episode.5 さっきの話の視点が変わったバージョンだよ
「志保と優華、行っちゃったなのですね」
「どこいったんだろな…まさか二人でトイレでレズプレイぐふっっ!」
「レズプレイなんて、科学論理的に0.06みりめーとるの精子が女性の0.14ミリメートルの卵子の中に侵入して、一人、もしくは一卵性双生児などが生まれてきたりしゅるのですよ! 女性同士のプレイは不可能なのです」
「じゃあリリア、聞くけどさ」
「なんなのですか? じゃあ、ということは私の意見に匹敵する、もしくはそれを上回る意見をお持ちなのですね」
「まあな」
智香に男気(漢気)が漂っているのは自身の証。
「快感を得ることも不可能というのか?」
「はい…?」
「確かに子供は出来ないかもしれないさ、でも別にストレスとかを解放するために快感を得ようとしてプレイする人もいるんだぞ」
「そ、そんなのあり得ないです!」
「今の言葉、同性愛者を否定する言葉になるよ? リリアは同性愛者を全面否定して世界の輪から外そうとするの?」
(智にゃん、成績最下位だけの馬鹿だと思っていたけど、考えていることはかなり人間性を帯びていますね…少し見直しましたよ、馬鹿なのは変わりないけど)
リリアは「見た目ばかとかばかとかばかとかにしか見えなくて自分より格下と思っていたけど実は中身は自分と違ういい考えを持っていることに気づいた乙ww」の経験値が67上がった!!
「か、科学論理的に説明するです…確かに子供も出産は異性同士のプレイでのみ可能です…しかし、快感を得るという感覚関しては異性も同性も一部たりとも違わず、人間の鬱憤を欲望によって解放することが出来ますなのです…よって、智にゃんの考えが、正しかったようです…不覚なのです」
「ようやく負けを認めてくれた…」
「? どういうことでしゅか」
「だって、うちがリリアに勝てることなんてないんだ…本当の事を言うと、リリアを貶めたかった」
「リリアを、ですか?」
貶める理由。
「みんなから人気で、可愛くて、頭がよくて…そんなリリアを私は認めたくなかった! 私なんかみんなから避けられてるし、可愛くないし、頭悪いし…」
確かに本当の事である。でも、
「確かにそうだね、その通りですよ智にゃん」
…。
…。
…。
えっ?
ちょっと整理しよう…ここって多分お互いを認め合って仲間として再確認する場面なんかじゃないのか? ちょっとリリア。いい加減にしようよ…。
「私より人気ないし、可愛くないし、頭悪いです、そういうことですけど大丈夫ですかあなたの頭」
「え…と、一般世論から言わせてもらうと、ここは固い友情で結ばれるところじゃないのかな…」
「智にゃんの一般世論なんか一般の一般による一般世論とは一つたりとも照合しませんよ、わかった?」
「はい、すいません…」
明らかにリリアのキャラが変わった。どうして変わったのかなんんて知る余地もない。理由もないし。多分これから分かるのだろう。丁度中二病の時期だしね。
「という訳で話はもういいんでしゅか?」
「…ああ、もういいよ…」
「じゃあ退散なのですー」
そう言って一組から飛び出したリリアは二組の教室へと舞い戻って行った。
「残り五分か…」
一人で呟いた。喋りかけ安い目安距離・半径五メートルには誰もいない。
五メートルといえば、五十メートルの十分の一。五十メートル走が十秒だから単純に一秒。ちなみに五メートル先には人がいる。同じクラスのやつだ。
「一秒…一秒…よし!」
決めた時には既に疾走していた。しかし疾走というのは「非常に早く走ること」を意味する。九秒台は疾走とは言わないのは中二病の智香には内緒。
――「届く、届くぞ!!」
