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先読みしていた姪(仮題)  作者:
ジェラルド視点
1/13

1.

「ねえ、叔父様。あんなバカが爵位を継承したらこの家は終わりよ?」


当時まだ10歳だった姪の言葉に私は自分の耳を疑った。

姪は私の兄の娘。

初孫でもあったからか両親(彼女から見たら祖父母)に大変可愛がられている。


だが、彼女の両親(私からみたら兄夫婦)は娘には無関心だった。

しかも跡取りにはなれない女の子だからと冷遇している。

その3年後に生まれた息子に愛情を傾けているのである。

そして例にもれず甥は兄夫婦の色に染まっていった。


姪があまりに不憫だった為になにかと世話を焼いたのが私の妻だった。

私の両親は兄夫婦が孫娘の教育を放棄していることを知り、孫娘を彼らから取り上げながらも強く諌めたりしなかった。

どちらかと言えば兄夫婦を観察をしていたようだった。


姪はひねくれることなくまっすぐに成長してくれた。

姪曰く、私の両親の存在と私の妻が世話をしてくれたおかげだという。


そんな姪がある日、私に相談があると離れにある私の仕事部屋に来たのだ。


近々、父が爵位を譲り、領地でのんびりと暮らすと話したのが数日前。

兄夫婦は自分たちが譲り受けるものとばかり思っていることが誰の目から見ても明らかだった。

過去に一度も父が兄に爵位を譲るとは明言していないのに。

我が国は必ずしも長子継承ではないのに……むしろ実力主義なのに。


「ねえ、叔父様はこのまま父が強引に(・・・)爵位を継いでこのヴォルタ家が没落しない未来を予想できる?」

私の部屋に入りソファに座るなり話し始めた姪の言葉に思わず固まってしまった。


姪の言っていることが理解できたからだ。

兄であるリナルドは侯爵の嫡男として生まれたことで最初から全てを与えられていると思っている。

両親は厳しく教育を施したが、乳母がその倍甘やかした……傀儡人形に仕立てたからだ。

「あなたは尊い人なのよ。あなたは命令だけを出せばいいの。あとは部下がやってくれるわ」と。

自分の息子を兄の下僕として育てていた。

両親がそれに気づいた時、すでに兄の人格は出来上がっていた。

兄は王族と自分以外は人間とは思っていない最悪な人物に。

何人もの従者が兄を諌めては兄の悋気に触れ、ある者は大怪我を、ある者は精神を病んだりした。

それらのフォローは全て乳母の息子が行っていた。

日陰者として育てながらもなぜかまっとうな人間に成長しているのが不思議だ。

いま、兄についているのは己の欲望に忠実な者(=兄からこぼれた甘い蜜を啜る者)だけだ。

乳母の息子は今現在私の従者となっている。


兄が義姉と出会ったのは貴族の子供が全員が通う学園(全寮制)でだった。

年の離れていた私は学園で一緒に過ごすことはなかったから先生や先輩方から聞いた話によれば、最悪の3年間だったらしい。

兄は気に入った女生徒を片っ端から手に掛けようとしては同級生や教師たちに抑えつけられていたという。

身分を笠にやりたい放題だったそうだ。

私達の祖母が王家から降嫁してきた王女だったため王家とも繋がりがあるがそれほど権力のある家ではないのにただ『王族が降嫁した侯爵家の息子』というだけで兄は学園で踏ん反り返っていたのだ。

