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7.異変

 そうして、年月は流れ。

 私がハンスのペントハウスに出入りするようになってから、早いもので四年が経った。

 私達三人は血縁関係こそないけれど、家族のような関係を築いている。

 実家と絶縁状態のハンス、父親とうまくいっていないレオ、前世の因縁から両親を恨んでいる私──皆それぞれ、自然とこの家にたむろするのに十分な理由を持っていたからだ。


 両親を恨んでいるとはいえ、一応表面上はうまくやっている。

 相変わらず、向こうは娘である私を溺愛しているし、その方がこちらとしても都合がいいから二人の前では理想の娘を演じるようにしているのだ。


 何もかもが、順風満帆だった。

 ただ、最近になって……ほんの少しだけ、気がかりなことができた。

 というのも、自分の顔が年々変わってきているような気がするのだ。

 小さい頃は父親似だったけど、成長するにつれて母親に似てくる──という類の話はたまに聞くが、私の場合は何故か現在はどちらにも似ていないのだ。

 実際、ギュスターヴもそのことについて言及していたことがあった。

 その時、彼は「アメリアはご先祖様似なのかもしれないね」なんて言っていたけれど……隔世遺伝にしては、不自然な点が多い。

 仮にそうだったとしたら、小さい頃からそのご先祖様に似ているだろうから。


 気になって仕方がないけれど、それでも時間は刻々と過ぎていく。

 だから、私は釈然としないながらも日々を過ごすしかなかった。


 ──でも、この顔……どこかで見覚えがあるような……。


「おい、アメリア。どうしたんだよ? なんか、放心状態だぞ……」


 言って、向かい側の席に座っているレオが不思議そうに顔を覗き込んできた。

 今日は、二人でハンスが働いている図書館を訪れているのだが……。

 生憎、前述の通り連日自分の顔の変化について悩んでいるため、読書どころではないのだ。


「え……? ああ、ごめんなさい……」

「何か心配事でもあるのか?」


 尋ねられ、慌てて首を横に振る。


「ううん、心配事ってほどでもないのだけれど……ちょっと、気になることがあって」

「良ければ、相談に乗るぜ」

「変な話で申し訳ないのだけれど……私の顔、年々変わってきてない? なんだか、両親のどちらにも似ていないのが気になるのよね」


 一人で悶々とし続けるのもいい加減疲れてきたため、思い切ってレオに相談することにした。

 レオは腕を組み、しばらく考え込むような動作をすると──


「うーん……言われてみれば、確かに変わったような気もするけど。まあ、成長期だし、みんな多少は変わるんじゃねーの? てか、気にしすぎだって。俺だって、お前と出会った頃と比べたら大分変わっただろ?」


 と、さして気に留めない様子でそう返した。

 そう……レオの言う通り、私の顔の変化はあくまでも許容範囲なのだ。

 けれども。毎日、自分の顔を鏡で確認している身としては気になって仕方がない。


「そうかしら……」

「そうそう。あんまり気にしすぎると、ハゲるぞ?」

「えぇ! そ、それだけは嫌……」

「だろ?」


 うんうん、と頷きながらレオは手に持っている本のページをめくる。


「ねえ、さっきから気になっていたんだけど……それ、一体何の本なの?」


 本の背表紙を確認してみれば、『魔女の歴史』と書いてある。

 そのタイトルに興味をそそられた私は、食い入るように身を乗り出した。

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