元凶
「くそっ!やられた!」
パーティーを結成してからはや数日。
俺達は大問題を抱えていた。
王から与えられた資金が底をついたのだ。
今はソニアと二人、宿で話をしている。
「あんたも原因の一つでしょ。大人しくして、対策を考えなさいよ。」
「うるさい!ほとんどあいつだろ!」
新しく仲間になったケイン。
あいつが金不足の原因だ。
ある日、ケインが装備を修繕したいから金をくれと言ってきた。
だから俺は全財産の入った袋を与えた。
だってまさか全部使ってくるとは思わないじゃん?
ケインが戻って来た時、ケインが返してきたのはほぼ空になった袋だった。
ピカピカの装備を着て。
「あんたが必要な額を聞けば良かったのよ。」
「だってあの大金だぞ!?まさか全部使うとは思わないだろ!」
「でもあんたも豪遊してたわよね。賭博だっけ?」
思い返してみれば女の子がお酒を注いでくれる店に行っていたな。
……ソニアには内緒にしているが。
「そ、そうだったなー。いやぁ、増やせる思ったんだけどー。」
「……はぁ、まぁ良いわ。今はどうするか考えましょう。リリアが今教会に何とかならないか話に行ってるから、それが頼りね。」
「……取り敢えず、今日明日過ごすための生活費は稼がないと。冒険に出て金を集めるのも出来ない。いきなり冒険に出るか?でもな……。」
しかし、冒険に出てケインが傷つけばまた鎧の修繕費に金が飛んでいく。
やはり、少しは金が欲しい。
ここで立ち止まる訳にはいかない。
「くそっ!ちょっと外行ってくる!」
「あ、じゃあ私も!」
「一人でいい!」
扉を思い切り閉め、外に出る。
少し外の風に当たろう。
「畜生……。金落ちてないかな……。」
外の風に当たるついでに路地裏や草むら等を歩き回り、金が落ちていないかを探す。
「ん?」
すると、眼の前の通行人が椅子を立ち、そのままどこかへと去っていく。
その椅子には先程の人物の物と思しき財布が落ちていた。
「よっしゃラッキー!」
誰にも見られていない事を確認してから財布を取る。
しかし、財布の中はあまり多いとは言えなかった。
「くそっ!これだけかよ!」
だが、当面の生活費にはなるだろう。
等と考えていると、視界の端に小さな石像があることに気が付く。
古い民家の敷地内、草むらに覆われていて目立たないが、ひっそりとそれはあった。
「クソが!」
俺はムシャクシャし、その石像を蹴り飛ばす。
すると、石は想像以上に脆く、首から上が飛んでいった。
「やべっ!」
俺は古い民家の主が出てくる前に退散した。
「ソニア!お?皆居るのか。どうしたんだ?」
「ちょっとどこ言ってたのよ!今日は会議するって話だったでしょ。やっぱり忘れてたのね。」
「まぁまぁ、私も少し遅れてしまいましたし、そこまで問い詰めないであげてくださいよ。」
「自分も、この会議の原因であることは理解しています。責めるのならば、まずは自分を責めてください!」
そうか。会議があった。
すっかり忘れてたな。
「よし、じゃあ会議を始めよう。リリア。教会はどうだった?」
「少しくらい謝りなさいよ。」
ソニアが小言を言うが、無視する。
一々かまっていられない。
「残念ながら……。」
「そうか。……皆に一つ提案がある。いや、もう決定だ。俺の独断だが。」
「何よ。」
皆の視線が集まる。
「ケイン。お前を追放する。」
「えぇ!?」
ケインが流石に驚く。
「ちょっと待ってよ!だとしたら私達がただお金払っただけじゃない!」
「そうですよ!それに今の状態で新しい仲間を揃えるのも無理ですよ!」
「でも、こいつを連れて冒険に出て装備が壊れたら莫大な修繕費が必要になる。結局金欠じゃないか。だったら三人で冒険して、少し金が溜まったらもっと金のかからない仲間を入れれば良い。」
そう言うと、二人は反論しなくなった。
……懐のお金は自分のために使おう。
「……まぁ一理あるわね。」
「ケインさんには申し訳ないですけど……。」
どうやら、納得してくれたようだ。
「ということでケイン。鎧の修繕費は手切れ金ということで文句言わずに去ってくれ。」
「で、でも!」
俺はケインの胸ぐらを掴んで入口まで引きずっていく。
「とっとと出てけ!」
思い切り扉を閉める。
あぁ。なんと愚か。
今思えば、そう言える。
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