タイミング悪く(?)兄が在学中に王家及び公爵家の人がいなかったのが兄を傲慢にさせた原因だろうと後に学園長は愚痴をこぼしていた。

何度も停学を繰り返し、退学処分直前までいっていたという。

なぜ退学処分にしなかったのかと激しく抗議したいところだ。

退学処分をくらえば多少はマシになったのではないだろうかと父も頭を抱えていた。


しかも教師を脅して我が家に何一つ連絡が届かないようにしていたというのだからたちが悪い。


おかげで私が入学した時、私は要注意人物になっていた。

入学してから半年は常に監視付だったのだ。

交友関係や成績など逐一学長に報告されるという徹底ぶりに辟易としたものだった。

私と兄とは違う!という事を証明する為に卒業するまで主席を守り通したけどな。

ちなみに私は騎士科に入り、卒業後は騎士団に所属していた。


義姉は今は亡き男爵(現在実家の男爵家は断絶している)が妾に産ませた子だった。

学園に入る半年前まで平民として暮らしていたそうだ。

義姉は自分が貴族の娘だと知ると高位貴族に気に入られようとアレコレしていたらしい。

それに捕まったのがボンクラな兄というわけだ。

義姉は兄が勝手に婚約した頃から贅沢三昧の暮らしをするようになった。

兄がその資金源だ。

両親も私も二人を別れさせる努力はしたが無駄だった。

私達が反対すればするほど、自分たちを悲劇の主人公にしていったからだ。


父はすでに兄を見放している。

表向きはそうは見えないように振る舞っていたけど。


だが、廃嫡するほどの醜聞がない。

いや、醜聞がないことはないが社交デビューしてからは周りから見れば『それほどのことで廃嫡するのは』と眉を顰められる程度のことしか公になっていない。

兄と義姉はうまく立ち回っているのである。

学園時代のことは『成人前のことだから』と曖昧にされてしまっている。

父は兄が学園を卒業すると共に廃嫡にして放り出すつもりだったのだが周囲から

「アレは野放しにしてはならない。出来る限り公に出すべきではない」

と言われ領地の屋敷を管理する役目を与えて軟禁していたのだが、悪友の伝を使ってあっさりと王都に舞い戻っていた。

何度連れ戻しても王都の屋敷に居座るため、役目を解除して好きにさせていた。(もちろん監視付で)

周囲には『アレはすでに廃嫡予定の者です。無視して構いません』という通達を父が速攻出した。

これにより、被害を受けた家からの抗議は多少あったものの、数か月後には『アレはいない者として扱え』というのが社交界での暗黙のルールとなっていたのだった。



「私はジェラルド叔父さまがこのヴォルタ家を継ぐべきだと思っている」

「は?」

「あんなクソ親父に侯爵なんて勤まらないわよ。ヴォルタ家の名を貶めるだけよ!」

クソ親父って……どこでそんな汚い言葉を……

ちらりと隣に座っている妻を見るとニコニコと笑みを浮かべている。


……理解した。


妻が教えたに違いない。

妻も怒りが頂点に達すると淑女とは程遠い暴言を吐くからな。

ちなみに私の妻は由緒正しき歴史ある伯爵家(しかもかなりの資産家)のご令嬢だが諸々の事情で幼い頃、平民として暮らしていた。

今では淑女の鑑とまで言われ、多くの女性から崇拝される存在の妻だが、やんちゃぶりは幼い頃から義両親+義兄弟(妻の両親と兄弟)が泣いて止めるほどだったらしい。

そんな妻に育てられた姪……ああ、うん。なるべくしてなったというしかないな。

しかし、一緒に育てている私の娘はそんなことないのにな~

どうしてだ?


「叔母様!マリア叔母様も私の母の所業は目に余るモノだって常々仰っていたわよね」

「ええ、そうね」

扇子を取り出して表情を隠す妻・マリア。

「あんな阿婆擦れ、さっさと社交界から追放すべきです!弟のクリスだって本当にヴォルタ家の血を引いているかも怪しいわ。もちろんこの私も」

「アリアンナ!何を言うんだ!」

「そうよ、アリアンナ。クリスはともかく貴方は正真正銘ヴォルタ家の血を引いているわ。銀髪にアイスブルーの瞳。ヴォルタ家の色を色濃く引き継いでいるもの。それに左胸の上にヴォルタ家の家紋があるでしょ?」

