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一悪:面接と全身タイツ

初連載、思いつきで書いたので完結はできるかどうかわかりません。

拙い文章もあるとは思いますが、お手柔らかにお願いします。

誤字脱字、訂正すべき点等ございましたら報告お願いします

街の通りから少しだけ外れ、人通りの少ない所にある三階建ての事務所、その入口の前に俺、…赤松明は立っている。


その左手には手提げ鞄、右手には「悪の組織『悪屋』バイト募集中!」と書かれ、住所と電話番号だけ書かれた張り紙を持って事務所の前をうろうろしていた


「ここが…悪の組織のアジト?」


見たところ普通の事務所だ、どこからどう見ても悪の組織のアジトには見えない。

…いや、『悪屋』と書かれた看板がある以上ここで間違いないのだろう。


しかし、こんな堂々と建っているアジトがあっていいものだろうか

っていうか看板なんか建ててんじゃねえよ


バイトというのは初めてなので緊張する。

一度、大きく息を吸い込んでから、ゆっくりと吐き出す。

幾分か緊張が解けた気がする


「…よし、行くか」


意を決して俺は事務所の階段を上っていく。

アジトというものだから、もっと大層なモノを期待していたが…どうやら期待はずれだったようだ。


「二階の…ここか」


「悪屋面接会場」と書かれた張り紙、その近くにパイプ椅子が三つほどあったが、誰も座っていない。

俺以外にココヘ面接に来た人は居ないのだろうか?


「ふうっ、よしっ!」


コンコン、とドアをノックする


「すみません、バイトの面接に来たのですが…」


中から返事が聞こえる。


「入りたまえ」


「失礼します」


部屋に入ると、やはりここも普通の部屋で、目の前にパイプ椅子が置かれており、面接官らしき女性が三人ーーおそらく全員二十代前後ーー、机を挟んで向かい側の席に座っていた。

全員普通の格好だった、俺のイメージでは悪の組織の女の人は、レオタードと網タイツを着用、「お仕置きよっ!」とか言ってムチを振り下ろし…って何を考えてるんだ俺は。


「赤松明、高校一年生です。バイトの面接に来ました、よろしくお願いします」


「うむ、そこに座りたまえ」


中央の席に座っていた人に言われて、俺は用意されていた椅子に座る。ちなみに履歴書は要らないらしい、これは俺にとっては好都合だった。なぜなら俺は…おっと、話がそれたな、面接に集中することにしよう


「では、面接を始めようか、まず質問なんだが…。」


「はい!」


元気よく返事をする。


中央の席に座っていた面接官がやや困惑した様子で俺に質問する


「その格好はなんだ?」




「…え?」


格好も何も、俺は真っ黒な全身タイツに真っ黒な覆面を被った…


つまり、どこにでもよくいる悪の組織の戦闘員の格好をしていただけだった


「…え?」


もう一度聞き返す、何か聞き間違えたのかもしれない


「いや、だからその格好だよ!何その格好!?ふざけてんの!?ギャグ?全然面白くないんだけど!」


こちらから見て右側に座っていた女性が急に立ち上がり大声でまくしたてる


「え?え?」


とりあえず、今の状況がマズイということは分かった、そして、この服装、つまり全身タイツはまずかったということも。ならば俺がここでとるべき行動とは…


「すいません!間違えて全身タイツを着てきてしまいました!」


必死に頭を下げて誤魔化すことだ


「間違えるかフツ―!?」


右側からツッコミを入れられる、もっともな意見だ


「いえ、実は私服は全身タイツしか持ってないんです!」


「嘘つけっ!」


確かにこれは嘘だ、しかし、もはや俺の口は持ち主のいうことを聞かずにしゃべり続ける


「僕!実は全身タイツフェチなんです!全身タイツを常に着ておかないと生きていけない体なんです!ここに来たのだって悪の組織の戦闘スーツを着て、体全体でその戦闘スーツの感触を楽しもうと!」


何言ってんの俺!?


「何言ってんのアンタ!?」


ごもっともだ、だが誤解しないで欲しい、俺は断じて全身タイツフェチなどではないし、戦闘スーツの感触を楽しみに来たわけでも無い。

ただ、悪の組織のバイトは儲かると友達に聞いて来ただけだ。

全身タイツなのは「悪の組織のバイトには戦闘員っぽい格好で行くのが常識だよ!」と、妹に言われたからで…あれ?もしかして俺、妹に騙された?

