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やり直し

「……またか。」

 

 手には小さな小銭袋。

 これか……。

 

「おーい!そこのお方!」

 

 すると、このお金の主が振り向く。

 

「はて……。ワシの事ですか?」

 

 振り向いたのは老人。

 フードを取ったその老人は意外にもガタイが良く、勇者のスキルなしでは敵わないだろう。

 

「お財布を落とされましたよ。」

「おお!ありがとうございます!これは息子の形見でしてな……。本当にありがとうございます!」

 

 老人は深く頭を下げると財布から中身を取り出し、こちらに手渡してくる。

 

「これを。ほんの感謝の気持ちです。」

「……いえ、頂けません。」

 

 正直、どれがアウトになるのか分からない。

 あまり危ない橋は渡りたくない。

 

「いえいえ、これくらい受け取ってもバチは当たりませんよ。」

「……では、ありがたく。ちょうどお金に困っていた所でしたので助かります。」

「そうなのですか?」

 

 俺は頷き、軽く事情を話してみせた。

 

「……その盾役のお仲間というのはもしかして……。ケイン殿ですかな?」

「知ってるんですか?」

 

 老人は頷いた。

 

「ええ、知ってるも何もその装備を修繕しているのはワシの店ですからな。」

「……はぁ!?」

 

 

 

「と、言う事で問題は解決しそうだ。」

「どういう事よ!」

 

 俺達の会議の場に老人を連れて行くと早速ツッコまれる。

 

「ワシはシードという鍛冶師をしております。ケイン殿の装備ははるか昔の魔道具とも言われるもの。かなり特殊な技術で作られており、素材も希少。それに加えて壊れやすいというもの。中々に費用が高くなってしまうのですが……。」

 

 シードと名乗った老人はこちらを見る。

 

「成る程、勇者様達がそのようなご事情でしたら今回は無償で承りましょう。お金は返します。それに、これのお礼もありますしね。」

 

 シードは小袋を取り出すとそういった。

 

「勇者様。このお方もそう言っておられますし、ここはお言葉に甘えましょう。」

「……そうだな。シードさん。ありがとうございます。次はしっかりとお支払いしますので。」

 

 俺はしっかりと頭を下げた。

 

「……あんた、少し変わった?」

「……そうか?」

 

 ソニアの問いに、少し戸惑う。

 彼女が俺に対してそういった想いを持っているとわかった以上、意識せずにはいられない。

 こいつ……こんなに可愛かったか?

 何故だ……。

 いつもはなんとも思っていなかったのに、急に可愛く見えてきた。

 ……でも女性としての魅力には欠けるな。

 特に胸とか。

 

「あんたなんか失礼な事とか考えてない?」

「ま、まっさか〜。」

 

 おぼろげな男が俺の思考を読めていたからか、こういう事を言われるとドキッとしてしまう。

 

「まぁなにはともあれ、金銭面は解決だ。実は状況次第ではケインにはパーティーから離脱してもらうことも考えたんだが……。」

「そ、そうなのですか!?」

 

 ケインは俺の発言に驚いて見せる。

 それもそうか。

 

「勇者たるもの、仲間は決して見捨てないからな!」

「あ、ありがとうございます!一生ついていきます!」

「あんた……やっぱりなんか変わったわよね?」

 

 さて、あまりソニアに問い詰められればボロが出るかもしれない。

 早めに話題を切り替えよう。

 

「さて、ケインがいればそれなりのダンジョンでも大丈夫だろ?」

「はい!自分は腕には自信がありますので!」

「ケイン殿は、いつも装備がぼろぼろになって戻って来る。装備はぼろぼろになっても必ず帰ってくる。仲間も一緒にな。それはつまりどんな危険な相手でも必ずや仲間を守り通し生きて返してくれるということ。ご安心なされませ。」

 

 恐らく、昔からケインと知り合っていた彼が言うのだから間違い無いのだろう。

 

「よし!改めてよろしくたのむぞ!」

「はい!」

 

 さて、今度こそ死なない筈だ。

 ……多分。

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