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最後の嘘  作者: 葉結
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最後の嘘

本田柚希…高校2年生、男子高校生

木村純…高校2年生、柚希の親友、男子高校生

浅野舞…高校2年生、女子高生、柚希の幼馴染

宮野天…高校2年生、女子高生

医師…茶色の髪をした、柚希の担当医

⭐︎本田家

本田隼人…柚希の父。柚希への関心が薄い

本田桜子…母。柚希に過干渉。

本田優人…弟。中学2年生。バスケをしている。反抗期。

本田鈴…妹。小学6年生。ピアノをしている。

⭐︎宮野家

宮野京也…天の父。医師。妻(玲)の死後、天への関心が薄くなる。

宮野玲…母。ピアノの先生をしていた。天の高校入試の数日前に心筋梗塞にて死去。

宮野空…妹。姉(天)同様ピアノをしている。


フルバージョンです。ep2からは章ごとに分け、修正・加筆をしています。ぜひ、お読みください。


桜が散りばめる道を見ながら早いものだとしみじみと感じる。

春休みがあったといえども、何も変わらないような日々だと感じた。否、そんなことはなかったのかもしれない。僕にとっては最後の春休みだったのだから。

「おはよう!!柚希!!」

背中から元気な声と共に飛び蹴りをくらった。

「いてぇな!舞!」

こんなことをするのは1人しかいない。その通りだった。

「ごめんねー。柚希。ついつい癖で笑。」

舌を出しながら両手をつけて反省してるようでしてない謝罪をするのは、幼少期からの幼馴染、浅野舞だ。

「おはよう、本田柚希くん!」

「もうちょっと反省しろ。」

「いやー、ごめんって。そんなに怒らなくても。」

と言いながら高い位置で結ばれた黒髪ポニーテールを揺らしながら前を歩く彼女はバスケ部のマネージャー。きっと男から好かれる性格なのだろう。僕以外の。

「柚希ー、今年も同じクラスだといいね。」

「お前と同じクラスは二度とごめんだ。」

「ひどい!そんなこと言ってたらモテないぞー。」

そう、僕らが通う白陵高校に入学した去年は舞と同じクラスだった。

舞はことあることに僕に干渉してきて、僕はうんざりしていた。それなのにも関わらず、最近僕は彼女からの好意に気づいてしまい、どのように関わればいいのかわからなくなってしまった。

桜が満開に咲く校門をくぐり抜けると、1人の男子が手を振って近づいてきた。

「おーい、柚希!おはよう!」

黒髪を靡かせる彼は木村純。小学校からの親友だ。

「おはよう。純。」

「クラス替え見たか?いや、今来たばっかだから見てないか笑。」

僕より少し高い目線をしている彼はバスケ部でシューターをしている。彼曰く、「期待のエース」なのだと。

「ってことで俺が見てきましたー。柚希は俺と同じA組です!」

「ちょっとー舞は?」

「あぁ、確か中村はF組。真反対だなぁ。」

「ちょっと!嘘でしょ!」

と舞はクラスが張り出されている掲示板に駆け出していく。それに呼応するように僕らも歩みを進める。

「柚希どうなんだ、足の調子は。」

「あぁ悪くはないよ別に。」

「そっか…。そーいや今年の担任、原ちゃんなんだって!おもろいし、当たりだよなぁ。」

「提出物には厳しいけどな。」

そんな会話をしていると教室に着いた。去年はB組だったから、また新鮮な気持ちだ。

「よっしゃー!また同じクラスだな!!」

純はすでに教室にいた同じ部活の男子のところまで駆けていた。僕はそれを横目に席に着こうとする。本田だから、今年も窓際

か。窓際の前から2番目、僕の新しい席に着こうとすると、後ろから声をかけられた。

「ねぇ、」

「うん?」

「背、高いね。」

振り向くと、地毛とは思えないような、明るい茶色の髪をした女子が座っていた。どこか懐かしさを覚える彼女はとても美しい容姿をしていた。鼻が通っていて、綺麗な二重。女子からも、男子からも人気がありそうだ。見惚れていたのだろう。彼女からの言葉に返答できずにいると、彼女は言葉を続けた。

「私、宮野天。1年間よろしくね。本田柚希くん。」

「なんで俺の名前を知って…。」

「前の席だったから、周囲の人の名前くらい覚えるよ。当然でしょ。」

彼女はさも当たり前のように言うが、僕は去年クラスの人の名前を半分も覚えていなかったので、何も当然とは思えなかった。

「よろしく。宮野さん。」

「ところで、さっきの続きだけど、身長は何センチなの?」

「あー、一応184センチ。」

「高いね。私なんて158センチなのに。」

「昔バスケしてたからね。」

「昔?」

「今は怪我したから辞めちゃったんだ。」

「へぇ。」

初対面なのに話が進む。何も自分は話すのが苦手なわけではないが、関わりは減らそうと思っているのに。

「全員席座れー。」

「あー、原ちゃんだー!」

「今年もだな。木村。嬉しいだろ?」

「全然っす。」

担任の原先生が入ってきたことによって、彼女との会話が途切れてしまった。否、その方が良いか。僕と仲良くなったところで何もいいことなんてない。どうせすぐ、いなくなってしまうのだから。



