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0x04:ビジネス用語のキックオフとは、飲み会のことである。マルかバツか!

またエピソードの投稿順番間違えそうになりました。

ひぃん…。

こちらが5話目です!

「時間になったのでキックオフを始めますね」


 今日は新プロジェクトのキックオフミーティング。

 会議室に集まっての、オフライン会議です。


 キックオフミーティングと聞くと、奥村君が入社して間もない頃の記憶が蘇ってくる……。


『外川さん、キックオフミーティングってなんですか?』

『飲み会のことじゃないの? サッカーの試合開始みたいだよね! まだ準備始まってないのにね!』

『……で、正解はなんですか?』

『……わかんにゃいです』


 ……と奥村君と言い合っていた若い頃が、私にもありました。


 いや私もその頃知らなかったんだって!!

 あと私が最初に経験したキックオフがキックオフ飲み会だったんだってば!!

 どうしようもないやつだな眼差しで奥村君に見られていたのは、今では良い思い出です。

 ……今でもしょっちゅうあるけど。


 懐かしいなあ。

 あの頃の奥村君は、もうちょっとこう……私を先輩扱いしていた気がする。

 それが今や、なんかフランクな取り扱いに……。

 思い返せばその頃から、なんか妙に距離感近すぎる気がするんだけど……。


 気を取り直して、キックオフミーティングとは。

 新しいプロジェクトを開始するときに行われる、チームメンバーの認識をあわせるためのミーティング……かな。


「プロジェクトの説明しますね」


 プロジェクトリーダーかつ企画立案者の海原さんが、大型ディスプレイに企画書を映し出す。


 新プロジェクトとは、来年リリース予定の女性向けスマホゲーム「ダークライト・ラビリンス」のこと。

 略称は「ダイラビ」

 現代世界にて異能を扱い暗躍する闇の組織と、闇に対抗すべく立ち上げられた光の組織。

 プレイヤーは光の組織のチームの指揮官となって、異能使いの男子達と共に敵に立ち向かうのだ!

 だがしかし!

 闇堕ち・光堕ち要素があるので、仲間になったキャラが敵になることもある!

 敵だったキャラが味方になることもある!


 ちなみにナビゲーター兼マスコットキャラはうさぎだけど、私の推しゆるキャラのレモンうさぎとは全く関係ない。


「外川さん、この青髪のイケメン好きそうですよね? クールな眼差しの奴」

「えへへー。分かっちゃった?」


 手元のノートパソコンでも企画書を見ていると、奥村君が横から指を指して言った。


「そりゃまあ、外川さんの後輩なので色々仕込まれましたから」


 隣の席でにこっと笑う奥村君に、色々って何ぞ!? 性癖仕込んだっけ!? ってツッコミたい気持ちもなきにしもあらず!


 続いて始まったのは担当者分担説明。


 開発するのは女性向けゲームだけど、スタッフは老若男女問わず!

 流石に未成年はいないけど。


 そしてこの女性向けゲームのプログラマリーダーに任命されたのが!


 ……私ではない!


「プログラマリーダーの奥村です」


 なのです!


 ついに選ばれたか……なんて後方先輩面して眺めているけど、私はなんもしてないよ。


 うんうん頷きながら拍手していると、海原さんからツッコミを受けた。


「外川さん、後方先輩顔になってますよ」

「外川さんには一番お世話になりましたから」

「むしろ私がお世話になったような……?」


 主に先日みたいなどうしようもないことで。


「ついにむらむらがリーダーになって、先輩だったとがわんが部下か。年齢差考えるとやりにくいだろうけど、とがわんはそんなこと気にしないやつだし、気負わずにやっていくと良いよ」


 入山さんが、奥村君にのほほーんと助言する。

 ちなみに入山さんは奥村君のことを、むらむらと呼んでいる。

 このおじさん、のほほーんとして見えるけど、過去の名作に多く関わった凄腕プログラマなのです。


「はい、リーダーとして頑張ります」


 いやあ、立派に成長したなあ……。

 なんて考えていると、入山さんまでもが海原さんかららの容赦ないツッコミを受けた。


「ちなみに、入山さんがこの中で一番の年長者です」

「それを言われちゃあ返す言葉もないね、あっはははは」


 そんなこんなでキックオフミーティングも終わり。


「では皆さん! このプロジェクトを成功させましょう!」

「おー!!」


 という海原さんの掛け声で、締めくくられたのであった。


 皆がぞろぞろと会議室を去っていく中で、私はノートパソコンをぱたりと閉じて呟いた。


「奥村君がリーダーになるなんて、時間が経つのは早いねえ。これからは奥村さんって呼ばないとダメかな」

「え? なんでですか? 奥村君のままが良いです」

「むしろなんで??」

「『さん』付けって、距離遠くなったみたいじゃないですか……」


 あれ? しょんぼりしてる奥村君、ちょっとかわいいな??


「じゃあ奥村君のままがいっか」

「むしろ、駿って呼んでください」

「う……えっ? 突然だね?」


 急にめちゃくちゃ距離詰めて来たな? 思わずうんって言いそうになっちゃったよ!


「そうでもないですよ? 瑛斗のこと、名前で呼んでるじゃないですか」

「だって田中は社内にいっぱいいるから、区別付けるためのようなものだし」


 弊社そんなに社員数多くないけど、田中率が高い。

 なので田中さんくんちゃんのみなさまのことは、名前またはあだ名で呼んでいる。


「じゃあ俺も、奥村が沢山いると思って名前で呼んでください」

「そこ対抗するところ?」

「……だって、瑛斗ばっかずるいじゃないですか」


 むぅっむくれる奥村君が、だいぶかわいいな??


 いやでも、同じ苗字の人がいない奥村君の名前呼びは、だいぶ恥ずかしい。

 それこそ「ぴょんぴょん☆」いう方がまだ恥ずかしくないぴょん!


 そうだ! 距離感を感じるなら……。


「じゃあ私のこと、とがわんって呼んで良いよ? 入山さんみたいに」

「なんか違うんですよ、それ」

「なにがちがうの??」

「可愛いとは思うんですけど……そうじゃなくて……」


 疑問に思って首を傾げていると、ふと会議室の外から視線を感じた。

 何気なーく、そっちの方を見てみると……。


 会議室の外でおっさんが囁いてた。


「がんばれ♡がんばれ♡駿君♡」

「…………入山さん…………」


 奥村君がおじさんプログラマのことを、へんた……じゃないや。たいへん残念そうな眼差しで見つめている。


「おじさん、駿君を応援しちゃうぞ♡」

「…………入山さん!」


 今度は感動したらしく、すごいキラキラした眼差しでベテランプログラマのことを見ている。


 父と子ぐらいの歳の差二人のほんわかした様子に、こっちもほっこりしてきた。


 さて!

 駿君って呼んでってもう一回言われる前に……逃げますか!!

 しゅたたたっ!!


「あっ! とがわんが逃げたぞ! 追えー!」

「席は近いから、行先は同じですけどね」


 そうなんだよね!!

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