問題児
王都に入り、王へと謁見すると、王から魔王討伐を命じられた。
かなりの額の金と良い装備を貰い、城を後にすると、そこにはリリアが待っていた。
王都に入った後、僧侶のリリアが勇者である俺の仲間になりたいと言ってきた。
ので、速攻で首を縦に振った。
こんな美人を仲間にしないわけが無い。
胸は大きく、美人。
男としては喜ばしい限りだ。
「あとは必要なのは……タンク役か。」
「……あんた、タンク役の女はいるかな?とか考えてるんでしょ。」
「おお!よく分かったな!」
すると、頭に鈍痛が走る。
「痛いな!何すんだよ!」
「当たり前でしょ!この変態!」
ソニアはすぐ暴力に走る。
その魔法使いの杖は物理攻撃のためじゃないだろ。
勇者である俺にもう少し優しくしてくれても良いとは思うのだが。
「勇者様。タンク役ともなるとやはり男性のほうが多いと思われます。それに、能力的にも打たれ強いのは男性かと。」
「やっぱりか……。」
少し考える。
俺は正直魔王討伐に本気で取り組むつもりはない。
勇者という立場を利用してやりたい放題するつもりだ。
だが、本気で取り組んでいないとバレたら国からの援助金が取り上げられる可能性がある。
ならば、表面上だけでも本気で取り組んでいると見せる必要がある。
「よしわかった。冒険者ギルドで募集してみよう。リリアがそう言うなら男でも良いな!」
「はい!」
「……はぁ、呆れた。」
「タンク役の冒険者ですか?」
「はい。」
「少々お待ちください。……あっ!」
受付嬢は俺の顔を慌てて奥へと下がっていった。
そんな対応をされると気分が悪くなるな。
俺を勇者と知っているのか?
「お待たせしました勇者様!当ギルドへようこそ!」
「お、おう?」
思わず疑問形になってしまった。
先程の受付嬢と違うし。
こんなむさくるしいおっさんの顔なぞ見たくはない。
というか、やはり俺が勇者である事は既に広まっているらしいな。
「私は当ギルドのギルド長をしております!只今勇者様御一行に見合う者を探しております!ささ、こちらへ!」
半ば強引に奥へと引っ張られていく。
その様子に仲間達は多少困惑しつつもついてくる。
「さ!こちらでお待ち下さい!」
「おお!ありがとうございます!」
連れてこられた先はかなり豪華な応接室であった。
「今お茶を持ってきます!」
ギルド長はそう言うと部屋を後にした。
俺は豪華なソファに腰を下ろす。
すると、俺の隣にリリアが座ってきた。
「流石は勇者様!こんな立派なお部屋を用意されるなんて!」
「只の応接室でしょ。何をはしゃいんでんのよ。鼻の下伸ばして!」
ソニアは元々貴族である。
こんな部屋が当たり前なのか。
すごいな。
後別に鼻の下伸ばしてはいない。
伸びているのだ。
こんな美人が横にいていい気分にならない男は居ない。
「なぁ、ソニアは何でついてきてくれたんだ?」
「はぁ!?何でいきなり!?」
「いや、貴族なら俺に付いてきたりするよりも家にいた方が良いだろ?何で来たんだ?」
そう聞くとソニアは顔を真っ赤にし、そっぽを向く。
「知らない!」
何か怒るような事をしたか?
少しひどいな。
いや、こいつは元々こういうやつか。
勇者に暴力振るうような奴だし。
「ソニア様は貴族だったのですか?」
「様なんかつけなくても良いわよ。貴族だったのはそうだけど、あんな堅苦しい生活何も嬉しくないわ。」
「でもあそこにいれば望んだものは手に入るだろ?」
そう言うと、ソニアは少し考えた。
そして、小さく呟く。
「でも、一番欲しいものは、世間が許さないから。」
「一番欲しいもの?」
そう聞き返すと扉を勢いよく開けてギルド長が入ってくる。
ソニアは俺を見ていた気がしたが……。
まぁ、話している相手を見るのは当たり前か。
「お待たせしました!お茶もお持ちしましたが、お仲間もお連れしましたぞ!」
「おっそいわよ!」
話を誤魔化すかのようにソニアがギルド長と話をする。
「で、性別は?女?」
「性別……ですか?指定されておりませんでしたので、男です。」
「なら良いわ。」
ギルド長は頭にハテナマークを浮かべながら話を続ける。
「で、では先程ギルド登録なされた救国の英雄です!お入り下さい!」
そう言い、ギルド長が入口を開ける。
すると、全身を鎧に包み、背中には大きな盾を二枚背負った大男が入ってくる。
「元王国軍第三軍、第五大隊、第九中隊、第三小隊長ケインと申します!よろしくお願いします!故あって軍を除隊し、冒険者となりました!」
「……ケインって!あの地獄とも言われる魔王軍との最前線で大軍を一人で足止めしたという!?すごい方じゃないですか!」
「そうです!その救国の英雄ケイン様が共に戦ってくれるとのことです!」
大男で声が大きいとか迷惑千万だな。
というか、リリアが知っているとは。
それほどの大物なのか?
すると、ソニアがこちらを見てきた。
「良いんじゃない?盾役としては最適だと思うけど?」
「ん?あぁ。いいんじゃないか?」
出来れば女が良かった。
というのは野暮だ。
流石にそれくらいはわかる。
ともあれ、そこまでの人物ならば不足は無いだろう。
「ケイン。よろしく頼む。勇者の、アルフレッドだ。」
「はい!よろしくお願いします!」
ケインと握手を交わす。
俺はどうしてこの時握手を交わしたのか。
何故、軍を除隊したのか聞かなかったのか。
後悔してもし足りない。
こいつが、この問題児が俺の人生を大きく狂わせたのだ。
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