始業式から数日、いつもと変わらぬ朝食を食べていると、母の桜子が声を掛けてきた。

「柚希、具合はどうなの?」

「別に、普通だよ。変わりない。」

「そっか。何かあったらすぐに言ってね。すぐに行くから。もし学校でも、迎えに行くからね。あと…」

「そんなに干渉しなくていいから。俺は1人で大丈夫。」

「そんなこと言ったって…。」

「大丈夫だから。」

席を立ち上がってカバンを持つ。最近はこんな会話しかしていない。ちょうどその時父の隼人が靴を履いて家を出ようとしていた。父は昔から僕にあまり関わらない。よくいえば放任主義だが、いつも子供より仕事を優先するような人だった。なんと声を掛ければいいのか分からず立っていると後ろから抱きつかれる。妹の鈴だ。

「柚希兄!おはよう!もう行っちゃうの?」

「おはよう。鈴。うん、ちょっと早いけどね。」

「えぇー。じゃあ髪結ってくれないのー?」

「母さんにお願いしな。じゃあ行ってくるね。」

「うん!帰ってきたら宿題教えてねー!」

6年生になった鈴はピアノをしている。年が少し離れていることもあって懐いてくれている。あと、弟の優人がいるのだが…反抗期だから寝ているのだろう。兄として遅刻はしてほしくはないのだが。いつもと変わらない道、と思っていたが、桜が昨日より少し散っているようにも感じた。

「こんな風に人もいつか散ってしまうんだろうな。」

と1人で呟いていると、前に見覚えのある黒髪の男子が立っている。そう。純だ。

「おはよう!柚希。今日は早いんだな!」

「おう。朝から元気だな。」

「これから朝練だからな!」

漫画に出てくるような熱血キャラのように朝から元気な彼に耳がキーンとなる。そのまま彼は続ける。

「そーいえば柚希は最近、宮野さんと仲良さそうだな。」

「あぁ。席が後ろだからなんか話してくれる。」

「仲が良さそうで何よりだな。」

「宮野さんって去年A組だっけ?」

「そう!俺と同じクラス!」

そう話す彼の横顔はとても楽しそうだった。そういえば彼は授業中よくこっちを見ている気がする。俺のことを見ていると思っていたが、もしかしたら宮野さんのことを見ているのか?ということは純は…。

「聞いてるか?柚希?」

「あー、悪い。もう一回頼む。」

「だから今日の帰りだよ!オフだから遊び行こうって言ってたけど、急用ができちゃってな。悪いけど…。」

「あー、気にすんな。」

そんなことを言っていたら学校に着いた。部室棟の前で

「じゃあ朝練頑張れよ。」

と告げ去ろうとすると、純は

「柚希。えっと…。」

と口篭っている。

「なんだよ?」

「いや、やっぱいい。じゃあな!」

と言い走りながら去っていく。そんな彼を見つめていると、過去の自分を思い浮かべる。ああ、僕も彼のように何も考えず、今に打ち込むことができるといいのに。僕は教室向かう足取りを早めた。


帰りのHRが終わる合図の号令がする。袋が破れた気体のやうにしてクラスが活気に溢れた。僕はと言うとその空気とは別に荷物をまとめてそそくさと教室をでる。今日は純に予定ができたからいつもと同じように帰るだけだ。下駄箱で靴を履き替えていると、後ろから聞き慣れた声がした。

「本田くん、今帰り?」

振り返ると宮野さんがいた。

「うん。君も?」

「そう。よかったら途中まで一緒に帰らない?」

「いいよ。」

前言撤回。いつもと違う帰り道になりそうだ。


「本田くんってどこに住んでるの?」

「えっと東雲町。」

「あ、隣町。私山吹町。」

「お嬢様の住む町だね。」

「そんな長くないよ。高校進学前くらいに越してきたくらいだし。」

「そうなんだ。お父さんの転勤?」

「うん。医者なんだ。」

どうりで彼女はしっかりとしている。感受性が豊かな性格だとは感じているが、知的な言葉遣いもこの数日で感じていた。授業でも簡単に数学の問題を解いている姿を見ると頭が良いのだなと思った。

