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HEAVEN!ヘヴン!HEAVEN! 2  作者: coconeko
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なんだかんだで喧嘩腰

またまたお待たせいたしました。何度やっても喧嘩を始めてしまうので、もうどうしようかと・・・。とにかく、UPです。もうちょっと続きます。

 海賊業といえば、略奪だ。

 ひもじいから略奪するのかどうかは別として、まあ、自分たちと別れて間もなく、何処かの船を襲ったらしい。

「それで、どこの船を襲ったって?」

 海賊が襲うのだから、それはそれはお金持ちに違いないか、たいそう立派な商船か。

「・・・・まって。さっき、王族って、言った?」

 ふと思い当たって、セインは青ざめた。

「おう。言った」

 当たり前のように返事が返ってくる。

「王族なんかの船を、よくもまあ」

 呆れ返るセインにギャンガルドはにやりと笑う。

「王族ほどの金持ちは、そうそういないだろ?」

 それはそうなのだが、王族は王族だ。

 どこの国の王族だろうが、警備はそりゃあもう、もの凄いことだろう。普通なら、いくらなんでも避けるものなのだ。

「目の前にお宝と食料と、きれいな女がいりゃあ、仕掛ける理由は充分だろう?」

「成功すればね。王族相手だもの。収穫は凄いだろうさ」

「へっ、なあに。手前の国民から搾り取ったモンを、ちいっと分けて貰おうってんだ。別に悪くはないだろう?」

 悪い悪くないの話ではないのだが、どうもギャンガルドの頭の中では、それで説明できてしまうらしい。

「・・・・・・まあ、いいや。それで、僕らの知り合いの王族だって?」

「おう。なんだか知らねえが、お前さんの話をしてたからよ」

「何で船を襲って僕の話になるのさ。そんなの、セインロズド目的の会話なだけだったんじゃないの?良くあるもの」

 セインロズドの名前など、あちこちで話の端にくらい上るだろう。まして、王族などの権力者であれば尚更だ。

「おいおい、それっくらいで、わざわざ俺が大賢者探して陸に上がると思ってんのかよ?」

「君ならやりかねないだろう?」

 すっぱりと言われれば、さも嬉しそうに、ギャンガルドはにんまりと笑った。

「気持ち悪いわね」

「ホントホント」

 キャルが眉間に皺を寄せ、タカが相槌を打つ。

「こら。お前、俺の手下だろうが」

「だって、気持ち悪いモンは気持ち悪いっすモン。やめたほうがいっすよ?その顔」

 自分の手下にまで言われて、ギャンガルドは眉毛をハの字にした。

「だんだんこの二人に似てくるなあ」

 突っ込み方から会話のかわし方まで。このままでは船長としての沽券に関わるではないか。

「良い傾向じゃない?いつも人で遊んでいるからよ」

 いい気味だといわんばかりに、キャルはニヤリと笑って、ギャンガルドを睨み上げた。

「さて?」

 ギャンガルドはとぼけてみせる。

「まあ、ギャンギャンに関しては、あとでタカとキャルに叱ってもらうとして」

「おいおい。なんだあ?何で俺がこの二人に叱られるんだよ?」

 セインの言葉に、ギャンガルドが抗議すると、セインはにっこりと微笑み、いつの間に構えたやら。

 ギャンガルドの首筋に、セインロズドの切っ先が、またもやスレスレのところで留まっていた。

「それとも、僕が叱った方がいいのかな?」

 海賊王が、刃を突きつけられたまま口笛を吹き、不敵に笑う。

「やっぱ、惚れちまうね」

「むさくるしい男に惚れられたって、僕にそっちの趣味はないんだけど?」

 ちょっと前に、尻を思いきりこの男に撫でられたのを思い出し、セインは心底嫌そうな顔をした。

「ま、物騒なモンはしまってくれや。きっちり話を進めようか」

 刃先をつまむギャンガルドの手を叩いてどけさせると、セインは剣を一振り払って、脇に持ち替えた。

「・・・しまっちゃくれねえのかよ?」

「前に言っただろ?君は信用できないからね」

 油断大敵なこの男を前にして、セインは一時たりとも気を抜く気はないようだ。

「やれやれ」

 ブツブツと文句を言いながら、ギャンガルドはようやく腰を落ち着かせた。

「で?私たちの知り合いの王族が何?」

 キャルが話を促せば、ギャンガルドはにやにやとキャルを見やった。

「見当は付いてるんだろ?」

「そりゃあね?わたしとセインが知っているっていったら、一人しかいないもの。・・・というより、王族もいいところじゃない。王様でしょ?」

「へえ?」

 わざとらしく驚いた顔をして見せるので、キャルもセインも、カチンと来た。

 ドドン!

