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クチサケ8
槍を構えた華子は、掛け声を発し攻撃を繰り出した。銀槍が、軌跡を描きシルエットに向かう。風が裂かれて鳴き、防がれてキンッと澄んだ高音がグラウンドに染みた。
華子の姿を見失ったのは、この直ぐ後の事。黒川は自分を異常に誘った少女を視界に捜す。
「華子? 華子だけじゃあない、クチサケまでいなくなってる!」
ヒュンと風が吹いた。風は、微かな激突音を拾っていた。黒川には見えていが、彼から約五メートル先グラウンド中央付近では、華子とシルエットが目視不可能な神速で戦闘を行っていた。
戦闘は、終始華子が優勢に進めた。稲妻のような鋭さで槍を操り、徹底して必殺を狙い続ける。シルエットは、リーチの短さをカバー出来ず、防戦をするのが限界だった。