わがヴォルタ家の直系の子には生まれた時から左胸の上にヴォルタ家の家紋がある。

たとえ、別の家に養子に入ったり、嫁・婿入りしても生涯消えることはない。

ただし、分家筋には現れない。

これは初代が施した呪いである。

「まじない」ではなく「のろい」だ。

初代が妻の浮気を疑ったことが事の起こりだった。

妻の腹にいる子は本当に自分の子なのかと疑い、妻が寝ている間に術を施したのだった。

生まれた子の左胸に自分の子ならヴォルタ家の家紋が刻まれるようにと。

生まれた子にはちゃんと家紋が刻まれていた。

初代の妻は浮気をしたと疑われたことと勝手に術を掛けられた事に激怒し平謝りする夫を鞭でお説教をしたという逸話が代々受け継がれている。

初代の妻は出産後、鞭を常備するようになったという話も受け継がれている。

そして、なぜか直系の子の左胸に家紋が刻まれるようになったのだった。

幾度となくこの術を解こうとしたが解けなかったので、ヴォルタ家は左胸に家紋がある者のみ家督継承の権利を有するというルール(条件)の一つが出来たのだった。


「お祖父様が爵位を譲渡されるのは諸々の手続きの関係で約1年後になると思われるので、叔父様はお祖父様から水面下で引継ぎをなさってくださいね。近々お祖父様から話があると思います」

「は?」

「父と母の件は……お祖父様にお任せしてあります」

にっこりと微笑んでいる姪・アリアンナの笑顔が怖い。

なぜだろうか。

可愛らしい笑顔なのにどす黒いものが見えるのは……

「アリアンナ、犯罪だけはダメよ」

「もちろんですわ。一応私は侯爵家の人間ですからね。でもね、1年後もそうとは限らないのよね~」

「まあ、もしもの時はうちの子になる?」

「うーん、その時になったら考えます」

すっと視線を反らすアリアンナに妻の鋭い視線が突き刺さっている。

隣りに座る妻の笑顔も怖い。


え?なに?


もしかして、すでに外堀埋められている状態じゃない?

知らぬは本人(私と兄夫婦)のみってこと!?