「ねぇ、本田くん。いつも気になってるんだけどさ。」

「何?」

「本田くんってなんでいつも1人なの?木村くんとたまにいるのは見るけど…。会話してると、人と関わるのが嫌いな感じはしないのに。」

彼女は直球で聞いてきた。

「…別に。1人の方が気楽なだけだ。」

僕はぶっきらぼうに答える。

「ふーん。私、一人でいる人を見ると、お母さんを思い出すんだ」

宮野さんの表情が一瞬曇った。

「私の母、ピアノの先生だったんだけど、すごく優しい人だったの。高校受験の前に亡くなっちゃたんだけど。でもね、時々すごく寂しそうな顔してた。誰でも心の中には、誰にも言えない秘密があるんだと思う。本田くんも、そうでしょう?」

彼女の言葉は僕の秘密に静かに触れてきた。俺は思わず立ち止まった。

「宮野さんは、強いな」

「強くないよ。でも、自分だけが抱え込んで苦しむのは、もう嫌なの。」

「それに、大事な思い出だしね。」

そう語る彼女はなぜか嬉しそうだった。僕は、彼女に母を失った孤独な少女の面影を見た。その日から、僕を囲っていた壁は少しずつ崩れていったようだった。


春が過ぎ、夏を感じる空になってきた。僕と天との距離は急速に縮まっていた。

その様子を見ている純はやはり複雑な表情を浮かべていることが多かった。しかし、彼と話すと

「早く告っちまえよ!絶対行けるから!」

言ってくれ、常に僕たちを応援してくれていた。

一方の舞はというといつも苛立ちを隠せていない様子だった。真反対のクラスである舞の耳にも噂が伝わっているようだ。


ある晴れた日、僕は天のことを誘って二人で電車に乗って海を見に行った。砂浜に座り、波の音を聞きながら、彼女は

「綺麗だね。ずっと見ていたい。」

と言った。僕は決意した。たとえ、余命という期限があっても、この一瞬の輝きを分かち合いたいと。

「天。君のことが好きだ。」

天は驚いた顔で俺を見つめた後、満面の笑みになった。

「私も、柚希のことが大好きだよ!」

初めて名前で呼ばれ、抱きしめられた時、僕は知っていた。これは残酷な期限付きの恋だと。しかし、僕の心はその事実よりも大きい愛に包まれていた。


僕たちが付き合い始めた噂はすぐに広まり、それは純の耳にも、舞の耳にも入ったようだ。純は次の日の開口一番

「おめでとう!!」

と言っていた。しかし、その目の奥には深い哀愁が漂っていた。

舞は相当怒っているような話は聞いた。そして僕の知らないところで何かが始まっていたようだ。

ある日の昼休み、舞は複数人の仲間とともに天を体育館裏に呼び出した。

「話って何?」

と天は問う。天も何かを感じているようだ。

「あなた、柚希と付き合ったって本当?」

「まず、名前を名乗ってもらえる?」

天は冷静な受け答えをする。その態度が舞に火をつけてしまった。

「私は浅野舞!柚希の幼馴染よ!私はずっと柚希のことが好きだったのに!柚希は!昔から舞のものにしたかったのに!!どれだけ舞が柚希のそばにいたと思ってるの!?」

「あなたの気持ちはわかる。でも、私は柚希君の過去の長さじゃなくて、今の彼が好きなの。そして、私も誰にも言えない秘密がある。だから、彼のそばにいたい」

天は毅然としていた。

「嘘よ!優等生ぶって!どうせすぐに飽きるくせに!」舞は感情を爆発させ、天に手をあげようとする。振りかぶった右手が天の頬に当たる。直前。僕が間に入って拳を受けた。舞は凍りついたような表情をして言う。

「柚希。なんで。」

「天、大丈夫?怪我は?」

「ううん。ない。柚希くんこそ、なんでわかったの?」

「天と舞が体育館に向かってるってバスケしてた純が教えてくれた。」

そう、昼休みにバスケをして遊んでいた純が真っ先に気づいて僕に連絡をしてくれた。彼は他の舞の仲間を帰らせてくれているだろう。目をやると純はピースを作っていた。あいつ。

「柚希…。」

「舞。なんでお前がこんなに干渉してくるんだ。」

「気づいてるでしょ。舞は柚希のことが好きなの。ずっと前から。なのになんでそんな女。」

「そんな女とか絶対に言うな。天は今俺が一番大事にしてる子だ。」

「なんで…。」

「それに、他の人を傷つけるような人は好きになれない。」

「そんな。」

舞は膝から崩れ落ちる。その表情から察するに、ようやく自分の罪に気付いたらしい。そして泣きながら言った。

「ごめん…ごめん、柚希。私、ただ、選ばれたかっただけなの…」

天は優しく舞の肩を抱いた。この一件で、舞は天の芯の強さと優しさに触れ、彼女を大切な親友として認めた。こうして、俺、天、純、舞の4人は固い友情で結ばれたグループになった。純は複雑な表情を浮かべながらも常に笑顔で応援し続けてくれた。


