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最後の嘘  作者: 葉結
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桜の道と僕を囲む壁

桜が散りばめる道を見ながら早いものだとしみじみと感じる。

春休みがあったといえども、何も変わらないような日々だと感じた。否、そんなことはなかったのかもしれない。僕にとっては最後の春休みだったのだから。

「おはよう!!柚希!!」

背中から元気な声と共に飛び蹴りをくらった。

「いてぇな!舞!」

こんなことをするのは1人しかいない。その通りだった。

「ごめんねー。柚希。ついつい癖で笑。」

舌を出しながら両手をつけて反省してるようでしてない謝罪をするのは、幼少期からの幼馴染、浅野舞だ。

「おはよう、本田柚希くん!」

「もうちょっと反省しろ。」

「いやー、ごめんって。そんなに怒らなくても。」

と言いながら高い位置で結ばれた黒髪ポニーテールを揺らしながら前を歩く彼女はバスケ部のマネージャー。きっと男から好かれる性格なのだろう。僕以外の。

「柚希ー、今年も同じクラスだといいね。」

「お前と同じクラスは二度とごめんだ。」

「ひどい!そんなこと言ってたらモテないぞー。」

そう、僕らが通う白陵高校に入学した去年は舞と同じクラスだった。

舞はことあることに僕に干渉してきて、僕はうんざりしていた。それなのにも関わらず、最近僕は彼女からの好意に気づいてしまい、どのように関わればいいのかわからなくなってしまった。

桜が満開に咲く校門をくぐり抜けると、1人の男子が手を振って近づいてきた。

「おーい、柚希!おはよう!」

黒髪を靡かせる彼は木村純。小学校からの親友だ。

「おはよう。純。」

「クラス替え見たか?いや、今来たばっかだから見てないか笑。」

僕より少し高い目線をしている彼はバスケ部でシューターをしている。彼曰く、「期待のエース」なのだと。

「ってことで俺が見てきましたー。柚希は俺と同じA組です!」

「ちょっとー舞は?」

「あぁ、確か中村はF組。真反対だなぁ。」

「ちょっと!嘘でしょ!」

と舞はクラスが張り出されている掲示板に駆け出していく。それに呼応するように僕らも歩みを進める。

「柚希どうなんだ、足の調子は。」

「あぁ悪くはないよ別に。」

「そっか…。そーいや今年の担任、原ちゃんなんだって!おもろいし、当たりだよなぁ。」

「提出物には厳しいけどな。」

そんな会話をしていると教室に着いた。去年はB組だったから、また新鮮な気持ちだ。

「よっしゃー!また同じクラスだな!!」

純はすでに教室にいた同じ部活の男子のところまで駆けていた。僕はそれを横目に席に着こうとする。本田だから、今年も窓際か。窓際の前から2番目、僕の新しい席に着こうとすると、後ろから声をかけられた。

「ねぇ、」

「うん?」

「背、高いね。」

振り向くと、地毛とは思えないような、明るい茶色の髪をした女子が座っていた。どこか懐かしさを覚える彼女はとても美しい容姿をしていた。鼻が通っていて、綺麗な二重。女子からも、男子からも人気がありそうだ。見惚れていたのだろう。彼女からの言葉に返答できずにいると、彼女は言葉を続けた。

「私、宮野天。1年間よろしくね。本田柚希くん。」

「なんで俺の名前を知って…。」

「前の席だったから、周囲の人の名前くらい覚えるよ。当然でしょ。」

彼女はさも当たり前のように言うが、僕は去年クラスの人の名前を半分も覚えていなかったので、何も当然とは思えなかった。

「よろしく。宮野さん。」

「ところで、さっきの続きだけど、身長は何センチなの?」

「あー、一応184センチ。」

「高いね。私なんて158センチなのに。」

「昔バスケしてたからね。」

「昔?」

「今は怪我したから辞めちゃったんだ。」

「へぇ。」

初対面なのに話が進む。何も自分は話すのが苦手なわけではないが、関わりは減らそうと思っているのに。

「全員席座れー。」

「あー、原ちゃんだー!」

「今年もだな。木村。嬉しいだろ?」

「全然っす。」

担任の原先生が入ってきたことによって、彼女との会話が途切れてしまった。否、その方が良いか。僕と仲良くなったところで何もいいことなんてない。どうせすぐ、いなくなってしまうのだから。

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