なんだか泣きたくなってきた…あれ?目から汗が…


「はい、二人ともストップ」


左側の人が止めに入る。

よかった、これ以上恥と醜態をさらせばお嫁にいけなくなるところだった…

あ、俺男だわ。

右側の人に再び視線を向ける、目が合った

…あれ?なんか俺のこと変な目で見てない?

例えるなら…そう、道端にこびり付いたガムを見るような目…


「首領、どうします?この子雇うんですか?(全身タイツフェチって何?)」

と、左側


「…まあ、いいんじゃないか?それに、人手不足なんだ、選り好みしてられないだろう?(私服が全身タイツって一体…?)」

と、中央…首領らしい


「まて首領!私は反対だ!(あのスーツ着たいとか言う奴初めて見た)」

と、右側


「やる気には自信がありますっ!」

……俺


その後、俺を採用するかどうかで激しい議論になった

首領はとりあえず採用しようと言い

右側の人は最後までそれに反対し続けていた

左側の人は何も言わずにただじっと議論を眺めていた

俺は必死に自己アピールをした、正直、辛かった、泣きたかった

結局、「首領の決定は絶対だ」と首領が言って俺の採用が決まった



「ねえ、落ち着きましょ、ゆかり?「首領の決定は絶対」でしょ?それに「悪屋うちは人手不足なんだからバイトを雇おう」って言ったのは紫じゃない。とりあえず親睦を深めるために自己紹介でもしましょ?」


左側に座っていた女性が右側の女性…紫さんを宥める


「だからってこんな不審者雇うことはないだろ!?他の人を雇えよ!いや、確かに面接に来たのはこいつだけだけど!」


紫さんが俺に向かって指を突きつける

誰が不審者だ、ただの戦闘員の服装ではないか…と、部屋にあった鏡で自分の格好を見てみる

顔をすっぽりと覆い隠す真っ黒な覆面

首からつま先まで全身を覆う真っ黒な布

夜になれば暗闇の中に溶け込めそうな姿だ

…見るからに不審者だった


・↓回想シーン


「どうだ亜美あみ?似合ってるか?っていうかおかしくないか?初めてのバイトの面接だから緊張するなー」


「うんお兄ちゃん!全然おかしくないし、すっごく似合っているよ!さすがお兄ちゃん、どんな服装もかっこよく着こなしちゃうね!…ブフッ」


「そうか!じゃあ面接行ってくるな!」


「うん!お兄ちゃん、いってらっしゃ~い」


・↓現実



…そんなことを考えているうちに自己紹介が始まっていた


左側の女性からだ


「まずあたしからね、私の名前は黒内葵くろうちあおい、葵って呼んでいいですよ。一応この組織の幹部を務めています、まあ正式な社員はまだ七人だけだから大して偉くは無いんですけどね。これからよろしくね」


ニコッと微笑みを向けられる


「よろしくお願いします、あの…七人と言いますと、あとの四人は?」


「ああ、それはまた今度紹介します」


「そうですか(優しそうな人だな、こんな変質者に話しかけてくれるなんて…いや、警戒心が無さすぎるだけか)」


次は右側、


「チッ、じゃあ次はアタシか、黒内紫くろうちゆかり、幹部、葵の双子の妹だ、紫様ゆかりさまと呼べ、給料分はしっかり働いてもらうかな。あとアタシの半径二メートル以内に入ったら殺す、以上。」


そっけない態度だ、ツンデレ…いや、単純に警戒されているだけだろう


「よろしくお願いします。へぇー双子でしたか」


最後に首領、


「じゃあ最後は私だな、黒内結くろうちゆいだ、この二人の姉で、この組織の首領を務めている、まあ、首領と呼んでくれ。」


「よろしくお願いします…三人とも姉妹だったんですか…」


俺は内心自己嫌悪しつつ、冷静を装う


「それよりもよく僕みたいなのを雇おうと思いましたね、…自分で言うのもアレですが」


「ああ、まあ急いで人を集める必要があったからな、実は面接では適当に話だけしてまともそうならそのまま採用するつもりだったんだが…」


結さんがこちらの服装を見ながら口を噤む

まともに見えませんよね。はい、ごめんなさい


「…まあ全身タイツ以外はまともそうだから、大丈夫だと思ったんだ。安心してくれ!個人的な趣味タイツフェチに関して私達は口出しするつもりはないから!」


結さん、フォローになってないです…


そんなこんなで、俺は変態のレッテルを貼られるとともに、悪の組織でバイトすることになったのだった。

キャラ紹介ナウ


赤松明

主人公、別に変態ではないが、作中のほとんどのシーンで全身タイツを着用しているため、『客観的に見れば変態』


十五歳

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