「宿題多すぎる。」

「もうできない。」

机に崩れ落ちる舞と純は夏休みが進み、1週間後には学校を控えているが宿題が終わっていないようで四人で舞の家で勉強会を開いた。

「わかりません。天先生。」

「ここは、おっと。」

「大丈夫?」

立ちあがろうとして転びそうになった天を僕が支える。

「ありがとう。」

「もういいよ。柚希。2人でデートしてこい。」

「冷やかしはいいです。ぶつぶつ言ってないで宿題しろ。」

2人はバスケ部。夏休み中は忙しかったらしい。

「なんでこんなやつと同レベルに!」

「こっちのセリフよバカのっぽ!」

「なんだと!」

みんなで笑い合い、純が舞をからかい、舞が怒る、いつも通りの光景に笑い合った。


帰り道、天と並んで歩いている時、異変は起きた。

「ねえ、柚希。次の数学のテスト範囲、多いよね」

天が話しかけてきた。

「ああ、今回は難しそうだ」

俺は少し咳き込み、次の瞬間、激しい立ち眩みに襲われ、思わず電柱に手をついた。

「大丈夫?」

天が慌てて駆け寄ってきた。その時、彼女の手に触れた。ひどく冷たかった。

「ごめん、大丈夫だ。最近ちょっと寝不足で…」

と俺は誤魔化したが、天の表情は曇ったままだった。最近、休むことが増えてきた。悪魔の足音は近づいてきているように感じる。僕に残された時間はもうあまりない。


夏休みの最終日、俺の体調に少しずつ異変が出始める頃、僕と天は近くの小さな水族館へデートに行った。

クラゲの水槽の前。青い光に照らされた天の横顔は、まるで人魚のように幻想的だった。

「ねぇ、柚希。クラゲって、何考えてるんだろうね?」

天が囁いた。

「さあな。何も考えてないんじゃない?ただ、流されるままに生きている。」

「ふふ。でも、流されているだけじゃないよ。生きてる。限られた時間の中で、ただ漂っているだけに見えても、光を放ってる。私たちみたいだね。」

天の言葉が胸に刺さった。僕たちの恋は、まさに「限られた時間の中で光を放つクラゲ」だ。

僕は天の肩を引き寄せた。

「そうだね。僕たちは、誰よりも輝いてる。」

天は僕に頭を凭れかけさせ、幸せそうに目を閉じた。僕は、彼女に隠し事があることは薄々感じていた。ただ、この瞬間だけは何もかも忘れて彼女の体温を感じていた。


「体調は悪化していますね。」

カルテを見つめる医師がそう告げる。茶髪の40代半ばごろだろうか?聡明な顔つきをしている彼は僕の担当医だ。

「冬ごろからは入院しなければならないかもしれません。覚悟はしておいてください。」

「はい。」

やはり魔の手は近づいてきているようだ。

「今日は親御さんは?」

「ついてきていません。僕が無理を言いました。」

「では、何か相談したいことがあるのでしょう。どうぞ。」

彼は頭が回る。判断が早かった。

「先生は、大切な人を残して先に逝くことに、どう感じますか?病気のことを告げるべきなのでしょうか。」

「…。なるほど。青春だね。」

ニヤッとした彼は恐ろしいくらいに頭が回る。

「結論からいうと、僕にはわからない。病気のことを告げるべきか、告げないべきか。それは君が選ぶことが正解だと思う。ただ、何も知らず取り残される人は知っていて残される人よりも辛いよ。しかも後から知ることになるなんてことは。」

「ありがとうございます。」

「後悔のない選択を。」

そういうと病室から出た。何が正解かわからない。これは僕もだ。


最近、家族に変化が現れてきた。父は僕のことを前よりも気にかけている様子が感じ取れた。母は天を紹介したこともあり、天のことを信頼してくれ、干渉が前よりも減ってきた。とは言っても過干渉なのは変わらないが。鈴は同じピアノをしている天のことを本当の姉のように慕ってくれている。口を開けば天のことを話すので、少し寂しい気持ちになっているのは秘密だ。優人は反抗期も折り返したようで会話が増えた。彼もバスケをしているので、新チームになって自覚が出てきたようで、最近はよく自主練をしている。こんな生活を続けたい。そう願っても現実は残酷だ。体調は良くない。学校が始まってからが不安で仕方ない。このまま隠し通せるのだろうか。そんな不安が僕の胸をよぎっていた。


二学期最大のイベント、文化祭。俺たちのクラスは、シンデレラのリメイク版の劇をすることになった。王子役は俺、シンデレラ役は天が選ばれた。クラスメイトが言うに、「主役はベストカップル」とのことだ。純は照明係、舞は小道具係として、文句を言いながらも手伝ってくれた。


