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七悪:偽名とあだ名と全身タイツ

短編を書き上げるのに手間取りました。

ちなみに、こっちの方は基本的に優先順位を後回しにしてるから連載スピードもクオリティーも低いです。

短編のクオリティーが高いって意味ではないけどねッ!

「さあ、入れ」


「お邪魔します」


鉄製の扉をくぐると、そこはうちのアパートのような、生活感に満ちた、研究室というよりは普通の部屋だった。

床は畳になっており、靴を脱ぐように促される。

部屋の中央には卓袱台ちゃぶだいが設置されており、髪の長い女性がコーヒーを淹れていた。

全員が卓袱台に着いたのを確認すると、爆田が話を切り出した。


「では早速自己紹介を始めようか。では、まず俺から始めよう。俺の名は爆田忠則ばくたただのり、悪屋の『装備開発部門』開発責任者を務めている。専門分野は武器開発。火薬と爆発を爆発的に愛する…まあ所謂イワユル、爆発フェチというやつだ。お前と同類だな、アルファ」


ニヤリと笑って爆田は明を見る。

タケシは何か言いたげに口を開くが、少し躊躇してから結局その口を閉じた。


「だからって、研究室内で爆破実験なんて行わないでください。窓ガラスの代金、きちんと払ってもらいますからね」


葵が頬を膨らませながらそう言って、次に帽子をかぶった男性に視線を向ける。

帽子の男性は、暗に「自己紹介をしろ」と言われているのだと気づき、帽子をさらに深く被ってから自己紹介を始める。


「僕は布山創輝ぬのやまそうき、今は戦闘スーツの開発を行っている」


思わず明は聞き返す。


「戦闘スーツの開発?」


戦闘スーツのどこをどの様に開発しているのだろうか?

あの黒い布の何をどうして開発する必要があるのか?


好奇心から来た質問だったが、布山がそれに答えようと口を開いた瞬間、何故か爆田が答える。


「それはな、戦闘スーツの防御力の向上や、様々な機能をつけたりと…まあ、そういった戦闘スーツの強化の事だ。お前の大好きな全身タイツも今はただの布だが、ゆくゆくは強力な装備となるだろう」


…コレのドコがどうなれば強力な装備になるだろう?

明は全身タイツを引っ張りながら、もしも全身タイツが強力な装備だとすれば…と考えた。

しかし全くイメージが浮かばないので思考を断念し、視線を最後の一人、長髪の小柄な少女に向ける


「…」


先ほどから一言も言葉を発していない少女。

俯いたまま髪の毛を弄繰いじくり回しており、しばらく閉口。

十秒くらい黙っていたかと思うと、ポツリと呟く。


篠川美鈴しのかわみすず


そして、再び髪を弄り始める。

どうやら篠川美鈴というのが名前らしい。

それっきり彼女は口を噤んだまま何も話そうとはしなかった。

話が進みそうになかったため、タケシが自己紹介しようと口を開く。


「えっと…では、次は私が自己紹介しますね。私の名前は田中千里せんりって言います。アルファ君と同じ学校に通っています。悪の組織の仕事に興味があったので来ました。よろしくお願いしますね」


そう言ってニコリと微笑むタケシ(以下千里)。

「ああ、よろしく」と、今朝も見たような自己紹介に対するありきたりな反応に、明は少しばかり安心する。


タケシの嘘がバレなかったからだ。


普段の男口調ではなく その容姿にそぐわぬ女口調で

タケシという本名を隠して 千里という偽名を使って

いつもの汚らしい笑みではなく 普段は見せない清純な笑みで


何故か?


実は『田中タケシ』は『田中千里』としてこの組織に入ると、事前に明とタケシが打ち合わせして決めていた。これは、タケシなりの予防線である。

本名からヒーロー学園の生徒だと知られないようにするためにと、タケシは偽名を使うことにしたのだ。

顏でバレるのでは無いだろうか?と明が尋ねると…


『その場合は、「実は、田中千里わたしは田中タケシの双子の妹ですが、タケシとは何の関係もありません☆」とでも言ってやるよ』


故に女口調


『そもそも、この一日だけで情報を集めるつもりだ、ここに長居するつもりは無い。情報収集が終われば適当な理由つけてバイト辞めるつもりだし』


(本名を知られても問題ないという確信はある。現に、俺は面接の際に本名を名乗ったがあの場にいた三姉妹全員が、俺の正体を疑う様子は全く見せていない)


ヒーロー学園の生徒のことについては把握していないと考えるべきだろう。


(…というか、俺はそもそもこの組織で本名を呼ばれた覚えがない)


全身タイツ、戦闘員A、アルファ、奇妙な呼称でしか呼ばれていないのだ。

もしかして本名を忘れられているのでは?と考えるが、流石にそれは無いだろうと首を横に振ったその時…


ドォン!ガッシャァァァァァァン!バキバキィ!


何事かと全員が天井を見上げる。

天井にヒビが入り、破片が明の顔に降り注いだ。

明は下を向き、顔にかかった破片を手で払い落とす。


「なんなんですか?」


千里はポカンと口を開けて、誰に尋ねるわけでもなく呟いた。


「ユカリンとユイユン、喧嘩してるみたいだね」


篠川がそう呟くと、思わず明は首をかしげる。


「ゆかりん?ゆいゆん?」


恐らくは紫と結の事なのだろうが、その疑問に爆田が答える前に、葵が言った。


「わ、私!ちょっと行ってきます!」


二階に向かうのだろうと察しがつくが、危険ではないかと明は心配する。


「あの…俺も行きましょうか?」


天井から破壊音が響く中、流石にこの場でじっとしているのは落ち着かなかったため、戦地へ行く立候補をする明。

しかし、それを爆田が止める。


「いや、お前が逝っても焼け石に水だろう。止めておけ」


「なんか変なニュアンスに聴こえるんですけど!?」


「と、とにかくっ!私が止めてきます!」


葵はそのまま部屋から飛び出していった。

キャラ紹介なう


布山創輝


爆田と同じく悪屋の研究員

今は全身タイ…戦闘スーツの改造を行っているが、分野は機械系全般。

ただし、自分の作りたいと思ったものしか作らないため、仕事は不真面目気味。


実は、この作品を書き始めた当初の設定では、この男の作る機械で事件が起きる…という、〇ラえもん的な物語になるはずだった。

四悪の時には登場していたはずなのだが、作者の思いつきで話を進めた結果、登場がここまで遅れたという、『実は主要キャラになる筈だった脇役』

…いや、まだ見せ場はあるはず。

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