あめふり
シュールな恋愛を書きたいなと思いまして書きました。
「ねぇ」
「……」
「ねぇってば」
「……ん?」
「もう閉館、帰って」
このやりとりは二人の間でいままで何回繰り返されただろう。男は持ってきた教材を片付け始める。
夏の終り、小学生だって家で残りの宿題をやっている時期だ、それとも田舎の図書館だからだろうか館内にはもうその男しか残って居なかった。
いつもはこれで終わる会話。
しかし今日は男が女に話しかけた。
「司書って楽しい?」
女は少し驚いた顔をしたがすぐに真顔に戻り、
「まぁまぁ、本が好きで始めたわけだし」
そういうとどこかに行ってしまった。おそらく後片付けをするのだろう。
その女の後ろ姿を目で追った後男は席を立った。
「あんたまだ居たの?」
図書館の入り口の外に座り込み本を読み耽ってる先程の男に言い放つ。
冷たい言葉を浴びされる男、それでも男は笑って答える。
「いや、傘忘れてさ止むまで待ってるんだよ」
外は少し強い雨、傘をささなければびしょぬれになってしまうだろう。
男がそれを言うと女は溜め息をつく。
「天気予報見てないの?今日は夜まで雨だから止まないよ」
そう言うと女は傘をさして歩き出す。
すると男が女を急に引き止める。
「……あのさ、」
「なに?」
「えっと…君って綺麗だよ…ね?」
男が聞こえるのは雨がアスファルト叩く音だけになってしまった。
溜め息をつく男、どうするか思案する。回りには何もなく友人に助けを求めるか、思いきってタクシーを呼ぶかそれともいっそ濡れて帰ろうか。
男があれやこれやと迷っているとさっき帰ってしまったはずの女が立っていた。
「びしょ濡れなって帰る気?」
「戻って来てくれたの?」
「勘違いしないでよ、べつに心配して戻ってきたわけじゃないの、鍵閉めてあるかなぁと思って」
「ふふふっ」
「なに笑ってんのよ!!」
女は少し声を荒げた。
それでも男の口元は笑っていて、
「それでも嬉しいよ」
「なにがよ?別に何にもないわよそれじゃあね」
女はぶっきらぼうにそういうとすぐ帰ろうとする。
だが男はすぐに女の傘の中に入る。
「な、なにするのよ!」
男は悪びれず、
「濡れて帰るのやだからさお願い!!」
「しょうがないわね」
女は嫌がりながらもあっさり承諾。鍵を確認しにきただけなのになぜ承諾したのだろう。
男も女があっさり承諾したことに少し驚いたが、
「ありがとう、今度傘持って無かったら入れてあげるよ」
「ありがと、でもね私は貴方と違って天気予報は毎日見るの」
「じゃあ明日は?」
「明日は晴れ、降水確率0%」
女と男はたわいもない会話をしつつ雨道を歩く。しかし男の肩は傘からはみ出ていて雨に打たれている。
男はそれを気にしない、それよりも女との会話、今を楽しんでる様だ。
「みたいな感じ?」
「って言われてもこれ昨日あったことじゃない、なに文章にしてんのよ。恥ずかしい」
昨日と同じ場所で昨日と同じ時間昨日と同じ相手と話してる男と女。
ただ昨日とちがうのは、
「今日は傘持ってきた」
「持ってこないわよ、だって今日は晴れだもの」
「でも外見てみなよ」
ニヤけながらも女を促す。昨日の女の言葉とは逆に外には雨がふり図書館の窓は雨水で濡れていた。
「えっ、何で!?」
女は驚いているが男はそのまま続ける。
「まぁ図書館は湿度調節されてるからね気付かないかもね」
「俺は傘持ってきてんだよね〜」
「だ、だからなによ」
男はさらに続ける、
「俺、君が仕事終わるまで待ってるよ」
「別にいいわよ」
「やっぱ厚かましい?」
女は弁解するように、
「じゃあし、仕方ないわね昨日の事もあるし私を誘うのは仕方ない事よね。それじゃまた後で」
女はとっとと男から離れていった。
恥ずかしかったのかなんて男は考えながら持ってきた教材を片付ける。
ついでに女の方を見る、せっせと本を片付けている。俺のためかな、なんて思いながら男は最後にこう呟いた。
「夕立じゃなければいいんだけどなぁ」
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