劇のクライマックス。舞台の上で、魔法が解ける寸前、王子はシンデレラのガラスの靴を履かせ、彼女を永遠に愛することを誓う。

「もう魔法は解けない。君は、僕の唯一の光だ。」

天の瞳が潤み、俺の台詞に応えた。

「はい。私は、あなたと生きていきます。」

カーテンコールで、天は俺の隣で、眩しいほどの笑顔を見せてくれた。拍手喝采の中、僕たちは幸せだった。これは、僕たちにとって最初で最後の輝かしい共同作業だった。


劇が終わった後、野次馬の観客とクラスメイトを避け、どうにか空き教室に僕たちはたどり着いた。

「劇、大好評だったね。」

「あぁ。ただ、疲れた。」

「だね。」

そう言う僕たちは笑顔だった。

「ねえ、柚希。卒業したら、二人で旅行に行こうよ。もっと遠いところ。ヨーロッパとか」

「ああ、行こう。天の行きたいところ、どこでも」

嘘をつくしかなかった。僕に残された時間はない。天は夜中、静かに泣いているように見えた。僕は気づかないふりをした。彼女の孤独と優しさを、僕は十分に理解していた。

「天。」

「何?」

「君は、僕の光だよ。」

「急にどうしたの笑?照れくさいよ。」

「今だけは、魔法は解けてほしくない。」

「私も。」

そう言うと、2人は静かに口づけをした。

「踊ろう。今だけは、魔法が解ける前に。」

「うん。」

そんな僕たちの恋はシンデレラではないことはとうの昔から知っていた。名付けるならば悲劇の恋。ロメロとジュリエットのようなものであることを。今だけは、今だけは現実から目を背けていたい。感じていたのは君の体温だけだった。


秋も終わり、冬を感じる。なんせ、今日はクリスマスなのだから。小学校の頃からバスケをしていたので、この日は純と練習をしていたから、恋人と過ごすなんて、少しこそばゆい気分だ。怪我をしてからはずっと1人だったからこそ、天は僕の光のように感じる。

「お待たせ!」

前からダウンを着た天が走ってくる。付き合うと言うのは人をバカにするらしい。もう僕はその魅力にやられている1人だ。

「全然。似合ってるね。」

「ありがと!じゃあ行こ!」

今日は2人でイルミネーションを見る。ベタなデートだが、それがいい。

「先に渡しとくね。プレゼント。」

「ありがと!あ、マフラー!早速つけるね!」

赤色のチェック柄なマフラーは思った通り、君の髪色と綺麗な顔に照り映える。

「似合ってる。」

「こっちもプレゼントあげるね!はい!」

くれたプレゼントは同じく手袋だった。

「いつも手が冷たそうだから。手、大きいからちょっと大きめのサイズで作ったよ。」

僕の手に合うサイズがなかったら、とても嬉しい。暖かく、ちょうどいいサイズだ。

「ありがとう。暖かい。」

「いいえー!」

ちょっと前までこんな幸せを感じることなんて想像できなかった。それだけ僕は彼女に救われていたんだ。

イルミネーションをベンチで見て、クリスマス模様の街を見ながら話をした後、帰路に着く。夜だから、彼女の家の前まで送ることにした。しかし、体調が少し悪くなってきた。体が持てば良いのだが。

「初詣、一緒に行こうね。着物着ようかなぁ。」

「うん、楽しみにしてる。絶対似合うよ。」

そう話していると、突然、目眩がした。

「大丈夫!?」

そう天が言うのも仕方ない。僕は膝をついたからだ。ゴホゴホと咳き込む。驚くことに吐血してしまった。吐血は最近してしまうことがあるのだが、運の悪いことに天からもらった手袋に血がついてしまった。

「大丈夫ですか!?」

通行人だろうか、背中をさすってくれている。

「大丈夫です。落ち着いてきたので。」

「柚希!大丈夫!?ゲホゲホ」

顔を少しずつ上げると、天だけではない。見覚えのある顔がもう一つあった。それは…。

「…。宮野先生!?」

そう。それは僕の担当医である宮野京也先生だった。

「柚希くん…。そうか、娘と付き合っていたんだね。では、あの話も…。」

「パパ!柚希!どう言うこと?」

「…。私は柚希くんの担当医だ。柚希くん。よかったら私の家に上がりなさい。少し休んでからにしよう。あと…。少し話もしようか。」


僕は宮野先生の家…天の家に上がらせてもらった。妹さんがいることは天から聞いたことがあったが、リビングから部屋に移ってもらったみたいだ。紅茶を淹れる先生は確かに天にそっくりで、今まで気づかなかったことに違和感を感じる。

「柚希くん。体調は?」

「大丈夫です。」

「…。天。お前、隠して付き合っていたな。」

「…。」

天は黙ったまま何も話さない。

「天。何か隠してるの?」

「…。別に何もないよ。」

そう引き攣る笑顔から、嘘をついているのは明白だった。こんなことで今までの付き合いが役に立ってしまうのが切ない。

「天…。言わないなら、私から言う。結論からいうと、天は君の病気を知っている。僕のカルテを見たからだ。」

「…。え?」

さっき吐血をしたことで病気がバレたわけではない?

