卒業パーティーにて
私、ミーシェル! 公爵令嬢! なんか気付いたら日本人から転生してたよ。
今は卒業式も終わって卒業パーティーの最中。公爵家に産まれたけれど、特に悪役令嬢というわけでもなく。婚約者もいない身軽な身で、普通に学園に入学して何事も無く卒業式が終わって卒業パーティーに出てるよ。
あれだれかいる?
木の根元で休んでいる人がいる。
「大丈夫ですか? どこか具合が悪いのですか?」
声をかけると力ない声がする。
あ、この子はうるわしのモブくん。
私の目の安らぎ、ギラギラな濃い人たちの中で数少ない。いや、むしろ唯一の普通のさわやかイケメン。普通なのにイケメンとはって思いますよね。わかります。でもこの世界、みんな顔が整いすぎてるんです! 歯並び良いし、ムダ毛ないから肌ツルッツルだし! イケメンしかいないんですほんと。
異世界行ったらみんな美形って何やねんと思いました。しかも濃い。とにかく濃い感じなんです。その中で唯一のソースじゃない醤油顔。むしろ塩? もちろん整ってはいるんですが、この薄さサイコー! インドで日本人みつけっちゃったーみたいなレッドカーペットにジャ◯ーズくんいるーみたいなそんな感じ。安心するこの感じ。わかっていただけるといいのですが。そんな感じ。
「すみません。飲みすぎてしまったようで……そろそろ寮へ帰りますので……」
と俯いてすごく顔色悪そうです。
「よかったら寮の側まで手をお貸ししましょうか? それとも誰か力のある方をお呼びしましょうか?」
「大丈夫です。やっぱり優しいんですね……あなたは」
やっぱりってなんだろ。首を傾げながらも、とりあえず立ち上がりやすいように手を出しました。
「どうぞ。せめて掴まって下さい」
「ありがとう」
手袋越しに手を繋ぎ、彼と並んで歩く。
ふらふらとした彼は方向も判別できないのか男子寮とは逆の方へ進もうとする。
「こちらですよ。ゆっくりついてきて下さい」
男子寮にも寮監はいるだろう。入口まで連れて行ったら会場へ戻ろう。
そう思っていた。
「あれ? 誰もいませんね」
寮の大きな扉を開けても誰もいなかった。入ってすぐの詰所にもだれの気配もなかった。彼はふらふらしつつ俯いており、一人では部屋に行けそうもない。
「お部屋はわかりますか? 一人では無理そうですよね。どなたかいらっしゃるといいのですが」
「……すみません。もう大丈夫です。部屋もこの階の一番奥ですからなんとかなると思います」
いや。なんともならないと思うよ? そんなふらふらじゃ。
「ここまで来たので近いのなら送りますよ。ちょうど誰もいないようですから、直ぐに出ればなんとかなるのではないでしょうか」
「……すみません……」
一緒に廊下の奥へ進む。皆んなパーティーに出ているようだ。しんと静まり返った男子寮はちょっと寂しい感じがした。
まぁ、ずっとイケメンと手を繋いでいる私は役得でうきうきなんですけどね。
「ここですか? 鍵はあります?」
「開いているはずです……」
「じゃあ、失礼しますね」
不用心だなと思いながらも扉を開ける。彼の部屋〜ドキドキと思っているといきなり手を引かれ、部屋の中に。
バタン。ガチ。
「え」
手早くタイを片手で抜いた彼はそれで私の口を塞いだ。
「……こんなところまで来ちゃダメですよ。僕みたいなのにつけ込まれることになる」
「ん————!?」
口を塞がれ、声が出せないんですけど! どう言うこと?!
え、元気なの? ど、どうしたの?
「あなたが悪い。僕なんかに優しくするから」
「ミーシェ。僕のミーシェ」
なんかよくわからない事を口走りながら抱きつかれ、後ろでまとめられた両手も胸元を飾っていた手巾で一纏めにされる。
さっきまでのふらつきを感じさせない足取りで私を抱えて奥へ進む。
優しく降ろされたそこはベッドで……
あれーこれ犯られちゃう系?
「ミーシェ。今からあなたは僕のもの」
足に足を乗せられ動けない。ポケットから目薬みたいな小さな瓶をとりだした彼は——塞がれた口の隙間から中身を落とす。歯をグッと噛み締めるけれど布をつたって口に入ってしまう。
え? しんじゃう系?
「おやすみ。ミーシェ」
あ、眠らせられる系……
そこで意識を失った。




