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その日は朝から雲一つない青空が広がっていた。
昼間は国民(主に平民)に向けての催し物が行われ、貴族たち(ただし伯爵家以上の爵位の家のみ)は夜に行われる舞踏会の準備に追われていた。
我がヴォルタ家も例外ではないが、準備にそれほど時間は掛からない。
主に妻たちのドレスが一人でも着脱が可能なものになっているからだ。
これは妻が長年試行錯誤しながらデザインしていたものでつい最近完成したものだ。
私は女性の衣装については詳しくはないが、以前のような息苦しさはないらしい。
そういえば、妻が十代の頃、ダンスをするたびに気を失っていたな。
妻は昔から「コルセットが邪魔なのよ!なんでこんな拘束具を付けなきゃいけないのよ。絶対この世からコルセットをなくしてやる~ただし、医療用は除く!」と叫んでいた。
男である私には理解できない領域なので相槌を打つだけに留めていた。
ローズは朝早くに第二王子付の侍女が迎えに来た為、王宮で支度をしてそのまま会場入りをする。
アリアンナのエスコートを誰にしようか迷ったが、私たちと一緒に行動するという事で落ち着いた。
次期女侯爵のエスコート=婚約者候補と見なされるというマリアとアリアンナの意見を聞き入れた結果だ。
決して私が両手に花状態になりたいからじゃないぞ!
王家から招待状が届いた翌日から数多くのアリアンナのエスコート役の申し込みが殺到したが丁重にお断りをしたのだった。
国王の挨拶を合図に王妃様の生誕祭は幕を開けた。
国王と王妃のファーストダンスも終わり、ダンスをする者、友人たちと談話をする者、恋の駆け引きに奔走する者などそれぞれだ。
私は妻とアリアンナを引き連れて国王夫妻に挨拶に赴いた。
国王夫妻の右サイドには第一王子とその婚約者であるクラリーチェ嬢。
左サイドにはローズがにこやかに笑みを浮かべ諸外国の国賓たちからの挨拶に追われていた。
第二王子の姿は見当たらないが、ローズが王子の分まで対応しているので問題はないらしい。
いや、問題あるだろうが!
王妃の息子である第二王子が公務を蔑ろにするのは!!
私達は国王夫妻に挨拶をするべく、挨拶待ちの列に並んだ。
他国では爵位順に挨拶をするものらしいが、我が国では役職順である。
といっても各省庁の大臣(長クラス)のみに適用され、そのあとはかなり自由だ。
だが、自然と序列が出来ているから不思議だよな~。
ちなみに我が家は大臣クラスの次である。
私が元騎士団の長官職に就いていた事と、アリアンナが魔術師として国に貢献している事が関係している。
ぶっちゃければ能力順である。
忘れがちだが我が国は実力主義国だ。
能力のある者が上に立っているのである。
アリアンナも学生じゃなければ今頃、宮廷魔術師の長官くらいにはなっているはずだと現長官がぼやいていた。
無能と判断されたら国王と言えども簡単に消される。
過去に若い女におぼれた国王が息子や臣下に消された例も多々あるくらいだ。
ローズは王妃様と共に周辺国を周り、我が国との違いに驚いたと言っていた。
また、アリアンナもウェス国と我が国の違いに最初は戸惑ったと言っていた。
「本日はお招きいただきありがとうございます。そしてお誕生日おめでとうございます、王妃様」
長ったらしい口上を嫌う国王夫妻にはこれくらいの挨拶で十分である。
「ジェラルド、マリア、アリアンナ。よく来た。今日は楽しんでいってくれ」
「ありがとうございます」
「アリアンナには後ほどウェス国のことで聞きたいことがある」
「…………………………承知いたしました」
少し長い沈黙の後、アリアンナは小さく頷いた。
国王や王妃からは見えないが面倒くさいという表情が見え隠れしているぞ、アリアンナ。
国王夫妻への挨拶さえ終えればあとは早々に帰宅してもよし、談話を再開するのもよし、意中の相手に更なるアプローチをするもよし。
かなり自由である。
アリアンナは久しぶりのこの国での夜会に少々浮かれているようだった。
「だって、クインディア大陸の夜会は退屈でしたもの。常にタヌキと狐の化かし合い……はこの国でも同じですが、決められた時間まで拘束されるのが苦痛でしたわ。我が国のように、主催者への挨拶さえ済めば帰宅していいというわけでもないし、心の底から会話を楽しむことなんてありませんでしたわ。常に狩場でしたもの。特に優良物件に群がる令嬢たちは……。もっとも、私は魔術の話を振られれば喜んで参加しておりましたけどね」
にっこり笑みを浮かべながらも「ふっふっふっ」と不気味な声を出すアリアンナにマリアはさらに詳しく聞きたそうにアリアンナを見つめていた。