***


「お父様!アリアンナお姉様を呼び戻してください!」

昔のことに意識を飛ばしていた私に可愛い顔を真っ赤にして怒っている娘・ローズの声が届いた。

「……私もそうしたいが無理だ」

「な、なんで!?どうして肝心な時にいないのよ!」

バシバシと私の執務机を叩くローズ。

ローズが叩くたびに山積みの書類がハラハラと床に落ちていく。

それを執事のハンスが無言で拾っていく。


ここ数日繰り返されているヴォルタ家の日常である。


数年前、兄夫婦と甥のクリスは兄の友人(悪友?)の領地に遊びに行った帰りに野盗に襲われて帰らぬ人となった。

それは、父が爵位を譲ると宣言してから1年後の事だった。

長男であった兄を亡くしたことで私が爵位を引き継いでも社交界で醜聞となることはなかった。

むしろ慶事として取り扱われたのには苦笑せざるをえなかった。


兄夫婦の死後、父は私に爵位を譲ると領地に引っ込んだ。

アリアンナは私たちの養女にした。

最初はごねていたアリアンナ(なぜごねていたのか未だに不明)だがマリアの説得で養女にすることが出来た。

マリアにどんなことを話したのか聞いたが女同士のヒミツとかで教えてくれなかったがアリアンナを無事に養女に迎えられたからいいだろう。



兄夫婦の喪が明けた直後に、王妃様主催のお茶会が開かれた。

第一王子と第二王子の妃探しであることは明白。

我が侯爵家にもアリアンナとローズ宛に招待状が届いた。

そういえばアリアンナは第一王子と、ローズは第二王子と同じ年だったな。

ローズは滅多に入れない王宮に行けるという事で乗り気だったがアリアンナは最後の最後まで渋っていた。

お茶会当日まで渋り続け、マリアの雷をくらっていたのには私を始め使用人一同が苦笑いしたほどだ。

最終的にはローズのお世話係という名目を与えて何とかお茶会に参加させた。


その結果

アリアンナを第一王子の、ローズを第二王子の婚約者候補にという話が舞い込んできた。


アリアンナは「絶対にお断りしてください!第一王子……王族の相手なんて絶対にイヤです!」と断固拒否。

もし、強引に話を進めるなら今すぐ修道院に駆けこむとまで言い切り、すぐさま我が領内の修道院に問い合わせをしていたほどだ。


対してローズは瞳を輝かせて「是が非でも王子妃の座を射止めて見せますわ!」と拳を掲げて宣言するほどだった。


妻のマリアもアリアンナを第一王子の妃候補にすることに難色を示していた。

第一王子の評価は物語の人物かというほど素晴らしいものなのだが妻とアリアンナから見ると「完璧すぎて嘘くさい。絶対に裏があるはず」という事らしい。


まあ、一つの家から二人の妃を出すのは政治的バランスからよくないことは周知の事。

ヴォルタ侯爵家としてはローズを第二王子妃候補として差し出すことにした。

表向きはアリアンナがヴォルタ家を継ぐため王家に嫁がせることはできないという事にして。

まあ、実際ヴォルタ家には子供がアリアンナとローズの二人しかいないのでこの理由はあっさりと通った。

多少第一王子がごねたらしいが、王妃様に一喝されて渋々ながらも引き下がったようだ。


ローズは候補者に決まった翌日から週三日、他の候補の令嬢たちと王宮にて妃教育が始まった。

王妃自らが指導するという事で第一王子、第二王子それぞれの妃候補全員が同じ教育を同じ時間帯に受けることとなった。

2か月ごとに試験を行い、王妃が篩にかけるという。

計6回試験を行い1年掛けて正式な婚約者を決めるらしい。

これは代々王家の仕来りとして受け継がれているとか……

ちなみに次期国王を決める時も候補者は1年掛けて試験を受けるという事を国王から聞いたことがある。

国王と私は年は離れているが幼馴染であり、親友でもあるから王家の仕来りなどをいろいろ聞かされ、たまに愚痴を吐く国王の息抜き相手にされていたりする。



ローズが4回目の試験に通った頃、アリアンナが突然留学したいと言い出した。

マリアは視野を広げるために賛成だというが、侯爵令嬢がおいそれと簡単に国外に出ることは難しい。

しかもアリアンナはヴォルタ家の跡継ぎでもある。

「国王陛下にご相談しよう」

頭を抱える私にアリアンナは一通の手紙を差し出した。

封筒には国王個人の紋章で蝋封されていた。

慌てて開封し、中身を読んだ私は項垂れるしかなかった。

国の代表としての留学が決定していたのだった。

そして1カ月後、アリアンナは数名の供と共に魔術が発達した隣の大陸にあるウェス国へ留学していった。



ウェス国は海を挟んだクインディア大陸の西側にあり、魔術研究が盛んな国である。

また、魔力を有する者は誰でも入学できる学校を国で運営している。

魔導師の育成のみならず、人工的に魔石を作る学部まであるというから驚きだ。

まだ設立されて数年だが、こちらの大陸でも名を轟かせている魔導師が教鞭を取っている事で有名である。

それに先代のウェス国王が魔術を愛する愛好家で時々教壇にも立っているそうだ。

現国王は先代の甥だという。

現国王もまた魔術の発展に力を入れている方だ。



アリアンナからは月一で報告書が送られてくる。

アリアンナが開発した魔導具で簡単に手紙のやり取りができるようになったからだ。

対になる箱に手紙を入れて魔石(自然界にある魔力が結晶化した石)または人工魔石(字のごとく人の手で作られた魔石。この場合いくつかの石を組み合わせるらしい。仕組みは私には理解不能だ)を翳せば対の箱に手紙が転送されるという優れものだ。

