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終わりに。


 3日後、ついに恐れていた使者がやってきた。


 公爵家からやってきた使者は、有無を云わせず、子爵家へ立入調査を始めたらしい。らしいというのは、アロイス様は使者が来てもこの小屋から離れず、家令と思われる人に玄関先で話を聞き、指示だけだし、居留守を使い、残された時間を惜しむ様に私から離れなかったからだ。

 アロイス様、私を引き渡す気ないのでは? とちょっと思った。


「旦那様。延ばしては参りましたが、ついにこちらにも調査の手が入りそうです。

 どうなされますか? お逃げになるなら、どうにか手配致しますが」


「セバスチャン。それはいい。逃げても無駄だと思う。僕は最後までここでミーシェと共にいるよ」


「……さようでございますか。かしこまりました。それでは……」


 そう言って、セバスチャンさんは去ってしまった。

「アロイス様。私何処かに隠れたらやり過ごせないでしょうか? 例えば、うーん。浴槽の中とか」


「ミーシェ。どうやって息をするの?」


「それは竹をくり抜いた物を用意して……」


「残念ながら、我が家の温泉は濁り湯ではなく無色透明だから流石にすぐ見つかってしまうよ。それに竹林も存在しないね」


「それなら、天井裏とかどうですか?」


「この小屋の天井は見て分かる通り屋根が丸見えで、裏は存在しないね」


「たとえば、森の木の上に登っておくとか!」


「森の調査も兼ねているからね。恐らく猟犬も連れてきていると思うよ」


「崖にぶら下がる!」


「ミーシェが落ちてしまう可能性の方が高いよ」


 アロイス様も有りとあらゆる方法を考えた後の様だ。


「ミーシェは帰りたくないの……?」

 アロイス様は不思議そうに聞いた。


「勿論です。大好きなアロイス様と離れたくなんてありません」


 何言ってるの? って勢いで言いましたよ。本当今更、何言っちゃってくれてるんでしょうかアロイス様は。


「………ミーシェ。僕の事、好き……なの?」


 え。そんなにびっくりした顔してどうしたんです? 当たり前じゃないですか。


「好きですよ」


 え。好きじゃなきゃキスとか無理だよね。常識だよね。私達ちゅっちゅちゅっちゅした仲だよね。幻覚?


「本当に……?」

「はい」


「いつから……」


「えっとーわりとはじめ、から……?」


 いつからーいつから好きって言っていいんだっけ? 薄い顔やった! って思った時から? アロイス様が好きって言ってくれてから? 自分からキスしてから? 考えてもわからないので、ふわっと答えといたよ。いいよね?


「僕は、あなたは自分を守る為に合わせてくれているものだと……一緒にはいたいと言ってくれても。好きとは決して言わなかったから……」


 そういえば、はじめの方は顔が好きなんて言う気持ちで好きって言っていいのか迷って言えなかったような……それからそのままなーなーにしてた気もする。


「私、ミーシェルはアロイス様が好きですよ」


 そうです。私の名前。アロイス様がミーシェミーシェ言うからお忘れの方もいるかもしれませんが、私の名前はミーシェルです。


「……ミーシェ……」

 間違えてるんじゃないよね。愛称として呼んでるんですよね! アロイス様!!


「好きですよ?」


 あ、泣いちゃったーアロイス様泣いちゃったー。ごめんねごめんね。そんなに気にしてるなんて思ってなかったんだよー。私の気持ちなんてどうでもいいとか思ってそうとかちょっとおもっててーごめんて。


「……やっぱり、もっとずっと一緒にいてもいい?」


「あ、え? はい! 望むところです!」


「ありがとう。ミーシェ」


「でも、この状況でどうしたらいいんでしょうか?」

「大丈夫。ミーシェが協力してくれるなら、方法なんていくらでもあるよ。僕の言う通りしてくれる?」


「はい! もちろんです!」

 勿論私は二つ返事でオッケーした。


 ーーーーー


「それじゃあ、早速この服に着替えてくれる?」


 渡されたのは、あの日、卒業パーティーで着ていたドレスをめっちゃボロボロにしたものでした。(下着含むなんか湿ってる)


「え? これ……着るんですか? 露出狂じゃないですか……?」

 あ、つい心の声が……


「うん。着たら上に僕のコートを羽織って?」

 うんって。まぁ、着ますけど。


「ちょっとメイクするね。怪我と汚れている感じにするね」

 わぁ、メイク上手〜! すごく汚い感じになったー(もはや無心だ)


「できた。じゃあ、一緒に本邸へ行こう?」


 出来上がった私を連れて、領主っぽい服に着替えたアロイス様は自分にもいくつか汚れをつけて本邸へ向かった。

 馬車はなかったので、お馬さんに二人乗りで。私はアロイス様の前に横乗り。


「ミーシェは今さっき森の中で見つかった事にしよう。たまたま見回りをしていた僕が見つけて助けられたって言ってね。川に落ちてからはよく覚えてないって事にすれば大丈夫だよ」


 いつもの優しい笑顔で話すアロイス様。私拐われてから10日くらい経ってますけど!? 街中でなんとかって人に目撃されてますけど!?


「不安? 大丈夫だよ。こんなこともあろうかと僕が変装してアリバイを作ってあるから」


 詳しく話を聞くと、私が寝てから、アロイス様は私のぼろいドレスを着て何度か、私が落ちた(正しくはアロイス様が)川沿いの森をふらふらして、故意に目撃されていたらしい。その川はちゃんとこの子爵領を通っている川で、あてなく歩いてだいたい一、二週間程の距離らしい。


「ぎりぎりまであなたを脅して証言して貰おうか悩んでいたんだ。けれど、この一緒にいる間にあなたが僕に一生分の幸せをくれたから。もう僕から解放してあげようと思ってたんだ。ミーシェの気持ちを聞くまでは」


 あーさっさと好きって言ってればよかったって話ですか、そーですか。これが世に言うすれ違いってやつですかね。


 その後はアロイス様が迫真の演技で公爵家の使者(兄だった)を騙し、(私は隣でぼーっとしてた)傷物になった(文字通り崖から落ちて傷だらけっていう設定の)私と、助けたことで情が湧いたアロイス様がクラスメイトだったし、フリーだし何かの縁ということで婚姻を結ぶ事になった。こんな事情なので私の家族も生きてただけで大喜び、結婚も大賛成だったよ。


 しかも、怪我が酷いという設定でもって、結婚式までの間も子爵家の本邸で療養させてもらうことに。そんなこんなで本邸の領主夫妻の部屋に移動した私は、今日もちょっと病んでて可愛い爽やか好青年アロイス様と幸せである。



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