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第3話

蝉の声、海の音が僕の耳に響いてく。

不思議と心が落ち着く。


隣には日和もいる。

それがとても僕を穏やかにさせた。


「ねー 海を眺めてばっかりいないで何かして遊ぼ」

「何して遊ぶ?」

「それは君が決めてー」


頬をふくらましてる日和がなんだか可愛かった。

うん、日和は可愛いな。


「あぁ! 笑ってる!」


そういうと日和はとっても嬉しそうに笑った。

僕が笑ったくらいで喜ぶなんておもしろい人だな。



時間が過ぎてく

日和といるときは時間の流れがはやくて戸惑ってしまう

もう少し

もう少しだけそばにいたい



ふと、どうしてそばにいたいのだろう?と思った。

でも、少し考えたところでやめた。

あとで一人のときに考えようと思った。






その時、頭がぐらついた。

そのまま倒れこんでしまう。

慌てている日和の姿が目にはいる。


「あ…あれ? なんでかな」

「だ、大丈夫なの…?」


日和に迷惑かけないようにと立ち上がろうとする。

…立てない。

どうしてだろう?

どんどん意識が朦朧とする中、今までの色んなことを思い出した。

どうして僕はこんなんなんだ!と、激怒している記憶。

自分の体を傷つけた記憶。

すべてがつらくなって自分で終わらせようとした記憶。

病院での記憶。

両親との記憶。

日和との出会いの記憶。

そして日和とのささやかながらたくさんの思い出をつくった記憶。


そして、僕は重要なことを忘れていたことに気づいた。

医者からの言葉。

「もう君はそんなに長く生きれない。この夏を越えれるかどうか。

残された時間をどう生きるか考えなさい」

どうして僕はこんな重要なことを忘れていたんだろう。


あの時、日和と初めて会ったとき。

僕は見慣れた景色を見ながら残り少ない時間をどう生きようか考えてたんだ。

何も思いつかなくて「もうどうでもいい」と言った時に日和があらわれたんだっけな。

図書館で勉強していたのも、暇な時間を潰すため。

学校へは行けなかった。

もういなくなってしまう人が行くところではないと思った。

いや、違うか。

何か大切なものが出来るのが怖かったのかもしれない。

失うとわかっているものを大切にするのが怖かったのかもしれない。

そんな僕の心を日和はずっと支えてくれていた。

今にも消えてなくなってしまいそうな僕の心を。

日和と過ごしていると、自分がこの世からいなくなることを忘れていた。

日和の笑顔を見ると僕のすべてが、僕の今までの人生が癒されていた。

なんだかいろいろ思い出すと頬がゆるんだ。


「ど、どうして笑ってるの…?」

「お…思い出し笑い…」


声を出すのもつらい。

体中から汗が出る。


どうやって日和に伝えようか

僕がいなくなることを。


「救急車呼んでおいたから…ねっ」

「…ありが、と」


そう言って日和の顔を見ると、泣いていることに気づいた。

胸がギュッと締め付けられる。


日和…泣かないで

僕は日和の笑った顔が好きだよ。


その時、僕は気づいた。

僕は日和のことが好きなんだ。


そう気づくと、最後の心のピースがはまったような気がした。

心の隅々まで満たされた。


あぁ、そうか

日和のことが好きだったのか

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