男同士の話 2
話せば長い話になる。
物凄く長い話だ。びっくりする程長いからな。
父はそう言って、子供だった僕にちょっとずつ自分の星の歴史を聞かせてくれた。
「ママには絶対に内緒だ。ママにばれたらパパは輝夜姫みたいに月に帰らなくちゃならない」
父はそう言った。
だから僕は誰にも言わなかった。
主な働き手である父がいなくなったらそれは困る。困窮は目に見えている。
ドラックストアでパートをしている母の稼ぎだけでは心許ない。
僕は割とドライな子供だったのである。
「Nf1990」
地球の太陽とほぼ同じ大きさの赤色矮星。
それが彼らの『太陽』だった。
その惑星「Nf1990-c」と「Nf1990-d」はまるで双子星だった。
太陽から3番目、4番目の惑星。
「c」の方が太陽に近い。
そしてちょっと小さい。
「c」には衛星があった。
衛星の名は「イカロス」
「d」にも衛星があった。小さな衛星。名前は「トト」
「d」の方が少し大きい。
だから「c」は弟である。
「d」の人々はそう言った。
「何を馬鹿な事を」
「c」の人々はそう返した。
質量で見るなら、「イカロス」+「c」≒「トト」+「d」だ。
それに、自分達の方が太陽に近い。だから、自分達の方が当然「兄」である。
ふたつの惑星が誕生してから50億年近くが過ぎ、科学技術が高度に発展して、お互いがお互いを知り尽くした頃になっても「c」や「d」の連邦政府や住人達はお互いにそう言い張った。
父の星は「c」。通称「クリスタル」。
勿論、水晶で出来ていた訳ではない。
故郷の星に敬意と愛情を込めて「クリスタル」と呼んでいたのだ。
「クリスタル」
美しい星。