「家に帰ってから私が体験したことをお話しするわ。マリア義母様」
「では、今日は早めに帰りましょうね。ローズは最後までいなければいけないからお泊りになるだ……」
「母上のめでたき席ではあるが、第二王子である私、ルーカス=ディ=リーゾはローズ=ヴォルタとの婚約を破棄する。そしてガーネット=チョッチョ男爵令嬢との婚姻を宣言する」
突然響いた第二王子の言葉に会場中が静まり返った。
第二王子の隣りには本来ローズが着るはずの王子の婚約者だけに認められた色のドレスを着た少女がしだれかかっている。
ローズの姿を探すと国王夫妻の傍にクラリーチェ嬢といた。
その顔からは表情が抜け落ちていた。
慌ててローズの傍に駆け寄る私にマリアとアリアンナもついてきた。
「ローズ、大丈夫?」
すっかり表情を無くしたローズに声を掛けるアリアンナ。
アリアンナの姿をその瞳に写したローズは小さく頷くとアリアンナに抱き着いた。
「お姉様」
小さな声は震えていた。
アリアンナがローズを慰めている間にも第二王子によるローズが王子妃に相応しくない所業が次々と挙げられていく。
だが、誰一人としてその言葉を信じていないことは会場にいる人たちの表情を見れば一目瞭然である。
一通り、ローズの『罪状』を述べた第二王子とその取り巻き(いつの間にか王子の隣りに立つ少女に侍っていた)は満足そうに笑みを浮かべている。
静まり返る会場に凛とした声が響き渡る。
「発言をお許しいただけますか?国王陛下」
声の主はアリアンナ。
その表情は笑みを浮かべながらも侮蔑の色をにじませている。
「許可する」
「ありがとうございます」
深々と国王に頭を下げた後、第二王子に向かいあった。
「第二王子殿下にはご機嫌麗しゅうございます」
最上級の礼をするアリアンナに第二王子は嬉しそうに頷いている。
「国王陛下より許可を頂きましたのでお伺いしたいことがございます。が、その前に今から私が行う事は全て私個人に責任が生じます。ヴォルタ家の総意ではありませんことをお心にお留めください」
「わかった。それで私に聞きたい事とはなんだ?」
「今までどちらにいらしておりましたの?」
「は?」
アリアンナの質問に『こいつ何を言っているのだ?』という表情を浮かべている第二王子。
その表情はかなり間抜け面だ。
しかし、アリアンナはにっこりと笑みを浮かべると再度質問した。
「大切な公務を放り出してどちらにいらしたのですか?とお聞きしたのです」
「……友人たちと……」
「それは母君の生誕を祝いに来られた諸外国方のお相手をする事よりも重要な事ですの?」
アリアンナの言葉に今頃気づいたのか取り巻き達が顔色を蒼白にしている。
そりゃそうだろうよ。
今日お見えの諸外国の方達というのはトップクラスだからな。
通常は外交官が王族の名代として参加するのだが我が国の王妃の生誕祭だけは違う。
外交官じゃなくて王妃に会いたいという諸外国の王族が直々に来られているのだ。
そのせいでいつもより警備は厳重だしな。
王妃の息子が他国の王族よりも自分たち(友人)を優先していたなんてことが広まったらまず出世はない。
いや、今の時点ですでに出世の道は絶たれたな。
第二王子の側近たちが配属される予定の各省庁の長官たちが揃って首を横に振っている。
「妹のローズは殿下の婚約者ではありますが、まだ我がヴォルタ家の娘……ただの侯爵令嬢です。王家の人間ではありません。殿下のパートナーとして婚姻後、公務に携わるための予行演習として様々な行事に殿下のサポート役として参加するのはわかります。しかし、今回は終始、妹は一人で殿下の代わりを務めておりました。その理由をお教えください。私共が納得する理由を!」
淡々と告げているが、どこか反論できない雰囲気を出しているアリアンナ。
「そ、それは……」
もごもごと口ごもり理由をはっきりさせない第二王子にアリアンナは持っていた扇子で表情を隠した。
「ご友人たちとの語らいはお祝いにみえられた皆様への挨拶が終わってからでも十分ではありませんの?時間はたっぷりとあるのですから」
表情を隠してはいるが、声はいつもより低いアリアンナ。
アリアンナの言葉に成り行きを見守っている人々はうんうんと頷いているが第二王子達は気づいていない。
「ルーカスは王子様なんだから別にどこで何をしていてもいいじゃない!」
突如響いた甲高い声にアリアンナは周囲にはわからないような小さなため息をついた。
「殿下、お連れのご令嬢に社交界のマナーを教えてないのですか?それと彼女はどこの家の方ですの?」
「彼女はチョッチョ男爵の……」
「なんですの?モゴモゴ言わずにはっきり申してください。先ほど妹を大声で断罪していたように」
「彼女は男爵家の……」
殿下はアリアンナに一喝されても小さく呟いているが、どうやらアリアンナが術をこっそりと掛けたのだろう。