「のわ!」

 すかさず撃たれる。

「あーあー、キャプテンも懲りないっすねえ?」

「いいの!俺はこれで!」

「へーい」

 あきれる部下に噛み付く海賊王。

「ホント、君らクイーン・フウェイルのクルーは、苦労するよね?」

 同情すれば、タカがこくこくと、何度も首を縦に振る。

「それでも俺が好きだろ?」

「あー・・・」

 ギャンガルドに面と向かって言われれば、禿げた頭を真っ赤にして、タカが言葉に詰まる。

「自惚れさんだわ!自惚れさんがここにいるわ!」

「自信過剰なヤツって嫌だよねー?」

 キャルとセインが二人でこそこそ話し込めば、ギャンガルドがフッと微笑んだ。

「なんだあ?二人とも。俺に惚れたか?」

 ちゃき

 すぐそばで金属音。

 右のこめかみに銃口。

 左の首筋にセインロズド。

「だから、僕にその気はないと言っているでしょう?」

「私だって、ギャンギャンなんか無理だし」

 恐ろしく冷たい空気に挟まれて、ギャンガルドは身動きが取れなくなった。

「ああ、だからキャプテン、少しは懲りて下さいよお」

 泣きそうなタカが、キャルに縋り付いて、ようやく二人はギャンガルドを解放した。

「タカを連れて来て正解だったなあ」

 パタパタと顔を手で扇ぐギャンガルドに、セインもキャルも、冷たい目線を向けたままだ。

「とにかく、私たちの知り合いの王族なんて、この国の王様その人しかいないのよ。分かっていてそういう態度を取るんだから、容赦しなくて当然でしょう?」

「僕らで楽しむより、他にいくらでも楽しませてくれる相手がいるでしょうに」

「命がけで楽しめる相手なんか、そうそういねえよ」

 からかった相手にからかい返されたり、下手をすると冗談が通じず、本気で命が危なかったりするのだが、それさえ楽しいらしい。

「いろんな意味で命がけっずね」

 ハンターの中でも凄腕で知られるゴールデン・ブラッディ・ローズと、伝説の大賢者相手であれば、どんなことでも不足はないといったところか。

 しかしそれにしても。

「こんなことで命を落としたいなら、いくらでも落とさせてあげるわよ?」

 からかって命を落とすなら、命なんていくらあっても足りない。

「ええと、そ、そうだ!お嬢!王様と知り合いって、凄えじゃねえかい!」

 タカが必死に話を元に戻す。

「知り合いっていうか、どちらかと言ったらセイン絡みよね」

 キャルが気の毒に思ったのか、タカの話に受け答え、気の良い海賊船のコックは、ひとまず胸を撫で下ろした。

「僕がらみっていうの?」

「だって、おじいちゃんの上司でしょう」

「いや、上司って事じゃないんじゃ・・・」

 国王とその臣下は、別に会社勤めをしているわけではない。

「まあ、似たようなものか」

 とりあえず納得しておくことにする。

「思いっきり省略するけど、僕が昔仕えた人の子孫が貴族でね。それで、王とも繋がりがあるんだよ」

 思いきりと言うとおり、思いきりよく省略して説明したが、それでタカは納得できたらしい。

 しきりに感心している。

「へえ!旦那はやっぱ一味違うお人に仕えてなさったんだなあ」

「・・・・」

「なんすか?」

「いや、何でもないよ。あの説明でよかったかと思ってね」

 きみは一味どころか二癖も七癖もある人に仕えているじゃないか、などとは、気の毒で言えない。

「彼はもともと騎士だったしね。それで、王様が何だって?」

 ギャンガルドよりも、タカから話を聞いた方が早いと、セインはタカに話を促した。

「ああ、そうそう。なんだか旦那、やらかしたみてえじゃないですか」

「は?」

 国王がどうしたのか聞きたいのに、自分が何かをやったとは、どういう話の展開か。

「愚痴ってましたぜえ?セインロズドのせいで、我が親衛隊はすっかり自信をなくしてしまった、とかどうとか」

 口真似をしながらのタカの説明に、思い当たる事があるので、セインは言葉を濁した。

「あー・・・」

「まあ、そういいながら、エライ精鋭ぞろいで、苦労したんですがね。船がでかいわりに一隻でうろついてっから、国王旗なんか出してるけども、王族の端くれのどれかだろうって乗り込んでみたらいけねえや。王様そのものでやんの。のん気な王様も居たモンですよ」

 普通なら、国王ともなれば護衛をつけて厳重に、団体で航海するものだ。それを一隻で航海をしていたというのは、この国の国王らしいというか何というか。

「彼は君らのキャプテンと、似ているところがあるからねえ」

 しみじみと、セインが呟けば、タカはうん、うん、と、首を縦に振っている。

「そりゃあもう。用があるなら余を通せ、なんて、大音声で登場して、一気にキャプテンと意気投合ですよ。珍しいもん見たなあ、ありゃあ」

「ギャンガルドと意気投合・・・」

 それは確かに珍しい。


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