「それは…いつですか?」

「君が検査をしてから、要は1年の3学期から知っていたわけだね。」

嘘だろ。ずっと隠していたのに。天は知っていたのか。

「天。どういうことだ?」

「…。」

黙ったまま話さない。

「悪いが天。このまま黙り通す気なら僕は君と付き合いを続けることはできない。」

「いや。それはいや。」

「じゃあどういうこと?」

天はカタカタと震えている。そして立ち上がって玄関から飛び出した。

「天!」

「先生、すみません。追います!」

そうして僕は飛び出す。どこに行くのだろう。ただ、そこまで遠くには行かないはず。


先生はソファに座りながら紅茶を啜って1人でつぶやいた。

「柚希くん。君は、天の最後の希望だよ。行きなさい。」

そして、部屋から妹の空が出てきた。

「お父さん、あの男の人、お姉ちゃんの彼氏?」

「そうだよ。」

「すごいイケメン!すごい背が高いし!」

「あぁ…。本当に、勿体無いくらいだ…。

天…。」


アスファルトを駆ける。天を追いかける。そして、天の姿が見えた。天は公園のブランコに座っていた。

「天!」

そう叫んで走った勢いのまま彼女に抱きつく。

「柚希…。なんで、」

「天のことが大切なんだ。」

そして僕は語る。

「君が言いたくないことなら、言わなくてもいい。僕にも秘密はある。君だって秘密にしたいことはいいんだよ。でも、今回のことは、僕たちのこれからの関係に関わることだ。教えてもらえない?」

「…。うん。柚希…。ここ、覚えてない?」

「この公園?昔、よくきた場所だけど…。」

「受験の日、実は私たちは出会ってたんだよ。」

そうして天は語り始めた。


あの日は、白陵高校の受験日だった。

母はその数日前に心筋梗塞で急死した。

家を出たもののとても受験をする気持ちになれない私はこと公園のブランコに1人座っていた。悲しみに暮れる私を助けてくれたのが、本田柚希くん、君だった。

「具合?悪いの?」

私は一瞬で君に恋をした。

高校に入学してからも、私は常に君の情報を集めていた。背が高い男の子という情報から、どうにか君の情報を人づてに聞いていた。高校一年生の時、私はB組にいた彼の席、そしてその瞳に宿る孤独を、遠くから見つめ続けていた。

見ているだけで十分だった、それだけで私は幸せだった。何度か男子に告白された。しかし、私は君が好きだった。

そんな時だった。去年の3学期、私は父の机の上にあったカルテを見てしまった。そこには乗るはずのない君の名前が載っていた。

私は考えを改めた。君が幸せであればいい、と思っていた。でも、私が幸せにすることにした。クラスが同じになったことは本当に運が良かった。しかも後ろの席なんて。そして、私は初対面のフリをした。

「ねぇ。」

「うん?」

「背、高いね。」……


「そうだったのか。」

そうか、4月よりもっと前、僕は出会っていたんだ。君と。あの茶色の髪、懐かしさを覚えたのはそういうことか。

「見損なったでしょ。私はそんな卑劣な女。君も、私とはこれから付き合えないでしょう?」

「そんなことない!」

僕は天を抱きしめた。

「そんなことで、天を嫌いになるはずがない!天は、僕の光だ!それに変わりはない!」

「…。ごめんね。ごめんなさい。嘘をついて。」

涙ながらに天は訴える。

「それを言うのは僕のセリフだ。病気のこと、言わなくてごめん。僕こそ嘘をついていた。」

「うん…。」

そうして、僕らは口づけを交わした。これが2回目だ。でも、また前とは違う哀愁さが滲んでいた


天を自宅の前まで送り届ける。

「じゃあ、また正月に。」

「うん。初詣行こうね。」

そう言い別れようとすると、

「中村先生。」

先生が出てきた。会話が聞こえたのだろうか?

