6、創作・小説執筆という趣味について(2023年4月更新)
今回は1〜3月用アンケートで次点になったお題で再度アンケートを取りました。今回は特別版でいつもの倍の2,000文字以内です。
物語を書いたり絵を描いたりすることは、恥ずかしいことだと、私はずっと思っていた。
幼い頃私はよく1人でお芝居ごっこをしていた。小学生になっても止められず、親から「1人でごっこ遊びをしてはいけない」と注意された。それでも隠れて遊んでいたら、親に見つかり「カニが1人でお芝居ごっこをしてた」と友達の前で笑いながら言われたことがある。私は自分自身を馬鹿にされたように感じたのだった。
小学校低学年の頃、私は人気アニメの女の子キャラクターを描いて親に見せた。自分では上手く描けたと思っていた。ところが親は「肩が変」と言った。私は他人に自分の絵を見せたくなくなった。親も多少絵が描けるからこその指摘だったが、当時の私には理解出来なかった。
高学年になった私は、友達が持っていた少年漫画を読んだのを機に、自分も買うようになった。すると親から「女の子なのにどうして戦いものや、怖いものを読むのか」と言われた。私はこんなものを読んでいる自分は恥ずかしいのだと思い、後ろめたい気持ちを抱きながら、コソコソと読むようになった。
似た経験がある人は多いだろう。しかし「駄目なことをしている」と全員が思わないはずだ。親から言われた言葉を真に受け「何を言われても気にしない」という反発心が無かった、私の問題だった。
「自分の好きなものは恥ずかしいもの」という感覚は、思春期になり強化された。ノートに描いた漫画を、家族に見られないように必死で隠し続けた。本屋の漫画売場に行けば「自分はブスでキモいと思われているだろうな」と思い、苦しくなる。それでも棚を眺めずにはいられなかった。
大学進学後は違う理由で困惑した。キラキラ可愛い女の子達が、サラサラとコミックイラストを描き、オタトークをしているのだ。これまでオタク的なことはキモい人間のすることだという認識だった私には衝撃だった。彼女達のイラストもオタ知識も、自分の遥か上だった。私は話がついていけず、下手くそ過ぎる自分の絵を見せられる訳もなく、講義室でただ黙るしかなかった。彼女達は当たり前のようにオシャレして、単位を取り、旅行して、彼氏がいた。
私は何も出来なくて、やってなくて、ダサくて、キモくて、自分が嫌だった。
「オタク的なことを自分がするのはキモくて恥ずかしいもの」という認識と共に就職する。今度は恋愛・結婚から程遠い女、仕事の出来ない女という、新規駄目箇所が浮き彫りになった。どこから見ても駄目でキモくて情けない人間。20代の私はどんどん自分で自分を追い詰めていた。
現状を変えたくて、もがくように私はパソコンを開く。パソコンでレポートを書いていたように、小説を書こうと考えた。私は『小説家になろう』にログインし、小説投稿したり、他作品を読んでいく内にユーザー様達とやり取りするようになった。『物語を創る人』がこんなにも沢山いることに驚きと感動があった。
創作を通して人ともっと交流したいと思い、当時なろうユーザーだった『紗那教授』とやり取りさせて頂いた。教授が参加する一次作品限定の同人誌展示会に、売り子として手伝わせてもらった。自分のオリジナル作品を紙の本にして展示している人の多さに驚いた。会場内を歩き回り、いくつか購入した。作者本人の熱や想いが直接伝わってくることが楽しかった。
『創作』への意識を大きく変えたのは、教授から見せてもらった同人誌印刷代一覧だった。安くはない。でも然程高額でもない。私は「スポーツや習い事等の趣味で発生する金額と変わらない」と思った。
ランニングする人が専用シューズやウェアを買う。料理教室の月謝支払いや調理器具を買う。それと同じなのだ。自分が考えた物語を本の形にすることは、自由に給料を使う選択肢の1つに過ぎないのだと感じた。
「趣味で小説を書いている」と現実世界で言う勇気を、未だ私は持ってない。わざわざ言う必要がないし、それを知って私を馬鹿にする・ドン引きする人とはプライベートで付き合わなくて良いのだ。「隠す」と「みっともない」はイコールにならない。ちなみに教授はイベント参加で仕事を休むこともあり、当時職場に創作活動していることを話していたらしい。これもまたカルチャーショックだった。
私は10〜20代の間、自分の好きなものを素直に好きと言うことが出来なかった。勿体無いことをしたと思っている。もっとひたむきになれていたら、今と違う人生を歩んでいたのかもしれない。でも、苦しんだあの頃があるから今の私がある。今の私は誰かの趣味や好きなことを聞けば、余程のことがない限り「素敵だね」と言える。自分の人生に好きなものがあることは幸せだからだ。
胸を張って、とまでは言えないけど、これからも長く形を変えながらでも、私は『創作』を続けていきたい。
お読みくださりありがとうございます。
次回更新頑張ります。
どこまで続けられるかは、母なる海だけが知っている。
アンケート結果と『紗那教授』の詳細は、活動報告で紹介しています。よろしければそちらもどうぞ。