初のループ
「……はっ!」
目が覚めるとそこは見覚えのある景色だった。
古びた家。
壊れた石像。
手元には少ない金の入った袋。
「あれは……本当なのか。」
だが、やることは分かってる。
勇者らしからぬ行動を取らなければ良いのだ。
まず、会議。
あそこが分岐点となるだろう。
「お待たせ!すまんな、少し遅れた!」
「遅いわよ!まぁ、謝るんなら良いけど。」
「私も少し遅れてしまいましたし、大丈夫ですよ。」
「自分もこの会議の原因でありますので、何も言う事はありません!」
良かった。
皆生きてる。
あんな悲惨な事が起きていないというのだけでも嬉しい。
涙が出てきそうだ。
……出ないけど。
「私の教会の方は……。」
「駄目だったんだろ?でも、お金はここにある!」
俺は懐からお金を取り出し、机に置く。
「少ないが、当面の生活費にはなる!」
「……何処で拾ってきたのよ。」
「……企業秘密だ!」
言い訳にはいかんな。
前回はネコババしたが、仲間に嘘は良くないしな!
「さて、金銭面の問題は解決した所で、今日の議題はだな、ケインについてだ。」
「ま、そうよね。」
「追放しよう!」
「……は?」
要は勇者らしからぬ行動を取らなければ良い。
俺は前回ケインの言い分を聞かずに強引に追放してしまった。
今回は丁寧に追放しよう。
勇者は仲間に対して暴力はしないからな。
「待ってください!自分は!」
「待て!話を聞いてくれ。お前の装備が特殊で修繕費がかなり必要になることは分かってる。仲間にするときに確認しなかった俺も悪い。」
ソニアとリリアは黙って話を聞いている。
俺の言い分を聞きたいのだろう。
「だから、その修繕費は返さなくて良いからパーティーを抜けてくれ。金を稼ぐためにお前を連れて冒険すればまた修繕費が必要になってしまう。それじゃあ意味が無い。」
「ですが、盾役としては活躍できます!金策については何か別の案を!」
「盾役も別の人間を用意する。俺達のことは気にせず、地元に帰ってゆっくりしてると良い。な?魔王は必ず倒すから安心しろ!」
「……。」
半ば強引に説得したが、ケインは頷いた。
人は優しく声をかけてやれば首を縦に振る物だ。
いやぁ、人を操るのは簡単だな!
「では、短い間でしたが、ありがとうございました。魔王討伐できることをお祈りしております。」
「おう!元気でな!」
ケインは軽く頭を下げ、部屋を去る。
これでケインの問題はクリアだな!
「で、新しい子はどうするの?」
「新米の冒険者を雇おうと思う。金のかからない奴をな。大体一人くらいは仲間を作れずに困ってるやつがいるさ!」
勇者とは仲間と冒険してこそだ。
ならば、代わりの仲間で良いだろう。
あんな金食い虫を連れては行けないしな。
「……まぁ、良いか。私達で育ててやれば良いことだし。」
「私達で立派に育てましょうね!」
さて、仲間の問題もクリア。
あの洞窟にいるワニのような魔獣も分かってる。
簡単に倒して金を稼ごう。
後は魔王討伐に向けて前進するだけだ。
なんだ、簡単じゃないか。
罰とは言ってもこんなに緩いんじゃ罰にならないな!
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