「パパ」

「天、家に戻っていなさい。これからは男同士で話したいんだ。」

「うん。わかった。」

「天。」

「ん?」

「素敵な彼氏だね。空が羨ましがっていたよ。自慢してきなさい。」

「!うん!」

そう言い天は家に戻った。

「送っていくよ。車に乗りなさい。」

そう言うと、明らかに高い外国車にエンジンをかけた。ビクビクしながら乗ると、語りかけてきた。

「柚希くん。」

「はい。」

「娘をよろしく頼む。」

そう言うと、先生は頭を下げた。

「…。僕は、娘さんに嘘をつき続けた男です。そんな卑劣な男なんです。」

「人には一つや二つ、言いたくない秘密だってあるよ。」

そのまま言葉を続ける。

「ただ、天はここ何ヶ月か笑顔が絶えず、楽しそうだった。君のおかげだ。

私は妻が亡くなってからあの子とどう関われば良いかわからなかった。ここ最近さらにだ。だからこそ、仕事に打ち込んでいた。」

「でも、君になら娘を預けられる。」

彼は天のような、穏やかな笑みを浮かべていた。


「初詣、楽しかったなぁ。」

初詣には天だけでなく、純と舞と4人で行った。天の着物はやはり似合っていた。

叶いもしない願い事はみんなには秘密にした。

今日僕は純を、中学時代に純と練習して怪我をした、バスケと別れた公園、天と出会った公園に呼び出した。

ボールを持って純が来た。そしてボールをパスする。

「待たせたな。」

「いや、呼び出したのは俺だ。」

シュートをしながら答える。ボールを取り、純はまっすぐ僕を見つめながら言う。

「柚希、俺の方こそ、話がある。…お前が最近、隠し事してるのはわかってる。俺のせいだろ?怪我から、お前は変わった。俺がもっと慎重にプレイしてれば…。」

純は涙をこぼした。

「純、違う。あの時、お前は悪くない。」

「そんなことねぇよ!俺は、お前をずっと師匠だと思ってた。もう、お前を追い越すことは二度とできない。俺は、お前が幸せなら、それでいいんだ。」

純は、長年の後悔と尊敬の念を吐き出した。

「ありがとう、純。お前は俺の最高の親友だ。…でもな。俺が壁を作ったのは、怪我だけが理由じゃないんだ。」

俺は深呼吸し、純の目を見つめた。

「俺の体はもう動かないんだ。バスケじゃなくて…病気なんだ。長く生きられない。今年の春は、迎えられないんだ。」

純は立ち上がろうとして、力が抜け、その場に崩れ落ちた。「嘘だろ…」と繰り返す声だけが響いた。

「純、だからこそお願いがある。」

「嫌だ…。」

そして、僕は笑顔で言った

「俺の死んだ後、天を頼む。」

「それは、俺じゃない。お前が幸せにするんだ。」

「お前、天のこと好きなんだろ。俺に隠し事したって無駄だよ。」

「なんで…。」

「お前が天を見る横顔が、目が、恋してた。とでも言っておくか。」

「そんなことない。」

「天のことが好きで、俺の親友のお前だからお願いできるんだ。天を頼んだ。」

その気持ちには曇りは一つもなかった。


その数日後、朝の白陵高校への通学路で、俺は舞に呼び止められた。

「ねぇ、柚希。もう逃げないで。私、怖いの。何があったの?隠し事してるよね?」

舞の瞳は不安に満ちていた。

「…ああ、隠してた。ごめん、舞」

俺は頭を下げた。

「俺は、病気なんだ。長く生きられない」

舞は嗚咽を漏らしながら俺の胸を叩いた。

「なんでよ…!なんで私たちに頼ってくれなかったの!私たちは、親友でしょう!」

舞は泣き崩れたが、すぐに顔を上げ、涙を拭った。

「わかった。でも、約束して。最後まで、私にもそばにいさせて。天、純、そして私。四人で、最後まで笑っていようよ」

舞の強い決意に、俺はただ頷くことしかできなかった。


冬が明け、暖かくなった頃、俺はほとんど病院で過ごすようになった。天、純、舞が毎日欠かさずに来てくれた。

ある穏やかな夕暮れ時、俺は家族に、最後の言葉を伝えることにした。病室には、父・隼人、母・桜子、弟・優人、妹・鈴が揃っていた。

「みんな、来てくれてありがとう。もう、長くはないらしい」

母は声を殺して泣き、父は硬い表情で窓の外を見ていた。

俺はまず、父に話しかけた。

「父さん。仕事忙しいのに、最近は来てくれてありがとう。俺のこと、あんまり気にしなくていいよ。父さんの生き方を、俺は尊敬してるから」

父は、静かに俺の手を握った。

「柚希…。もっと、お前のことを見てやればよかった。本当にすまなかった。」

父は、深く頭を下げた。

次に、弟の優人へ。

「優人。バスケ、頑張れよ。お前なら、俺よりもずっとすごい選手になれる。俺の分まで、白陵のエースになってくれ。」

優人は、目を真っ赤にして、

「…わかってるよ、兄ちゃん。俺、白陵高校に絶対行くから。バスケも、サボらねぇから」

と絞り出し、病室を出て行った。

鈴は、小さな声で

「柚希兄、大好き」

と言い、母のそばで泣いた。

最後に、母へ。

「お母さん。過干渉って思ってたけど、お母さんの優しさが、俺を支えてくれたんだ。天のこと、ありがとう。俺のわがままを許してくれて」

母は、涙でぐしゃぐしゃになりながら、俺を強く抱きしめた。

家族が病室を出た後、天が戻ってきた。俺は天の手を握り、語る。

「柚希。」

「天。」

天は悲しそうな表情で僕を見つめる。

「具合、平気?」

「うん。不思議と死ぬことは怖くないんだ。みんなと別れるのは寂しいけど、もういっぱいもらったからね。」

天の目から涙が溢れる。

「天。約束だよ。俺のことは、忘れないでくれ。そして…幸せになってくれ。」

天は、力強く頷いた。これが、僕の最後の願いだ。

その春の終わり、僕、本田柚希は静かに息を引き取った。

エピローグ

ずっと嘘をついていた。

4月20日 晴れ

柚希君が逝って、今日で一週間。世界は動いているのに、私の時間は止まったままだ。でも、私は泣かない。泣いてはいけない。柚希君の最期の願いは「幸せになってくれ」だったから。