殿下の声は会場全体どころか、外にも響いているようだ。
殿下自身は気づいていないようだがね。
先程から庭先に出ていた者達がぞろぞろと会場内に戻ってきているのがその証拠だろう。
「……諸外国の来賓をお迎えしているこの公の場にて我が妹との婚約を破棄すると宣言し、礼儀知らずな令嬢をご自分の新たな婚約者だと紹介されました。殿下の品位や教養はその程度だと認識してもよろしいのですね」
「ちょっと、さっきから私を無視しないでよ!」
キンキン声を上げる令嬢にアリアンナはすっと視線を向けた。
「少しは場の雰囲気というものを弁えてはいかが?どこの誰ともわからぬお嬢さん」
「な!?」
「一応私も侯爵家の跡取り。社交デビューされている方のお名前とお顔は記憶しておりますし、この魔具に貴族名鑑及び国内の商会の情報を取り入れ、組み込んである魔石で顔認証を行い確認しておりますが、いくらデータを検索しても貴方のお名前がヒットしないのよね?」
胸元にあるブローチを触りながらさりげなく新しい魔具の売り込みをするな、アリアンナ!
国王や宰相や魔法省長官がその魔具について聞きたくてウズウズしているのが視界に入らないのか!?
いや、視界に入れながら内心ほくそ笑んでいるなあれは……
頼むから今は第二王子達の対応を優先してくれ~!
「え?」
「我が国にチョッチョ男爵家は存在していないのですが……私が1カ月前に手に入れた貴族名鑑が古かったのかしら?」
いや、我が家にあるのはどの家にある物よりも最新版だ。
新しいのが届けられると以前のは書庫の奥に仕舞うからアリアンナが見たものが古いという事はあり得ない。
「そもそも、この場には伯爵家以上の者しか参加が認められていません。たとえ婚約者が伯爵家以上の者でも本人が子爵・男爵家の場合は入場すらできないのが我が国の仕来り。男爵家の令嬢だというあなたは不法侵入者なのですよ?」
「でも、ルーカスが……」
それにしてもこのお嬢さん、さっきから殿下を呼び捨てにしているけど……ほんとにどういう教育を受けているんだろうか。
「ガーネット、少し黙ってくれ」
「ルーカス?」
「頼むから、黙っていてくれ」
殿下が宥めてやっとキンキン声を治めた令嬢だが、周囲の視線は冷たいものだ。
会場中が凍り付くほどに冷たい視線が令嬢を見つめている。
「殿下、あなたが彼女を妃にと望むことに私は別に反対は致しません。妹のローズの為にもしかるべき手続きを行ってください」
「え?」
「しかし、最低限のマナー・品位・能力を身に付けることが出来ない者を王家に迎え入れるというのならば、私の個人的な意見となりますが、私は第一王子を王太子に押します」
「な、なんだと!?」
アリアンナの言葉に顔を真っ赤にさせて反論しようとする第二王子だが、公務をサボっていたことはこの場にいる者全員が証人になってしまっている。
何を言っても言い訳にしかならないな。
これは国王も王妃も庇うことが出来ないだろうな。
「ただし、これは私、個人の意見です。ヴォルタ家の当主である義父の意見はまた違うかもしれませんが……」
ちらりと私を見るアリアンナの目は幼い頃の彼女を思い出す。
そう、あの兄を後継者にすべきではないと訴えてきた時の瞳と同じだ。
「国王陛下、発言をお許しください」
陛下の前に片膝をついて許可を求めるとあっさりとおりた。
声の具合から投げやりになりつつあるな。
頼むからすべて丸投げだけはやめてくれよ。
「我がヴォルタ家は第二王子の婚約者の地位を辞退いたします」
私の発言に周囲からざわめきが沸き起こった。
『婚約破棄』に応じるのではなくあくまでも『婚約者の地位を辞退』である。
こっちから破棄なんて明言したら第二王子が図に乗るに決まっているからな。
ここ数か月の殿下の行動でそれは明確化されているから他人からの文句は少ないだろう。
つまり、我がヴォルタ家は第二王子の後見人から手を引くってことだ。
現在、王位継承争いが水面下で行われているが、優位なのは第二王子だと言われていた。
その理由がアリアンナとローズの存在だ。
アリアンナが作り出す魔術・魔具は国の経済や学問にかなり貢献しているし、交友関係も幅広い。
また、アリアンナが作った術具を使い、外交官と共にローズもそれなりの人脈を広げている。
ローズは意外と外交官としての能力を携えているようだ。
多分、国王よりも広いと思われる……周辺国の王家または上位貴族は軒並みアリアンナやローズと親しい関わりを持っている。
気付いたら広がっていたアリアンナとローズの人脈。
いったいいつ頃から広げていったのだろうか疑問だが、不都合は今のところないから私はあまり干渉せずにいる。
むしろ推奨している方かな?
