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十一話

「民を守る為の英雄である俺が言ったのだ。間違いは無い」夏侯惇はそう言うと、剣を拾って呂布に向かってくる。

「呂布将軍、この男は私が相手をします。呂布将軍は夏侯惇を」

「わかった」

呂布は夏侯惇に向かっていき、楽進は魏続を連れて行く。

「俺に命令するな!」

夏侯惇は呂布に向かって斬りかかるが、呂布は簡単に戟で受け止める。

「何故、俺がお前の命令に従わなければならない?」

「俺は英雄になる男だ! その俺が、たかが一武将の分際でこの夏侯惇に命令するなど、許されると思っているのか!」

「許されようと思っていない。だが、お前が曹操に降るというのであれば話は別だ」

「ふざけるな!」

「なら、ここで死ね」

呂布はそう言うと、夏侯惇の剣を弾いて戟を突き出そうとする。

「夏侯惇! 無事か!」

そこに現れたのは、夏侯淵だった。

「夏侯淵か。遅かったではないか」

「悪い。こっちも色々あってな。そいつが曹操を殺した呂布か?」

「そうだ」

「夏侯惇、お前じゃ勝てない。俺がやろう」

「馬鹿を言うな! こいつは俺が倒す!」

「無理だって。そいつは天下無双の豪傑だぞ」

「俺が負けるとでも言うのか!」

「お前じゃ勝てない。俺なら勝てる」

「お前は俺が殺す!」

「そうか、ならやってみろよ」

「望むところだ!」

夏侯惇はそう言うと、夏侯淵に向かっていく。

「……何なんだ、こいつは」

夏侯淵は呆れながら、戟を構える。

「呂布、曹操は死んだと言ったな。それは本当か?」

「あぁ、間違い無い。徐晃が曹操の首を獲った」

「……そうか。曹操が死んだのなら、俺も曹操の為に戦う理由は無くなった」

「何だと!?」

「俺は曹操の弟の曹丕に仕えている。曹操が死ねば、曹丕が曹操に代わって徐州を治める事になるだろう。俺もそれに付き従うまでだ」

「曹操の息子だと? お前達が曹操を殺したのではないか!」

「曹操が死ぬ事は、曹操自身にもわかっていた事だ。曹操も覚悟の上で行動している」

「だからと言って!」

「曹操は徐州の民を虐げていたそれを止めていたのが曹丕だ。その曹操を俺達は討った。それだけの事だ」

夏侯淵は淡々と答える。

「夏侯惇、呂布を討ち取れ」

「言われなくてもやってやる!」

夏侯惇は呂布に向かって斬りかかる。

その一撃は重く、呂布は受け流す事が出来ずにまともに喰らってしまう。

「ぐあっ!」

夏侯惇の一撃を受けた呂布は、体勢を大きく崩す。

その隙を見逃さず、夏侯惇は呂布に襲いかかる。

呂布は何とか反撃するが、夏侯惇はその攻撃を軽々とかわすと、呂布の懐に飛び込んで戟を弾き飛ばす。

「死ねぇ!」

夏侯惇は呂布の首に剣を突き立てる。

「待て! 夏侯惇!」

夏侯淵が止める間もなく、夏侯惇の剣は呂布の首を貫いた。

「へっ、ざまあみろ。俺に逆らうからこうなるんだ」

夏侯惇は勝利の笑みを浮かべる。

「馬鹿野郎! なんて事をしてくれたんだ!」

夏侯淵は夏侯惇の胸ぐらを掴む。

「俺は呂布を倒したぞ」

「だからどうした! 曹操が死んで、お前が仕えている曹丕はどうなった!?」

「……え?」

「お前が殺したんだぞ!」

「そんな馬鹿な!」

夏侯惇は慌てて呂布の方を見る。

首の無い呂布の死体が、夏侯惇の足元に転がっていた。

「そんな、嘘だ! 俺が、この俺が呂布如きに!」

夏侯惇は呂布の身体を蹴飛ばし、その勢いで剣を引き抜く。

「くそぉ!何でだ! どうしてだ!」

夏侯惇は呂布の身体を何度も踏みつける。

「お前が曹操を殺したからだ」

夏侯淵はそう言うと、夏侯惇の頭を思い切り殴りつける。

「痛ぇな! 何しやがる!」

「いい加減にしろ。」

すると

呂布が立ち上がる

頭を付けると、首と胴体が繋がっていて血が流れ出す。

「ば、化け物!」

夏侯惇は後ずさりして逃げようとするが、夏侯淵に肩を掴まれる。

「落ち着け。もう大丈夫だ」

「お、俺が、俺が、この手で、この俺が……」

「お前のせいじゃない。全ては俺の責任だ」

呂布は元に戻る。

「お前のせいじゃない。俺が油断していたのが悪い」

呂布はそう言いながら、夏侯惇に歩み寄る。

「来るんじゃねえ!」

夏侯惇は呂布に向かって剣を振り回す。

その攻撃は遅く、呂布には当たらない。

「俺に近付くな!」

夏侯惇は必死に呂布から離れようとしている。

「何故、俺を殺そうとする?」

「俺がお前を殺したんだ! お前が生きてるはずがない! 俺が、俺が!」

「違う。お前は曹操を殺していない。あれは俺がやった事だ」

「何だと?」

「俺が曹操を殺した。だからお前が気に病む必要はない」

「そ、そんな訳があるか!」

「あるんだよ。曹操は俺が殺した。だから俺が仇を討つ。それが筋ってもんだ」

「……」

「お前が曹操を殺した訳ではない。だからお前が責任を感じる必要は無い。だが、それでもお前が曹操を殺したという罪悪感に苛まれているというのなら、俺と一緒に来い。俺が曹操の代わりに徐州の民を守る」

「俺が曹操の代わりに徐州の民を守る?」

「そうだ。曹操が治めていた徐州を、曹操に代わって俺が守る。曹操が出来なかった事を、代わりに俺が成し遂げる」

「俺が、曹操の代わりに?」

「そうだ。俺が曹操になって、曹操の出来なかった事を全部やってやる。曹操の代わりなら、俺が曹操になっても構わないだろ?」

「あぁ、そうだな」

夏侯惇はそう言うと、呂布に向かって手を差し出す。

「呂布、俺を曹操の代わりにしてくれ」

「わかった。よろしく頼むぞ、夏侯惇」

呂布は夏侯惇の手を握る。

こうして、呂布は徐州の太守となった。

呂布は徐州の民を避難させると、曹操軍の兵士達を皆殺しにした。

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