絶望の光
最後に話したのはいつだっただろうか。
思い出せば、「この葉巻、安いんだ。高いのはなかなか手に出せなくてさ」
なんて言ってたか。
そういえば、アメリカに来てからタバコを吸っていない気がするんだ。
綺麗な空を眺めているとあまり気分じゃなくなってね。
君が残した残香、マーガレットのしおりはあの家と一緒に燃えた。
さよなら、エリック。僕はもう死んだ、また生まれ変わるんだ。
ちくっとしますよ。
ウィリアム・ジェームス、三十三歳、男。
会社の定期検診では一年ごとに行われ、今日は哀れなる血液検査の日だった。
私はただ、陰性の文字を確かめる為に検査を行ったのだ。
「エイチアイブイ」
まず、性病を持っている恥ずかしさより、恐怖が私を襲った。
あれ、どの人から移ったんだ。探せ、探せ!探さないと……。
顔はますます青くなってきていた、手の震え、動悸が激しくなっていき、
私は帰り道でひどく泣きながら街中を歩いた。
「大丈夫ですか」
街中で皆が泣いている私から端に避けていく場面に、たった一人の親切な男がいた。
彼はそっとハンカチを私に渡してくれた。
「あ……。だっ、大丈夫です!」
「とても大丈夫そうには見えない。何があったのかは知りませんがこれで涙でも拭いてください。」
彼の手がそっと私の手に触れた。
「ダメだっ!触るな!」
そのまま会社で見たのが悪かった、家で見ればこうはならなかったのに!
冷静さを保てずにそのまま泣き崩れる私だったが、彼は親切に近くのカフェで何があったのかと話し合うことにした。
「それで、血液検査の結果で……」
彼は悲しそうな目で私に問いかけた。
「申し遅れちゃったけど俺はエリック・マーティーン。よろしく。君の名前は?」
「僕はウィリアム。ウィリアム・ジェームズ。こちらこそ。」
彼は場所を変えようかと言ったが、このまま帰らせてもらうといい私は店を出た。
近くのタクシーを捕まえようとして、道路に手を伸ばしたが夜遅くだったのかなかなか捕まらない。
すると一台のタクシーがこちらに気がついた。ドアを閉めようとした瞬間、
「待って!これ、僕の連絡先だからいつでも連絡して」
と最後まで親切な彼だった。私はその紙をくしゃくしゃにしてポケットに突っ込んだ。もう会うことはない。会えないのだ、彼を愛してしまいたいほど親切だから。
同性愛者でエイチアイブイ。それに立派なアラサーだ。トリプルコンボでもうボコボコなのに、もう勘弁してくれ神様。