そう聞こえて振り向いた時には既に時遅し。結果、衝突。時速十八キロ、身長168センチ、体重(質量)四十五キロ。細身でもなく太身でもなく普通の体系に見えて、剣道をやっているせいか筋肉がついて体重が重い。
そんなスピードでやって来る人の仕事の量は、
450N × 5m = 2250J
俺、山口裕也にとって衝撃的な出会いだった。
いってぇ、案外重いなこいつ。
「あ、ごめんな、ちょっと疾走しちゃってさ…寂しさのあまり…」
ごめんくらい言えよって思ったけど、言う前に言われてしまった。
けどなんか男気を感じた。
「お前、結構男口調なんだな」
ちょっと問いただしてみたかった。
「まあね、オンナとして生きれないからオトコのふりをしているだけかもしれない」
なにか通じるものがあった。
「へぇ、ふり、ねぇ」
「そう、ふり」
何かが始まる出会い、そんな気がした。ふと思った冗談かもしれないが…。
「ていうかなんでぶつかったんだ? なんか男のふりとかなんとか言っていたが」
「いや~あれね、話し相手がいなくて…というか勝手に居なくなってさ、リリアが。そしたら君が近くに、更に一人でいたんだよ」
こいつ、寂しがり屋かな…。なんかそんな感じする。
「なぁ、同じクラスなんだし、名前でよくねえか? “君”とかだと義理を感じてしまうからさ」
俺はそう言った。すると、
「じゃあ裕也、それでいいよね裕也?」
う…不覚にも顔を赤くしてしまった。こいつ確かVOCALO廃人じゃなかったか…。
「あ、ああ。じゃあ俺も智香と呼ばせてもらうことにするよ。よろしくな、智香」
なんとかぎりぎり頬を赤くしてしまったのは抑えれた…と思う。うん、ばれていない、大丈夫。
「という訳で話し相手になってよ」
「別に俺は構わないが…話のネタなんてあるのか?」
俺こと、山口裕也は、一般大衆的に一応ガン○ムオタクと称される存在であろう。今は学校の学食代を全て浮かせてゲーセンに投資している。なかなかの経済難なのだ。
そんなことはどうでもいいのだが、俺も実は結構一人の空気の方が多い。何故だか真面目キャラクターに見えているらしく、あまり話しかけてこない。部活もあまり行ってないし。
実のところ真面目…とは言い切れないな。客観的に見たらそうなのかもしれないが。行くゲーセンも地元のそこそこ大きいところ。まず同じ学校の人と出会う機会なんて皆無だろう。
そういう境遇だからこそ真面目に見えてしまうのかもしれない。学校生活には支障は来さないレベルに。
ちなみにVOCALOIDについては多少の知識は持っている。これでもガン○ム全話をニ○ニ○コ動画で全話見ているだけあって、VOCALOIDに関して多大な触れる機会がある。だから多分人一倍…とまではいかないかもしれないが、ある程度の知識量は兼ね備えているつもりでいる。
「そういやこないだ初○ミクの誕生日LIVEをW○W○Wでやっていたな」
昨日知った知識を話に盛り込んでみた。
「あ、知ってたんだな? そうそうあれはわざわざ日本橋に行って放送波を受信する機械を買ってきたよ~五万円くらい。お婆ちゃんからのお年玉はそれに使って、じ○さんとかS○p○r○e○lの限定商品をM資金で少々…」
こいつは相当だ。なんか話が合いそうだ。
「ちょっと違法じゃねぇか?」
「そこんところ無視の方向で。裕也だって心当たりがあることなんていくらでもあるんじゃないの?」
その通り、○コ○コ動画はちょっと違法掛っている、かもしれない。
キーンコーンカーンコーン…。
「あ、五分前の予鈴だ。もう移動しないとな」
「そうだな~そろそろ移動しなければ!!」
「なんの真似…?」
「メタ○ギア風に言ってみた。ははは」
尋ねた俺が馬鹿だったのか…。
カシャッ、と音がした。
PS:
そういえば志保と優華、美術の時間どこ行ったんだろうな~、まいっか。私には別に関係ないもーんな。