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七話

呂布は戟を振り回し、何とか武将の攻撃を防ぐ。しかし、呂布とてそれほど余裕がある訳ではない。

呂布の戟は長柄の武器であり、小回りが利かない。それに比べて相手の戟は、通常の槍より長いものの、剣よりも短い。

その為、呂布が攻撃する時にはどうしても距離を取る必要があり、その分だけ防御が疎かになる。

また、呂布が攻勢に出ると、呂布の戟が届かないところまで下がってしまう為、呂布が不利になってしまう。

呂布は反撃の機会を窺いながら、少しずつ後退していく。

呂布が後退した先には、北門を守る兵士達がいた。

「何事だ?」

呂布と武将の戦いを見ていた兵士達は、すぐに異変に気付いた。

「曹操軍だ!」

呂布と戦っていた武将が叫ぶ。

「曹操軍? 何の事だ?」

「あの男が曹操軍の兵だと言っている! すぐに捕らえろ!」

「あぁん? 何寝ぼけた事言ってんだよ。こいつは劉備殿の客将だぞ? 何で曹操軍がこんなところにいるんだよ?」

兵士の一人が、呂布に代わって武将に尋ねる。

「それは……」

「おい、呂布将軍に何をしている」

武将が答えようとした時、新たな人物が割り込んでくる。

「こいつらは曹操軍の人間で、俺達を騙そうとしていたんだ」

「曹操軍? 何を言ってるんだ?」

「こいつらが曹操軍じゃないなら、曹操軍はどこにいる?」

「いや、だから」

「お前達は騙されているんだ。早くそいつらを殺せ!」

武将の言葉に、兵士は首を傾げる。

「どうした?」

そこへ徐晃がやってきて、兵士に声をかける。

「徐晃様。曹操軍の奴が、呂布将軍の事を偽物だと言っていて」

「何だと? 呂布将軍が偽物だと?」

徐晃は武将に向かって、戟を構える。

「貴様、呂布将軍の名を騙るとは許せん! 成敗してくれる!」

徐晃は武将に向かって斬りかかる。

「くっ、徐晃だと? 何故ここに徐晃がいる!?」

武将は慌てて身をかわすが、戟の刃先が武将の頬をかすめる。

「この野郎!」

呂布と戦っていた武将が、徐晃に向かって切りかかる。

「徐晃、危ない!」

呂布は思わず声を上げるが、徐晃は冷静に戟で武将の攻撃を受け流す。

「ちぃっ! この程度で俺の一撃を防いだつもりか!」

武将はそう言って、再び戟を振り下ろす。

「この程度か? 俺を相手にするには、まだまだ実力不足だな」

「何だと!?」

武将は更に激昂するが、その時にはすでに徐晃は武将の背後に回っていた。

「な、何だ? どうして俺の後ろにいるんだ?」

武将は慌てて振り返るが、そこにはすでに徐晃の姿はない。

「馬鹿な! 俺が見えないのか?」

武将は辺りを見回すが、やはり徐晃を見つける事が出来ない。

「呂布将軍、ご無事ですか?」

呂布が呆然としていると、徐晃が呂布の元へやって来る。

「え? ああ、はい。大丈夫です」

「では、ここはお任せいたします」

徐晃は呂布に頭を下げると、そのまま北門へ向かって走っていく。

「ま、待て! 逃げるのか!」

武将は徐晃を追いかけようとするが、その前に呂布が立ち塞がる。

「お前の相手は、俺だ」

「くっ、邪魔をするな!」

武将は戟を繰り出すが、呂布は戟の柄の部分を使って武将の戟を受け止める。

「お前の相手は、俺だ」

呂布は戟を振り抜き、武将の戟を弾き飛ばす。

「くっ」

武将は体勢を崩し、大きくよろめく。

「さっきからお前は何なんだ! 曹操軍の手先だと言うなら、証拠を見せてみろ!」

「曹操軍の手先は、お前の方だろう!」

「お前こそ!」

「黙れ!」

呂布は戟を振るい、武将に襲いかかる。

武将はかろうじて呂布の攻撃を防ぐが、呂布はさらに連続攻撃をかける。

武将は防戦一方になり、やがて呂布の攻撃に耐えきれずに戟を落とす。

「どうした? もう終わりか?」

「…………」

武将は答えず、無言で腰の剣を抜く。

「曹操軍の刺客にしては、諦めが悪いな」

呂布は戟を構えて、武将の動きを窺う。

武将は剣を手に、呂布に向かって来る。

武将の剣は鋭く速い。

呂布はその剣戟を捌きながら、隙を見て戟を振り下ろす。

武将は呂布の戟を紙一重で避け、さらに呂布に斬りかかってくる。

呂布は戟を振り下ろしたままの勢いを利用して身体を捻り、武将の剣を戟の柄の部分で受け止める。

「やるな!」

武将は呂布の攻撃を賞賛すると、力尽くで呂布を押し返して距離を取る。

「まだだ!」

呂布は戟を横薙ぎに振るう。

武将は呂布の戟を飛び越えて、戟の上に乗る。

「何?」

呂布は驚くが、武将は着地と同時に呂布の戟を蹴り上げる。

呂布は慌てて戟を引き戻すが、わずかに遅かった。

武将は呂布の懐に入り込み、呂布に一撃を加える。

呂布は咄嵯に身を反らしたが、それでも武将の一撃は呂布の左肩を切り裂いていた。

「ぐっ」

呂布は苦痛に顔を歪めながらも、武将に戟を叩きつける。

しかし、武将はすでにその場から離れていて、呂布の一撃は空を切る。

「……貴様、本当に何者だ? 並みの武将ではないな」

武将はそう言いながら、再び剣を構える。

「俺は劉備軍、徐州軍、荊州の兵を率いる将軍、呂布奉先だ」

呂布も戟を構え直す。

「劉備軍だと? 劉備は死んだはずだ」

「死んでいない。劉備殿は荊州で劉表と交わした約定に従って、今は黄巾党と戦い続けている」

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