ビアッジョ日記①〈12月〉
降っている雪を窓辺で見ていて、ふと外の小道で立ち話をしている男女が目についた。アルトゥーロとクラリッサだ。雪の中、一体何を話しているのだろう。
アルトゥーロは以前よりだいぶ変わった。かつては興味があるのは親友の征服戦争だけで、他は全く頓着しない男だった。かといって隠者のようなわけではなく、女は来る者拒まず、賭け事には豪快に金をつぎ込み、享楽を楽しむ。ただし、その場限り。
ところが、その享楽すら耽らなくなった。
おかしいなと気づいたのは、フンフ征服から数日経ってから。原因はよくわからない。処刑をしなかった唯一の王族、クラリッサによるものかとも思ったが、違うようだ。
健全なのは良いことだが、幼馴染以外にも大切なものを持ってほしい。
友人として、また、兄貴分として、切にそう思う。
生活が健全になったことに関係があるのかないのか分からないが、従卒への態度も変わった。
以前のアルトゥーロは従卒をきっちりと指導していたが、それは将来コルネリオ軍を担う者を育てるためであり、余計な会話はしなかった。それが近頃では時たまではあるが、声をかけるようになり、相手をひとりの人間として見た対応をしている。
おかげでアルトゥーロの人気は増している。元々、騎士としての技量に優れ、それに関しては非常に勤勉な彼は、真面目に騎士を目指す従卒たちの憧れの的だった。それが各従卒に良い対応をするようになったのだ、彼を目標とする従卒たちは喜んでいる。
アルトゥーロの変化はどれも良いほうだ。
原因は分からないけれど、恐らくコルネリオ様は知っているのだろう。気にしている様子はない。
ならば私は黙って見守るだけだ。
いつか、アルトゥーロが幸せを掴むことを願いながら。