ちなみにこの魔導具は近々ウェス国で一般に売りに出されるそうだ。

アリアンナにも発案及び開発者として収益の一部を貰えると嬉しそうに手紙に書いてあった。


***


「お父様!」


現実逃避という回顧をしていると再び娘のローズの怒声が響く。

数年前に最終試験が終わり無事に第二王子妃の婚約者の座を射止めたローズ。

王子との仲も良好である。


いや、良好であった……最近雲行きが怪しい。

なんでも数か月前に学園に転入してきた男爵家の令嬢(男爵が外に産ませた庶子)が第一王子と第二王子を筆頭に、高位貴族の息子に粉を掛けているという。

全員、婚約者持ち。唯一持っていないのが魔術師団団長の子息のみ。

これは王家はもちろん、我が家をはじめ高位貴族の家の暗部でも把握済みである。


どうやら王子の婚約者として王妃と共に公務(外交として諸外国に外遊)をしている間に籠絡されたらしい。

これは第一王子の婚約者に決まったアスマン公爵令嬢も同じだ。

王妃はことのほかアスマン公爵令嬢とローズを可愛がってくださっている。

アスマン公爵令嬢とローズは王妃様のお気に入りだと我が国の貴族で知らぬ者はいないほどだ。

彼女たちが傷ついた時、それは王妃の逆鱗に触れる時だと思えばいい。

そして王妃の逆鱗に触れるということは王妃を溺愛している王の逆鱗にも触れる。

そうなった場合、きっちり調査は行われるが、少しでも黒だと判断されると貴族であった場合は軽くて爵位降格、重いと爵位没収となる。

まあ、さすがに処刑はないけどな。

処刑はないが生涯薄暗い牢への幽閉の場合はあるが……

そういえば、一人生涯幽閉を言い渡された者がいたな。

昔王妃様に懸想して、誘拐監禁凌辱しようとしたバカが。

たしか、北方の牢獄に放り込まれたって話だ。

そのバカな男の実家は没落し、全員国外に出ている。


アスマン公爵は第一王子の行動を静観している。

娘のクラリーチェ嬢にはその男爵令嬢には一切近づく、自ら注意をするな、学園内の出来事はすべて教師に報告し教師から注意させろ、決して一人で行動するな。必ず複数の友人と一緒に行動しろと言い聞かせているらしい。

これは我が家も同じ。

下手に騒がれ巻き込まれるのは面ど……ゴホン、いろいろ大変であるからだ。


爵位の上の者から注意を受け改善するならまだマシ。

だが、件の男爵令嬢は同格の男爵令嬢からの注意には笑って「わかったわ」と言いつつ改善せず。

一つ上の子爵家の令嬢からの注意は無視。

さらにその上の伯爵家の令嬢の注意を『元平民だからってそんなこと言わなくても……』と悲劇のヒロインを演じているらしい。

ちなみにこれらは学園に設置されている防犯魔具(ウェス国からの輸入品)によって各関連部署に配布されている。

王家はもちろん、法を司る司法省しかり、警備を任されている警備隊しかり、各関係者の家しかり。


「……わかった。陛下に頼んで一時帰国を促す」

「完全帰国で!」

「それは無理だろうな」

「どうしてですの!?」

「まだ留学期間が残っている。それに今、我が国とウェス国で共同開発している術が最終段階に入っているらしく長期間研究チームを抜けることが出来ないと連絡がきた」

「え?共同開発って、時空ゲートの事ですわよね」

「ああ、すでに幾度となく実験が行われて、最終テストを残すのみとなっているそうだ」

「なら、その最終テストをお姉様の帰国のためにと陛下にお願いしては?」

「アリアンナが頷けば、陛下も許可を出すだろうな」

「お姉様なら真っ先に手を上げるのではありませんか?ご自分で体験できるのなら」

「……否定はできない」

アリアンナは昔から魔術研究が好きで暇さえあれば魔術書を読んでは実験を繰り返す子だった。

今では我が国にアリアンナ以上の魔術師はいないのではないかと言われているほどだ。

だが、ウェス国でのアリアンナは中の下らしい。

一番最初の手紙に「自分の視野がいかに狭かったのか痛感しました」と悲壮感たっぷりに書かれていた。



ということで国王に進言したらあっさりと許可が下り、時空ゲートの実験という事でアリアンナの一時(・・)帰国が決定した。


アリアンナの帰国を知ったローズの喜びようはものすごかった。

なぜ、それほどまでにアリアンナの帰国を促したのかを知るのはそれから三カ月後。


王宮で開催された王妃様の生誕祭の日だった。


まさか、物語のような出来事が現実に起こるなど……誰が予想できるか!


姪はそのことを予見してさっさと他国に留学していたなんて……


しかも、妻と王妃様もそのことに気づいていたなんて……



勢いで書いています。

誤字脱字は見つけ次第修正していく予定です。


恋愛……するのかね~この子たちは...( = =) トオイメ


【この物語のメモ】

魔導師……魔術の使い方を導く者(指導者)

魔術師……魔術を行使する者(攻撃系・回復系などそれぞれ得意不得意はある)

魔石……魔力を纏った石。魔力が弱い者でも術を使えるようになるが中には主を決める石もあるらしい

魔導具・魔具……魔術を組み込んだ道具。少ない魔力で発動できるように開発されている物が多い



2018.9.24

 今後の話の展開の関係上、ローズの婚約決定が2年前という設定を数年前に変更しました。

 (年数が合わなくなってしまったので……設定ミスです……ヾ(_ _。)ハンセイ…)

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