純君と舞ちゃんが毎日連絡をくれる。私がどれほど疲れているか、彼らは気づいていない。

お父さんは、何も言わない。知っているのは、お父さんだけ。私と柚希君が同じ運命だったことを。

4月25日 曇り

今日は、体調がすごく悪い。

柚希君に会いたい。あの時、受験会場で倒れそうになった私を助けてくれた、あの日の柚希くんに。


あの日は、白陵高校の受験日だった。

母はその数日前に心筋梗塞で急死した。

家を出たもののとても受験をする気持ちになれない私はこと公園のブランコに1人座っていた。悲しみに暮れる私を助けてくれたのが、本田柚希くん、君だった。

「具合?悪いの?」

私は一瞬で君に恋をした。

高校に入学してからも、私は常に君の情報を集めていた。背が高い男の子という情報から、どうにか君の情報を人づてに聞いていた。高校一年生の時、私はB組にいた彼の席、そしてその瞳に宿る孤独を、遠くから見つめ続けていた。

見ているだけで十分だった、それだけで私は幸せだった。何度か男子に告白された。しかし、私は君が好きだった。

そんな時だった。去年の3学期、私は父の机の上にあったカルテを見てしまった。そこには乗るはずのない君の名前が載っていた。



そして、その下に私の名前も載っていた。



「…柚希君と同じ病気だ」。私は確信した。この運命は、偶然ではない。私たちが、同じ孤独に導かれていた。だからこそ、自分の病とあの日の出会いという重い秘密を隠してでも、彼を照らそうと決意した。

私は考えを改めた。君が幸せであればいい、と思っていた。でも、私が幸せにすることにした。クラスが同じになったことは本当に運が良かった。しかも後ろの席なんて。そして、私は初対面のフリをした。

「ねぇ。」

「うん?」

「背、高いね。」……


それが、二年生で彼と同じクラスになった時、私が「初対面」のふりをした理由だった。彼の幸せを最後まで守るため。


私の時間は、もう限界を迎えていた。柚希君が亡くなってから2週間後。私は、秘密を託すため、舞ちゃんを公園に呼び出した。

「舞ちゃん。ごめんね。実はね…。」

私は、自分も柚希君と同じ病気だったこと、高校受験の日に柚希君に助けられ、初対面のふりをしていたこと、すべてを打ち明けた。

舞ちゃんは衝撃で泣き崩れ、私の冷たい手を握りしめた。

「舞ちゃん。純君には、私が突然の病で亡くなったって言って。そして…私たち二人の分まで、長生きして、幸せになってね。」

舞ちゃんは、涙を流しながらも、力強く頷いてくれた。


そして妹の空が病院に来てくれた。

「お姉ちゃん。具合は?」

「平気。それより、話そう。多分最後になる。」

空は泣きそうな表情をしていた。無理もない。彼女はまだ中学2年生なのだ。

「空、幸せになるんだよ。あなたは私のようにならないで。」

「そんなこと言わないで。お姉ちゃんは立派に生きたんだよ。私、お姉ちゃんと同じ白陵高校に行くの。そのために勉強してるの。だから、お姉ちゃん…。」

「ありがとう。」

自然と笑みが溢れた。


「パパ。」

「天。」

寝ていたのだろう、目を覚ますとパパがいつの間にかいた。空は暗い。

「ごめんな。母さんが、玲が死んでから、天とどう関われば良いかわからなくなってしまった。病気が判明してからは尚更だ。」

「仕方ないよ。私でも、どうすればいいかわからなかった。」

「ただ、これだけは言っておく。」

一泊おいて話す。

「天と柚希くん、2人は立派に生き抜いた。君たちのことは絶対に忘れない。」

「ありがとう。」

そう言うと急に眠気がしてきた。私は欲のまま眠りにつく。

……

不思議な空だった。明るいような、暗いような、その先に、柚希くんがいた。

私は声を振り絞る。

「柚希くん。嘘をついてごめん。でも、君は秘密にしたいことは秘密にしていいと言っていたね。これが、私の秘密だよ。君と出会えて幸せだったのは私。君から色々なものを数えきれないほどもらった。ありがとう。」

……

数日後、私は、愛する柚希君の後を追うように静かに息を引き取った。

不思議と死ぬのは怖くなかった。









お楽しみいただけたでしょうか?初めての投稿だったので温かい目で読んでいただけたなら幸いです。

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