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本編4

時間無くて書き切れなかったので、話を分割して投稿します。続きもちゃんと編集して近い内に投稿します。

その日の夜。つい先刻、公爵邸に帰ってきたらしい兄様に呼び出された。

なんだか嫌な予感がした。だって兄様はずっと私とアシュレイ殿下を会わせたがっていた。最近は城に行っていることも多いみたいだし……きっと今日昼にあったことも既に伝わっているだろう。

それ故、あんなことをしてしまったから怒られるのでは?と。


「こんな遅い時間に呼び出してすまないね、ヴィオレッタ」


確かに時計の針は頂点に近い時間だ。でも私ももう子供ではない。兄にとっては私はいつまでも子供のままなのかもしれない……とふと思った。


「問題ありません。もう、子供ではないので」


そう。もう子供ではない。だから私には責任が付きまとうのだ。だから私は覚悟する。仮令(たとえ)これから言われることが勘当でも、教会送りでも……他の人との婚約でも。

私はこの状況から逃げられれば何でもよかったのかもしれない。我ながら狡い考えだ。


「そうか……それで、君アシュレイを訪ねただろう?」


やはりというかなんというかあの件での呼び出しだったようだ。


「あの時のことなら私に非があったと自覚しております。その上で私はどんな罰でも受ける覚悟も出来ていますので、どうぞ処罰を」

「あー……私の切り出し方が悪かった。」


素直に自分が思っていることを言葉に出して兄様に言う。私から切り出さないと、私に対して甘い兄様が言いにくいだろうという私なりの配慮だったのだが、彼の言いたかったことと私の言葉には齟齬があったようだ。


「先に言っておく。君は色々と勘違いをしている」

「勘違い……とは?」

「アシュレイが朝、キャスティリオーネ姫と共にいたのは、押しかけられたからだ。なにもやましいことはなかった。それに、あの場には直前まで私もいたしな」

「え…………?」


”あの場には二人きりではなかった ”、”私は何かを勘違いしているらしい”兄様が言うその言葉に私は言葉を失った。思考が真っ白になって、どういうことなのか理解が追い付かない。だって私の未来視では――――。


「本当に色々とタイミングが悪い……あ、ヴィーの所為ではないから勘違いしないでね」

「……?」

「ヴィーに今迄黙っていたことを話すよ。本当は巻き込みたくなかったから話す気はあまりなかったのだけど……君のアシュレイへの誤解を解くためにも」


そう言って兄様は全く何も把握できていない私に話し始める。


「そうだな……数年前にアルレイシャ皇国の王が病気で亡くなって、その弟に王座が引き継がれたことは知っているね?」

「はい、一応は」


アルレイシャ皇国について調べている内にその話も出てきたから調べた。一応国王には息子もいたが、今は何故か行方不明扱いになっていた気がする。他の国の事情にあまり深く首を突っ込むのも危険かと思い、深追いはしなかったが……明らかに不自然な点が多かった。アルレイシャ皇国の皇子といったら兄様より少し年下な程度でその当時でも王座を継いでも問題ない程の年齢だった筈だった。しかし貴族院の決定で皇子には王座が渡されなかったのだ。


「その王がここ数年の内に国庫をかなり使い込んでしまい、困窮した状態だということは……?」

「え……困窮?少し危うい程度で問題ないと言われていたと思いますが」

「……やはり知らないか。まあ公にされていないから当然と言ったら当然だが」


この話は何か関係があるのか?と疑問に思いながらも、自分が知っている範囲で答えていく……のだが、どうやら私の知っている情報と兄様が持っている情報では齟齬があるようだ。


「っでも、もし国庫を使い切ったというのが本当だったとしても、国としてはまだ立て直せるのでは?」


アルレイシャ皇国はそれなりに歴史もある文字通りの大国だ。現に今現在も彼の国からはそこまで酷い話は聞こえてきていない。


「いや、それは無理だろう。あの国の王はもう……駄目だ。貴族達の操り人形になっている。自国の公爵に唆されて戦争を起こそうとしているくらいだしね」

「戦争!!?」


確かに私が視た未来でも()()()()()両国は戦争間近にあった。けれど私は今回、何もしていないし、するつもりもない。頭が混乱してくるが、なんとか整理しながら話の続きを聞いていく。


「私と父様はね、君が未来を視たすぐ後からアルレイシャ皇国について調べていたんだ……それで、その情報を掴んだ。だって私にはアシュレイが心変わりするなんて信じられなかった。彼の気持ちは僕から見ても本物だと疑い様がなかったから……父様はある程度情報が集まるまで疑い半分だったけどね。なんというかあの人らしい」


私は何も答えられない。私は二人がそんなことをしているなんて知らなかった。普通、いくら公爵家と言えど、一貴族が他国のそんな情報を調べるなんて危険に決まっている。けれど二人は理由は別々と言えど、きちんと行動していたんだ。

それに比べて私は……。


「でも、あの国は中々に尻尾を掴ませてはくれなかった。”国庫が底を尽きそうになって、戦争を起こそうとしている”という情報を掴んだはいいが、肝心の確信できるほどの証拠までは集められなかった。そんな不明瞭な情報を国王や王子に話すわけにはいかない。だからアシュレイにも君にも事情を話せなかった。君の未来視で見たことが起こらないように出来るだけ早く脅威はなくしたかったんだけどね……こんなに時間がかかってしまった。すまなかったと思っている。君にもアシュレイにも」


兄様は私に向かって頭を下げる。裏でそんなことがあったなんて予想もしていなかった。

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