親友
冬休みも明け、学校が始まった。みんなが冬休み気分で浮かれている中、僕の入院は3日後に決まっている。このことは天と家族しか知らないが、クラスメイトのみんなは何かしらの違和感は覚えているだろう。
今日僕は純を、中学時代に純と練習して怪我をした、バスケと別れた公園、天と出会った公園に呼び出した。
ボールを持って純が来た。そしてボールをパスする。
「待たせたな。」
「いや、呼び出したのは俺だ。」
シュートをしながら答える。ボールを取り、純はまっすぐ僕を見つめながら言う。
「柚希、俺の方こそ、話がある。…お前が最近、隠し事してるのはわかってる。俺のせいだろ?怪我から、お前は変わった。俺がもっと慎重にプレイしてれば…」
純は涙をこぼした。
「純、違う。あの時、お前は悪くない」
「そんなことねぇよ!俺は、お前をずっと師匠だと思ってた。もう、お前を追い越すことは二度とできない。俺は、お前が幸せなら、それでいいんだ」
純は、長年の後悔と尊敬の念を吐き出した。
「ありがとう、純。お前は俺の最高の親友だ。…でもな。俺が壁を作ったのは、怪我だけが理由じゃないんだ」
俺は深呼吸し、純の目を見つめた。
「俺の体はもう動かないんだ。バスケじゃなくて…病気なんだ。長く生きられない。今年の春は、迎えられないんだ。」
純は立ち上がろうとして、力が抜け、その場に崩れ落ちた。「嘘だろ…」と繰り返す声だけが響いた。
「純、だからこそお願いがある。」
「嫌だ…。」
そして、僕は笑顔で言った
「俺の死んだ後、天を頼む。」
「それは、俺じゃない。お前が幸せにするんだ。」
「お前、天のこと好きなんだろ。俺に隠し事したって無駄だよ。」
「なんで…。」
「お前が天を見る横顔が、目が、恋してた。とでも言っておくか。」
「そんなことない。」
「天のことが好きで、俺の親友のお前だからお願いできるんだ。天を頼んだ。」
その気持ちには曇りは一つもなかった。
その数日後、朝の白陵高校への通学路で、俺は舞に呼び止められた。
「ねぇ、柚希。もう逃げないで。私、怖いの。何があったの?隠し事してるよね?」舞の瞳は不安に満ちていた。
「…ああ、隠してた。ごめん、舞」俺は頭を下げた。「俺は、病気なんだ。長く生きられない」
舞は嗚咽を漏らしながら俺の胸を叩いた。「なんでよ…!なんで私たちに頼ってくれなかったの!私たちは、親友でしょう!」
舞は泣き崩れたが、すぐに顔を上げ、涙を拭った。
「わかった。でも、約束して。最後まで、私にもそばにいさせて。天、純、そして私。四人で、最後まで笑っていようよ」
舞の強い決意に、俺はただ頷くことしかできなかった。