500文字の寝取られ
「妊娠しちゃった……」
同棲中の彼女からそう告げられた時、俺は自分の耳を疑った。彼女に内緒で受けた検査で、医師から子どもは作れないと言われていたから。
嬉しかった。男の本懐を遂げることができない俺のために、神様が奇跡を起こしてくれたのだと思った。
「ありがとう……!」
彼女をぎゅっと抱きしめる。彼女と自分の子どもを一生守っていく覚悟を持って。
『フフフ、する時に着けなくてもいいよって言ったら、アイツ、自分の子どもだって信じてくれたわ。ホント、あなたの言う通りにしてよかった』
だが俺は聞いてしまった。夜、彼女が知らない男と電話する声を。
俺は知らなかった。彼女が浮気をしていたことを。
浮気を疑ったことすらなかった。だって彼女は、俺以外の異性とは付き合ったことがないと言っていたから。
むしろ逆だった。俺以外の男を知らないからこそ、彼女は他の男との行為に興味を持ったらしかった。
もう彼女と付き合う意味はない。それに血の繋がらない子どもを育てる気はない。
このまま付き合い続ければ、欺瞞に満ちた家族になるだけだ。
「お前とは別れる」
少し考えれば分かることだった。奇跡とは、簡単に起こらないからこそ奇跡なのだということを。
最後まで読んでいただきありがとうごさいました。