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七正義:教師とタイツと正義の味方

キーンコーンカーンコーン…


ホームルーム開始のチャイムが鳴り、生徒がそれぞれの席に着いたのを確認すると、担任は自分の自己紹介を始め、その後、ホームルームを開始する。


「それでは、転校生の紹介から始める。ちなみに、このクラスに入ってきたのは、一人だけだ。それでは自己紹介を始めてくれ」


案の定、転校生というのは先ほど明に突っかかってきた女子生徒だった。

彼女は黒板の前に立ち、名前を書いていく。


黒内(・・)美香です。この学校に入ったばかりで、右も左もわかりません、もしよろしければ、この学校のことを色々と教えてくれると嬉しいです」


ハキハキとした声で、簡潔に自己紹介を終わらす女子生徒…もとい美香。

あまりにも普通な自己紹介で、生徒達も「 よろしく」などの普通の反応を見せる。

しかし、明だけは違った反応を見せた。


「…黒内?」


明の呟きは教師の声によって遮られた。


「はい、ありがとうございした。では皆さん、ちゃんと仲良くしてあげて下さいね」


パチパチという拍手を受けながら、美香はお辞儀し、席へと戻っていく。


その後、担任はこの高校についての説明を行い、最後に、明と卓郎に視線を向けて言った。


「赤松君と佐々木君は職員室に来るように」


しかし、明は席に突っ伏して眠っており、卓郎は彫刻刀を片手に熱心に自分の新しい机に魔法陣 (らしきもの)を刻み付けていた。

その態度に教師は憤慨し、明の席に近付くなり、拳を振り下ろす。


バキバキィッ!


教師が明の後頭部に拳を叩きつけようとした瞬間、明は咄嗟に頭を横へと逸らし、間一髪避けていた。

拳はそのまま振り下ろされ、明の机を真っ二つに叩き割ったところで止まった。


「おい!聞いているのか!」


「…壊しますかね?フツー」


「職員室へ来い!今すぐだ!」


教師の怒鳴り声で、教室中の空気が震え、教室の外にいた生徒達すら、何事かと廊下から明達の様子をうかがう。

その凄まじい剣幕に対して、しかし明は眉をひそめ、こう答えた。


「嫌です、メンドクサイ」


「来いと言ってるんだ!」


「そもそも、どうして職員室に行く必要が?俺は何かした覚えはありませんよ?」


嘘だけどな、と心の中で付け加える。


「とぼけるな!住宅街の塀を壊したのはお前だろう!今日の朝、連絡があったんだ!」


「そうですか、塀が…はて、何のことやら」


どうやらバイトの事では無かったようだと明は密かに安心する。


「目撃者がいるんだ!お前が塀を壊すところを見たというな!」


「きっとトラックでも突っ込んできたんですよ。目撃者というのはきっと見間違いでしょう」


明の反抗的な態度に我慢の限界だったのか、教師はとうとう明の胸ぐらを掴み、後ろの黒板へと思い切り投げつけた。


「グハッ!」


明は背中に大きな衝撃が走り、グラリとよろめき、床に倒れる。


突然の暴力行為に、生徒の反応は様々で、悲鳴を上げる者もいれば、歓声を上げる者、全く動じていない生徒もいた。


教師は周囲の目を無視して、再び明の胸ぐらを掴もうと手を伸ばしーー


「そこまでだ!天界の使徒ぉ!」


突如、割り込んできた卓郎がその腕を掴み、捻りあげ、脇固めを決めてそのまま腕をへし折る。


ボキボキッ!


という鈍い音と共に、教師の腕があらぬ方向へ曲がる。


「がっ!があぁぁぁぁぁぁっ!?」


教師は叫び声を上げて、卓郎を睨みつける。


「さ、佐々木ぃ!こっ、こんな事をしてタダで済むと思っているのかぁ!?これは明らかな暴力行為だ!お前たち二人…退学処分にしてやる!」


教師が喚き散らすのを少し離れたところから観ながら、タケシが、さも楽しそうに声をかける。


「自分の事は棚に上げといて、ソレは自己中心が過ぎるんじゃないですかね、せ〜んせい?」


教師はタケシの方には見向きもせずに、卓郎を睨みつけたまま、飽くまでも自分が正しいと主張する。


「黙れ!私のしていた事は立派な教育だ!だが、お前たちのしている事は、紛れもなく暴力だ!」


タケシは質問を続ける。


「では、教育の為に、体罰を振るったと?そういう事ですか?」


教師は、我が意を得たり!とでも言いたげな顔で、主張を続ける。


「そうだ!教育だ!私の教育に対して、こいつらは!よりにもよって暴力を振るってきたんだ!見ろ!腕が折れてる!どう見たって私が被害者だろう!?」


「では、体罰を振るったことは認めるのですね?」


「ああ、まあな!だがこれはれっきとした教育!言っても聞かない生徒にはちゃんとした躾を行わねばーー」


「教育基本法第十一条って知ってます?」


「…は?」


教師は今のセリフで、まるで冷水を浴びせられた様に大人しくなり、後ろを振り返る。


そこには、タケシが立っており、ニコニコと笑いながら、携帯で動画を撮っていた。


「一部始終、キチンと録画と録音しておきました。証人もここにいる人達で十分すぎるくらいに足りるでしょう。先生の処分、どうなるのか楽しみにしておきますね」


「な、な、何を言って…」


教師は明らかに動揺していた。

自分のした事を今さらになって自覚したのだ。


「ネットにばらまきましょうか?それとも、マスコミにでも売りつけましょうかね?高値で売れそうです」


「お、おい、待て…」


「何ですか先生?」


「わ、しょ、処分を受けるのは私ではなくて、あの二人…」


「いや、あの二人は間違いなく被害者、加害者はあんただよ、先生。それとも、正当防衛って言葉も知らないのか?」


「だ、だから、私は教育を…」


「もういいよ、面倒くさいからこの話は終わり!今度、マスコミにでもこの動画を売ってこよう!それとも、先生が買いますか?」


そう言ってタケシはパン!と手を打ち鳴らし、明に視線を向ける。


「ほら、さっさと起きろよ明。大した攻撃受けてないだろ?痛がるフリはやめろ」


「ちょっとは心配してくれてもいいんじゃないかなぁ?」


さっきまで床に倒れていた明が、不満気な表情を浮かべながら立ち上がるのと同時に…


キーンコーンカーンコーン…


一時限目の始まりを伝えるチャイムが鳴った


生徒はそれぞれの席につき、授業の準備を始める。


明たちが何か問題を起こすのは、日常茶飯事のことであるため、生徒達はいちいち気にしていなかった。


この学校にまだ慣れていない、美香を除いては。

キャラ紹介ナウ


教師


教師、作中では腕がポッキーのごとく折れているが、

これでも一応ヒーロー(笑)

動画は(?)十万円で買ったらしい


「これは持論だが…躾に一番効くのは痛みだと思う」

※現代社会では通用しません

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