表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/11

「……ん?」

 

 目が覚めると、そこはなにもない真っ白な世界。

 確か俺は魔獣に喰い殺された筈。

 じゃあここは天国か。

 地獄なわけはないしな。

 

「いや、君をそう簡単には天国にも地獄にもいかせはしないよ?」

 

 背後から声がし、振り返るとそこには謎の人物がいた。

 顔が見えない。

 姿も朧げだ。

 

「こんな姿ですまないね。まぁ、これについてはまた今度説明するけど、君は今、ここがどこだが気になっているんだろ?」

「まぁな。教えてくれるのか?」

 

 その男は頷いた。

 

「あぁ。ここは僕の世界。俺のスキルが作り出した空間だ。」

「あんたのスキル?」

「そう。僕のスキルは死後発動するものだったみたいでね。こうして自我を保ててる訳さ。」

 

 そんなスキル意味が無いだろ。

 

「そうだね。意味はないと思う。」

「……俺の考えてることが分かるのか。」

「何せ僕の世界だからね。ここなら不可能は無い。」

 

 すると、男は俺を指さした。

 

「そして、僕のスキルは現世にも関与できる。無論、君にもした。」

「俺にも?何故?」

 

 男は少し笑ったのだろうか。

 しっかりと見えない。

 

「そう。君、古い石像を壊しただろ?」

「あぁ。古びたボロボロの奴な。小汚くて、腹が立ってたからムシャクシャしてぶっ壊したよ。」

「あれ、僕。」

「……え?」

 

 行っている意味が分からない。

 

「あれは僕なんだ。どっかの誰かが僕のことを思って作ってくれた物らしい。それを、君が壊した。」

「へ、へぇ……それで?」

 

 嫌な予感がする。

 何かは分からないが、とてつもない嫌な予感が。

 

「君には罰を与えた。先程も言ったように僕のスキルはある程度現世に関与できる。君は勇者だ。だから、君が勇者らしからぬ行動を取ったら……。」

「……取ったら?」

 

 その男は指を鳴らした。

 

「必ず、君は死ぬ。」

「はぁっ!?」

「そうだね、具体的には、罪のない人への暴行や犯罪、仲間を蔑ろにする行為。魔王を倒そうとしない。まぁ、勇者らしからぬ行動、正義とは言えない行動を取ったら君は死ぬんだ。」

 

 ん?いや待てよ?

 

「待て、俺は死んでるぞ。確かに死んだぞ?」

「そこで、二つ目の罰だ。」

「二つもあるのかよ!」

「勿論。」

 

 男は淡々と話し続ける。

 

「もう一つの罰は、魔王を倒すまで、死ねないというものだ?」

「は?勇者らしからぬ行動を取れば死ぬんだろ?」

 

 男は頷く。

 全く意味が分からない。

 

「そう。君が魔王を殺すまで一つ目の罰は続く。もし一つ目の罰とは関係なくて死んだとしても君は必ず蘇る。時が、君が僕の石像を壊した時に巻き戻るんだ。まぁ、厳密には死ねるけどまた蘇るってことさ。」

「……つまり、勇者らしからぬ行動を取ったら必ず死ぬ。死んでも必ず石像を壊した時に巻き戻って蘇り、その罰は魔王を倒すまで続く?」

「そゆこと。」

 

 男は笑顔で言う。

 

「ふざけるな!死んだら終わりでいいだろ!……いや、待てよ死んでもループする。つまり、その時に犯した犯罪は帳消しにされるのか。じゃあ、死んでも良いからやりたい放題できるのか!」

「……因みに、ループを繰り返すほど君の能力は落ちていく。更に君が経験する死に方はもっと残酷な物になっていくよ。」

 

 あの死に方を思い出す。

 中々に怖かった。

 だが、一瞬で死ねたのだからまだましなのか。

 

「君に拒否権は無い。精々、死ぬ気で頑張りなよ。どうせループするんだから。」

 

 すると、足元が光り始める。

 

「おい!待て!」

「じゃあねー!」

 

 男は手を振る。

 俺は段々と下に落ちていく。

 あの男は最後まで笑顔で手を振っていた。

 ここから、俺の最悪な人生が幕を開けたのだった。

では、評価や感想ブックマーク等お待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