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十五話

「他に方法が無いのなら、仕方ないでしょう。それに、呂布将軍は漢の忠臣です。ここで呂布将軍を失う事は、国にとっても大きな損失です」「わかりました。では、すぐにでも呂布将軍に出撃の準備をして頂くよう、伝えて参ります」

陳宮はすぐに呂布の元へ向かう。

「兄貴、大丈夫かなぁ」

「大丈夫さ。呂布将軍は、強い人だからね」

劉備はそう言うが、内心では呂布の身を案じていた。

「呂布将軍」

陳宮が呂布の元へやって来る。

「おお、陳宮か。劉備殿との話は終わったのか?」

「はい。呂布将軍、曹操軍が間もなくこの徐州にやって来ます」

「いよいよか」

「そこで、呂布将軍には曹操軍を迎え撃つべく、出陣して頂きたいのですが」

「わかった。すぐに行こう」

呂布は立ち上がって、鎧を身につけ始める。

「あ、ちょっと待って下さい」

「どうした?」

「実は、関羽殿と張飛殿が呂布将軍の見送りをしたいと申し出がありまして」

「そうか、それは嬉しいな。二人とも、ありがとう」

呂布は笑顔で礼を言う。

「いえ、呂布将軍にはお世話になりましたから」

関羽はそう言いながら、呂布の荷物を詰めている。

「兄貴、忘れ物は無いかい?」

「ああ、大丈夫だよ」

「よし、それじゃあ出発だ!」

張飛は元気よく言うと、呂布と陳宮と共に徐州城を出発する。

「呂布将軍、本当に大丈夫ですか? もし呂布将軍に何かあったら、私達は……」

「心配するな。俺は天下無双の呂布奉先だぞ? 曹操如きに負けはしない」

呂布はそう言うが、陳宮は不安そうだった。

呂布達三人は徐州城を出て、曹操軍の迎撃に向かう。

徐州城は山に囲まれた地形の為、平地が少なく、攻めにくい地形である事に加え、徐州城には守りの兵がほとんど残っていない。

さらに言えば、呂布の率いる兵は元徐州の民であり、徐州の民の避難の護衛として残していた兵も少ない。

呂布が徐州城に残る事になったのは、そういった事情もあった。

だが、呂布の武勇を持ってすれば、曹操軍など敵ではない。

呂布はそう信じて疑わなかった。

呂布達が徐州城を出た頃、曹操軍も徐州城へ向けて進軍していた。

曹操軍には曹操の親衛隊の他に、袁紹の残党や袁術の残党なども合流している。

その数は十万にも上っていた。

「曹操様、よろしかったのですか?」

親衛隊長の曹仁が曹操に尋ねる。

「何がだ?」

「呂布です。徐州城に呂布が居れば、呂布だけでも厄介なのに、呂布の妻や子供も居ると聞きます。呂布は女や子供の前では戦えない男だとも聞いています。ここは一旦退くべきなのでは?」

「その心配は無い」

曹操は断言する。

「何故です?」

「呂布の家族は徐州城に避難させていると言う話だ。呂布が家族を見捨てるはずがない。必ず家族の安全を優先し、自らは犠牲になろうとするはずだ。ならば、呂布を討ち取るのは今しかない」

「なるほど。確かに呂布は女子供を目の前にしては戦えぬと聞く。しかし、それでは呂布の首を取れませんぞ」

「構わん。呂布さえ討ち取れば、後は烏合の衆だ。いくらでも対処出来る」

「わかりました。では、呂布の首を取る為に急ぎましょう」

曹操軍は徐州城を目指して進む。

「兄貴、曹操軍はどう動くと思う?」

張飛は関羽に尋ねる。

「おそらく、呂布が曹操軍と一騎打ちをする為に出て来るのを待つだろうな。呂布が討たれたと知れば、劉備殿は必ず助けに来る」

関羽はそう言う。

「そうか。じゃあ、曹操軍は動かないって事だな?」

「ああ、そうなるな」

「よし、じゃあ俺が行って曹操軍を蹴散らしてくるぜ」

張飛はそう言うが、関羽は首を振る。

「いや、それは出来ない」

「どうしてだよ。曹操軍は数が多いからか?」

「いや、曹操軍は数が多いだけで烏合の衆に過ぎない。呂布将軍が居る以上、こちらの士気は高い。それに、曹操軍が動かなければこちらも動けない」

「じゃあ、いつまでこうしてりゃいいんだよ」

「そうだな。おそらく、曹操軍が動き出すとしたら呂布将軍が出て来てからだ。それまでは、我々はここで待機する事になる」

「ちぇっ、つまんねぇな」

張飛は不満そうに言う。

「まぁ、そう言うな。それに、曹操軍が動かないのであれば、我々にとっては都合が良い。ここで曹操軍に消耗して貰えば、劉備殿が楽になる」

「それもそうか。よし、それならじっくり待つか」

張飛は納得すると、その場で腰を下ろす。

「お兄ちゃん、お腹すいた」

「わかったわかった」

呂布と陳宮は劉備と張飛の元へやって来る。

「どうしたんですか? こんな所で」

「いや、実は呂布将軍にお願いがありまして」

「なんでしょうか?」

「実は、この子達をしばらく預かって頂きたいのです」

「え? それは、どういう事ですか?」

「実は、この子達の両親が徐州城の方に居るのです。私達も一緒に行こうとしたのですが、この子達を一人にする訳にはいかないので、呂布将軍にこの子達を預けたいのです」

「それは良いですけど、劉備殿は大丈夫なのですか?」

「大丈夫ですよ。徐州城はそう簡単に落ちませんし、それに曹操軍の狙いは呂布将軍です。呂布将軍の居ない徐州城に攻撃しても、大した意味は無いでしょう」


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