アンリアンナの人脈が広がるたびに我が領地が潤ってきているからな。
早くアリアンナに爵位を譲りたいが、彼女の伴侶も決めていないしまだまだ私は引退は出来そうもないんだよな。
アリアンナが自分にはまだ早いって見合いを断るんだよな~
それとなく好きな人でもいるのかとマリアに探りを入れて貰ったがそれもないみたいだし……
って、今はアリアンナの事じゃなくてローズのことだ。
冤罪ははっきりと晴らさないとね。
「しかし、殿下が述べられた『罪状』はすべて冤罪であることを明言させていただきます」
「だろうね。ルーカスが言っていた『罪』が行われていた時期、ローズ嬢はクラリーチェ嬢と共に王妃の外遊に付き添っていたからな。今ここにいらっしゃる諸外国の方達が証人になってくれるだろう」
諸外国の方達はそれはそれは美しい笑みを浮かべている。
喜んで証人にはなってくれるだろう。
その反面、我が国は諸外国に弱みを握られたことになるけど。
『他国のスキャンダル(醜聞)ほど美味しいモノはない』である。
すでに我が国はスキャンダルをばらまいてしまっている。
これをなかったことにすることはできない。
諸外国に借りを作ってでもこの場を治めるしかないだろう。
「陛下、冤罪である証拠なら彼女が身に付けているもので証明できます」
ふふっと可愛らしく笑っているがその瞳は害虫を駆除しましょうと語っている。
害虫=第二王子とガーネット嬢の事だろうね。
ああ、ガーネット嬢の取り巻きも含まれるか。
アリアンナの視線を受けたガーネット嬢はガタガタと震え始めている。
第二王子やその取り巻きはその事に気づきながらも彼女を慰めようとはしない。
彼らもまたアリアンナの視線に恐怖を感じているのだろう。
「第二王子殿下」
「な、なんだ?」
「私がローズの誕生日祝いに贈った装飾品をなぜそちらのお嬢さんが身に付けているのかしら?」
「こ、これは私が購入したモノだ!」
「ヴォルタ家の家紋が入っていた装飾品をヴォルタ家の人間以外に贈ったという事かしら?」
ふふふと笑うアリアンナの背中に黒い翼が見えるのは気のせいかな~
確かにガーネット嬢が身に付けている装飾品には光の加減でわかりづらいが我が家の家紋が刻まれている。
我が家の家紋はちょっと複雑で複製はほぼ不可能。
しかも装飾品に刻もうと思ったらわが一族の職人に依頼しない限りできないのだが、ここ数年私とアリアンナが依頼したモノ以外はないことは把握済みである。
もっとも、一族以外からの依頼があれば職人から確認の問い合わせが来るからすぐにわかるんだけどな。
ちなみに、私とアリアンナとローズは我が家の家紋を間違えずに書ける。
これは直系の生まれであることに由来しているらしいが私もローズもアリアンナも幼い頃から正式に家紋を書けるという事で継承者としての条件を満たしている。
左胸の痣だけでは偽物が現れる可能性もあるため、何代か前の当主が決めた我が家の後継者ルール(条件)の一つだ。
多分第二王子は中身を確認せずにローズ宛のモノだからと勝手にガーネット嬢に渡したんだろうな。
なんせ、ローズ宛の贈り物は王宮にていったん検閲されるようになっているからだ。
例え、親兄弟からの贈り物でもすべていったん王宮にて検閲されるようになっているのだ。
これは遙か昔に親兄弟の名をかたり、王子妃に貢物をしていた王子妃の愛人がいたせいだ。
しかも、王子妃との間に子をもうけ、その子を王族として育てようと計画していた事も発覚。
その王子妃と間男は裁判の末、処理されたと歴史に刻まれている。
王子妃の一族も爵位領地返納ののち、国外に追放されている。
間男の一族も同様であった。
「私がローズに誕生日プレゼントして贈ったそれらはすべて魔具なんですのよ」
