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四話

呂布と李典が話し合っている横で、于禁が張勲に話しかける。「張勲殿。その韓浩と言う方は、どのような方なのでしょう? 武勲を誇る方だと仰いましたが」

「はい。我が主は、その武勇によって曹操軍の武将を討ち取り、また戦場で手柄を立てた事で、今では袁術軍の将軍にまで昇りつめた方です」

「それは凄いですね!」

張勲の話を聞いた于禁は、感心したように声を上げる。

「しかし、それだけではありません。我が主は、曹操軍の中でも一際優れた剣の腕前を持ち、曹操軍の将軍の中でも、曹操を除けば一番の使い手と言われています。それ故に、曹操は我が主を高く評価し、我が主も曹操の期待に応えられるよう、日々鍛錬に励んでおりました」

「へぇ、曹操軍で一番の使い手が、そんなに強いんですね! 一度戦ってみたいですね」

「いや、公祐。お前が戦う相手は、並大抵の強さじゃ太刀打ち出来ないからな。曹操軍で一番の使い手だからって、油断しない方がいいぞ」

「分かってるよ、文遠。冗談だよ、冗談」

李典の忠告に、于禁は笑う。

「……なあ、りっくん。さっきから何で俺達、こんなに必死になって止めてるんだろうな?」

「さあ? でも、みんなが俺を心配してくれているのは嬉しいよ」

「心配じゃなくて、不安なんだよ!」

「ところで張勲さん。その韓浩と言う人、どこに行ったら会えるの?」

呂布は張勲に尋ねる。

「我が主は今、徐州へ向かっています。そこで太守を任ぜられている劉備玄徳殿の元で、客将として仕えているのです」

張勲は答えてくれるが、それは呂布にとって聞き捨てならない情報だった。

「ちょっと待った。今、劉備って言った?」

「ええ、言いましたが」

「その人は、劉備軍の武将なのか?」

「はい。我が主は劉備軍の武将として、曹操軍と戦い、勝利しました。そしてその功を認められ、劉備軍の客将として迎え入れられたのです」

張勲の話を聞き、呂布は黙り込んでしまう。

「……あの、呂布将軍? どうかされましたか?」

張勲が尋ねても、呂布は何も言わない。

「りっくん?」

「どうした、りっくん?」

李典と典韋が呂布の肩に手をかけると、呂布は二人を見て小さく首を振る。

「劉備って、あの劉備?」

「他にどの劉備がいるんだよ」

「だよねぇ」

呂布は苦笑いを浮かべる。

「どうするんだ、りっくん。やっぱり会いに行くのか?」

「まあ、せっかくここまで来たんだし、会わないで帰るのもなぁ。それに、劉備は天下を盗った英雄だし、一度は会っておきたいし」

呂布はそう言って歩き出す。

「あの、よろしければ私が案内いたしますが」

張勲が申し出てくれたが、呂布は首を横に振る。

「ありがとうございます。でも、そこまでしていただくわけにはいきません。道なりに進んでいけば、そのうち辿り着けるでしょうし」

「そうですか。では、お気をつけて」

張勲は頭を下げて見送ってくれた。

「大丈夫か? この辺り、結構複雑な地形してるから、迷うかもしれないぞ」

李典が言うが、呂布は笑って応える。

「それならそれで、仕方がないさ。その時は、張勲さんのところに戻って聞けばいいんだし」

呂布は気軽に言うが、李典は不安が残る。

呂布は方向音痴と言うほどではないが、あまり地理に詳しくない事は知っている。

それでも、呂布は真っ直ぐ劉備のところへ向かうだろう。

「なぁ、公祐。りっくんについて行かないか?」

「え? なんで俺が?」

「だってお前、呂布将軍の副官だろ」

李典の言葉に、于禁は露骨に嫌そうな表情をする。

「呂布将軍、一人で行かせるのか?」

「いや、だって俺は呂布将軍に付いていくだけで、それ以上何もするなって言われてるし」

「文遠、お前も呂布将軍と親しいんだろ? 一緒に行ってやれよ」

「俺も別に、呂布将軍に付き従うだけって言われてるんだけど」

「お前もかよ!」

李典は呆れた様にため息をつく。

「あのなぁ、りっくんはもう将軍じゃないんだぞ?普通の武将とは違うんだ。ちゃんと護衛しないと、危ないだろうが」

「いや、そうだけど。でも、俺達の仕事は呂布将軍を守る事であって、呂布将軍と行動を共にする事じゃないからな」

「じゃあ、呂布将軍に付いて行くのは無しでいいから、りっくんの護衛くらいはしてくれ」

「それなら最初からそう言ってくれよ」

李典と于禁のやり取りを聞いていた呂布は、二人の方を向いて笑う。

「じゃあ、文遠。お願い出来るかな?」

「分かりました。お任せ下さい」

「じゃあ、行こう」

呂布は笑顔で言うが、于禁は少し眉を寄せる。

「呂布将軍。何かあったら、すぐに呼んでください。すぐに駆けつけますので」

「うん。ありがとう」

呂布は于禁に礼を言うと、李典と共に先に歩き出した。

「なあ、文遠。呂布将軍って、あんな感じだったっけ?」

「そんなに違うか?」

「いや、いつもと変わらないと思うけど、何となく雰囲気が違う気がする」

「ああ、それは俺も思ってた。何となく、明るくなったと言うか、楽しそうとまでは言わなくても、余裕があると言うか」

「だよなぁ。何かあったのか?」

「さあな。俺達じゃ想像もつかないような悩みでもあるんじゃないか?」

「そんなもんかね」

「ところで文遠、お前は良いのか?」

「何が?」

「だから、呂布将軍と一緒に行かなくて」

「だから、呂布将軍に頼まれたから付いて行くだけだって言っただろ」

「はいはい。そうですか」

「そうですよ」

二人は言い合いながら、呂布の後を追う。

徐州の街から徐州城まではそれほど離れていないのだが、徐州城は小高い丘に建っている為、街からは山を一つ越える形になる。

呂布達は街を出てすぐのところで、張飛に遭遇する。

張飛は関羽と共に劉備軍に所属している武将で、徐州の太守である劉備が旗揚げした時から劉備軍に参加している古参の武将である。

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