーツの試作品、名付けて『戦闘員専用防護服一式改』があるけど、ためしに着てみるかい?」

「いえ、遠慮しておきます」

「…」

「篠川さんってコーヒーを淹れるのがお上手なんですね。すごくおいしいです」

「…ありがとう」

「コイツの淹れるコーヒーはこの組織…いや、この世界一美味いと思うぞ!さて、俺も飲むか」

「あ、僕はマスクを着用してるので飲めませんね」

「それじゃあボクも飲もうかな」

「…私も」


会話の中でこの人たちの性格はなんとなく把握したつもりだ。


爆田さんはやや自己中心的…いや、どちらかと言えば自分の流れに周りを巻き込むムードブレイカーな性格だ。だがそれでも、こちらとしては不快には感じないのだから、意外とこういうのをカリスマ性というのかもしれない。


布山さんは落ち着いた雰囲気のある人物だ。温厚と言ってもいいかもしれないが、先ほどから俺に全身タイツを着るようにせがんでくる。面接の時のあのセリフはやはり下策だったようだ。


篠川さんは寡黙で、必要以上のことは話そうとはしない。何もしていない時は、いつも長い黒髪を弄っている。少女かと思えば、爆田さんと布山さんと同い年らしい。ちなみに年齢は十九。


「ところで、上の喧嘩はどうして起こっているのですか?」


先程からずっと気になっていた事を尋ねる。

この喧嘩のせいで情報収集が出来ないのだ。理由くらい聞いておかねば気が済まない。

…というのは建前で、普通に気になる。

なぜなら…



「あんっ!待ってよ葵姉さん…お願いだからそれだけは止めて…あぁっ」

「はぁ…はぁ…葵、喧嘩して悪かった、謝るからそれを使うのは…やめっ!うぅぅ…」

「ダメです。ちゃんと反省してください」



…上からこんな喘ぎ声が聞こえるのだ。いろんな意味で気になる。


「いったい、上でどんなプレイが…?」


千里が頬を紅潮させながらポツリと呟く。

…プレイとか言うなよ。


「ああ、気になるか?葵のお仕置きは少しばかり…いや、かなり過激だからな。アレはもう思い出すだけで発狂もの…グゥゥゥゥ!?」


突然、爆田さんがそんな呻き声を上げながら頭を抑えてうずくまる。


「え?ちょっと!?どうしたんですか爆田さん!?」


慌てて駆け寄ってみると、爆田さんは顔を青ざめさせて、何かに怯えるように何やら呟いていた。

耳を澄ませば、こんな声が聞こえる。


「ゴメンナサイユルシテクダサイモウシマセンタスケテクダサイシニタクナイイヤダモウヤメテ…」


…復活の呪文でも唱えているのだろうか?

俺はそこから先を聞くことを止めた。

その時、全身タイツの袖をチョイチョイと引っ張られる。

後ろを振り返り、視線を下に向ければ、篠川さんが立っていた。


「…辛いことは思い出させないであげて」


それだけ言って、再び髪を弄り始めた。


「…辛いこと?」


俺が篠川さんに問い詰めようとした瞬間、天井から再び破壊音が鳴り響いた。


バキバキバキバキッ!


恐る恐る、視線を上に向ければ、黒い剣のように長く鋭いふんが天井から飛び出しており、さらに視線を上に向ければ…


カジキの目玉がじっと俺を見つめていた。


思わず俺は後ずさりする。


(なんだよ、なんなんだよこれ…?)


意味ガ解ラナイ


どうしてカジキが天井から生えているのか?


理解デキナイ


この状況に、なぜ篠川さんと布山さんは平然としているのか?


思考ガ追イツカナイ


いや、自分は知っている。


ソウ、知ッテイル


アレは


あれハ


頭が空っぽになり、思考が止まる。

ふいに記憶の渦の中から一つの言葉をすくいあげ、口から零れ落ちた。


「冷凍カジキの…刑…?」


千里がこちらを振り返り、動揺を隠せない様子で尋ねる。


「な…何だって言うんだ…なのよ?」


「俺も詳しくは知らないのよ」


語尾が変になっている気がするが、この際気にしないでおこう。

すると、布山さんが平然としながら答えた。


「冷凍カジキの刑というのは、悪屋のルールを破った場合に行われる処け…お仕置きのことだよ」


今、処刑って言いかけたよねこの人っ!?


「いや、そもそも何故こんな場所にカジキがっ!?幾らなんでも有り得ないでしょう!?」


水族館じゃないんだぞっ!?


「もちろん、アレはただのカジキじゃない。この悪の組織の唯一の怪人、名付けて『水陸両用大剣型戦闘装備兼魚類系怪人カジキ』。略してカジキだよ」


布山さんの説明を聞いて、俺は成程と納得してしまう。


「なんだ、怪人ですか…」


そう言うことならばあの奇天烈な登場も仕方ないというものだ。


なにせ、怪人なのだから。


角が生えていたり触手が生えていたり虫だか甲殻類だか判別がつかない姿をしていたり巨大化したり戦闘員がやられてからやっと動き始めたり常に高笑いを上げ続けたりしているような奴らだ。


だから、天井から突き出て登場する程度、怪人ならば仕方ないだろう。


「それで納得するんだ…?」


布山さんが微妙そうな顔をしているが、俺は気にしないことにする。


だって怪人なのだから。


視線を天井に向けると、カジキはこちらをじっと見つめたまま…


バキバキバキ…


天井へと沈んでいった。


天井にポッカリと穴が空いて、上からひょっこりと葵さんが顔を覗かせる。


「アルファさん、千里さん。遅くなってしまいましたが、仕事をしてもらいます。二階に上って来てください」


ニコリと天使のように慈愛に満ちた微笑みを向けられ、少しばかりドキッとする。

まあ、それも仕方ない事だろう。今更ではあるが葵さんはかなりの美人だ。

街中を歩けば千里並みに人の目を引くだろうと思うほどだ。


…いや、なんで俺は千里と比べてるんだ?


とにかく、そんな美人にこんな笑顔を向けられれば、大抵の男はハートを奪われることだろう。





その手にカジキを担いでいなければ…の話だが。

伏線回収(無理矢理)


武器キャラ紹介ナウ


カジキ


葵が戦闘と『お仕置き』に使うカジキ(切れ味ゲージは紫)

『冷凍カジキの刑』とは言われているが、別に冷凍はされていない

その正体は、実は悪屋の怪人(武器)

陸上で呼吸可能、人間の言葉を解し、会話も可能、元は人間だった

人間だった時の名前は、梶原竜輝かじはらりゅうき


悪屋の社員(総勢七名)の最後の一人


一話登場  首領:結

      幹部A:葵

      幹部B:紫


十七話登場 研究員A:爆田

      研究員B:布山

      研究員C:篠川


NEW!  怪人:カジキ

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