報われる恋と報われない恋
春が過ぎ、夏を感じる空になってきた。僕と天との距離は急速に縮まっていた。
その様子を見ている純はやはり複雑な表情を浮かべていることが多かった。しかし、彼と話すと
「早く告っちまえよ!絶対行けるから!」
言ってくれ、常に僕たちを応援してくれていた。
一方の舞はというといつも苛立ちを隠せていない様子だった。真反対のクラスである舞の耳にも噂が伝わっているようだ。
ある晴れた日、僕は天のことを誘って二人で電車に乗って海を見に行った。砂浜に座り、波の音を聞きながら、彼女は
「綺麗だね。ずっと見ていたい。」
と言った。僕は決意した。たとえ、余命という期限があっても、この一瞬の輝きを分かち合いたいと。
「天。君のことが好きだ。」
天は驚いた顔で俺を見つめた後、満面の笑みになった。
「私も、柚希のことが大好きだよ!」
初めて名前で呼ばれ、抱きしめられた時、僕は知っていた。これは残酷な期限付きの恋だと。しかし、僕の心はその事実よりも大きい愛に包まれていた。
僕たちが付き合い始めた噂はすぐに広まり、それは純の耳にも、舞の耳にも入ったようだ。純は次の日の開口一番
「おめでとう!!」
と言っていた。しかし、その目の奥には深い哀愁が漂っていた。
舞は相当怒っているような話は聞いた。そして僕の知らないところで何かが始まっていたようだ。
ある日の昼休み、舞は複数人の仲間とともに天を体育館裏に呼び出した。
「話って何?」
と天は問う。天も何かを感じているようだ。
「あなた、柚希と付き合ったって本当?」
「まず、名前を名乗ってもらえる?」
天は冷静な受け答えをする。その態度が舞に火をつけてしまった。
「私は浅野舞!柚希の幼馴染よ!私はずっと柚希のことが好きだったのに!柚希は!昔から舞のものにしたかったのに!!どれだけ舞が柚希のそばにいたと思ってるの!?」
「あなたの気持ちはわかる。でも、私は柚希君の過去の長さじゃなくて、今の彼が好きなの。そして、私も誰にも言えない秘密がある。だから、彼のそばにいたい」
天は毅然としていた。
「嘘よ!優等生ぶって!どうせすぐに飽きるくせに!」舞は感情を爆発させ、天に手をあげようとする。振りかぶった右手が天の頬に当たる。直前。僕が間に入って拳を受けた。舞は凍りついたような表情をして言う。
「柚希。なんで。」
「天、大丈夫?怪我は?」
「ううん。ない。柚希くんこそ、なんでわかったの?」
「天と舞が体育館に向かってるってバスケしてた純が教えてくれた。」
そう、昼休みにバスケをして遊んでいた純が真っ先に気づいて僕に連絡をしてくれた。彼は他の舞の仲間を帰らせてくれているだろう。目をやると純はピースを作っていた。あいつ。
「柚希…。」
「舞。なんでお前がこんなに干渉してくるんだ。」
「気づいてるでしょ。舞は柚希のことが好きなの。ずっと前から。なのになんでそんな女。」
「そんな女とか絶対に言うな。天は今俺が一番大事にしてる子だ。」
「なんで…。」
「それに、他の人を傷つけるような人は好きになれない。」
「そんな。」
舞は膝から崩れ落ちる。その表情から察するに、ようやく自分の罪に気付いたらしい。そして泣きながら言った。
「ごめん…ごめん、柚希。私、ただ、選ばれたかっただけなの…」
天は優しく舞の肩を抱いた。この一件で、舞は天の芯の強さと優しさに触れ、彼女を大切な親友として認めた。こうして、俺、天、純、舞の4人は固い友情で結ばれたグループになった。純は複雑な表情を浮かべながらも常に笑顔で応援し続けてくれた。