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死の群像  作者: 島田 黒介
死の群像 第一章
10/24

第一章-10

 二人の会話を遮るように猫がにあ、にあと鳴く。


木戸を開けて空を見上げると、高い空にうろこ雲が伸び伸びと泳ぎ、金木犀は鼻を突くほどに香り高い。


人気も無いのに何処からか流れてくるラジオからの音楽は、人がまだ季節が変わることを名残惜しむように、軽快なナンバーが流れてくる。


少年たちはやり終えた花火を片付けもせず、ひとつのシンボルのようにそれを夏に置いてくる。


祭のゴミは早々に片付けられるが、そこに残る黒いしみは人が忘れ去るまで消えやしない。


ツクツクボウシも鳴き終えて、せみの抜け殻は風と共に解け、土へ還る。


彼は生き生きとやってくる初秋に辟易しながら、残り少なくなってきた缶詰をいくつか開けた。


幼猫たちは嬉々としてそれに飛びつくが、親猫はこちらを見つめるだけであった。まるで彼の気持ちを見透かすかのように。



彼は一端が切られた麻縄を手に取った。



脚立が、大きな音を立てて倒れた。

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