扇子で隠しているが口元がにやっとなっているぞアリアンナ。
「ま、魔具?いったいどんな……」
「記録装置」
「は?」
「いえね、妹から王子の婚約者に内定してから昼夜問わず刺客を送られてくるから決定的な証拠を残せないか相談を受けましてね」
嬉々として説明しているアリアンナだが要約すると『身に付けている間、周囲の状況をつぶさに記録する装置』だそうだ。
つまり、もし仮にローズがガーネット嬢に危害を加えたとしたらその時の様子が魔具に記録されているはずだという。
しかも、日時を指定すればすぐさま再生できるらしい。
そこで、国王の命で第二王子がツラツラと上げた『罪状』の日時の様子が会場全体に映し出された。
なぜ公の場で映し出されたかというと、別室に移動するよう促したが第二王子がここにいる全員に証人になってもらうと宣言(悪あがき?)したからだ。
再生が終わると同時に第二王子とガーネット嬢及び彼女の取り巻き達は騎士に拘束された。
映像は公の場で話せるような内容ではなかった。
ガーネット嬢によるローズ暗殺未遂計画など可愛らしいものだった。
すぐさまガーネット嬢が接触した闇ギルドへの強制捜査が発令されたがな。
なんとガーネット嬢と第二王子や取り巻き達との濡れ場が含まれていたのだ。
(濡れ場の場面は音声カットで早送りになるよう操作したのはウェス国の外交官殿である。魔具の出荷元という事と第三者による操作が必要だったからである)
また、第二王子による国庫横領の証拠まで映し出されていた。
第二王子が財務部の下級官吏を脅して国庫からお金を出させていたことが発覚したのだ。
アリアンナが贈った装飾品は殿下とペアになるようになっていたので、殿下は女性用をガーネット嬢に贈り、男性用は自分で身に付けていたのだ。
アリアンナはちゃっかり第二王子用の装飾品も魔具にしていたのだった。
後日そのことを問い掛けると
「あら、ペアの装飾品よ。片方だけ魔具なのはおかしいでしょ?それに……ふふ、予想通りの展開で面白かったですわ~」
と満面の笑みで語ったのだった。
第二王子とガーネット嬢はねつ造だと最後の最後まで抗っていたが国賓として生誕祭に参加していたウェス国の外交官が「あー、この魔具って一度使用始めると再生させることはできても映像をねつ造することはできないんですよ。魔力も自然界から自動的に吸収するらしく魔力切れもおきないんです。おかげでうちの国は王宮官吏による犯罪が減りましたよ。わっはっはっ」と話していた。
なんでも王宮官吏になると身分証となるものを配布するのでそれに魔具を紛れ込ませているという。
各部署、年によってその身分証は形を変えるのでどれが魔具か分かっているのは国王と宰相と魔術研究所の所長だけらしい。
詳しい仕組みなどは教えてくれないようだが、確かにこれがあれば王宮官吏による犯罪は減るな。
第二王子とガーネット嬢+α(取り巻き)の退場により王妃様の生誕祭は無事にとはいかないが再開された。
ウェス国の外交官殿は諸外国の方達と魔具についての商談が始まっていた。
他国の王子の醜聞よりも画期的な魔具、しかもどの国も悩まされている官僚による不正を防ぐことが出来る品があるとわかればそちらに飛びつくだろう。
ちゃっかり我が国の外交官と魔法省(魔術や魔具に関する事柄を統括している部署)の長官も交じっている。
ちなみに魔法省の長官と魔術師長官は別人だ。
魔術師長は軍の組織の一つ魔術師団の長です。
国王は大臣たちを引き連れて第二王子達の処分を検討する為に場を辞している。
来客対応は主賓の王妃と今後に必要な書類を掻き集めて戻ってきた第一王子とその婚約者であるクラリーチェ嬢に一任された。
ローズは気分がすぐれないという事で控室に下がることになり、私たちも同行した。