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おばけのココちゃん

「そうよ。……アンタにとっては気分のいい話じゃないかもしれないけど、探索員は皆、ケイブの血を飲んでるの」


「うえっ」


ケイブの血を飲んでるって、吸血鬼じゃなし。思わずお化けの子の方を見る。その子も顔をしかめて、「自分たちはケイブの被害者みたいな言い方だったが、利用はしてるんじゃないか」と呟いた。

僕の反応に、翼は「ごめんね」と苦い顔をした。


「やっぱり、言わない方が良かったかしら。でも、ここで隠しておくのは違うんじゃないかって思ったのよ。それにどうせ、多分いつかは気付くだろうし」


「……僕の血も飲んだの?」


「私は飲んでないわ」


 でも、言い方からすると、飲んだ人はいたらしい。うう、と僕はうめく。複雑な気分だけど……まあ、でも、いいか。僕は元気だし、気を悪くすることもない。と思うことにする。


「でも、なんでケイブの血を飲むの? なんかいいことあるの?」


「まあ、一番はさっきアンタが言った疑問につながるわね。頭を破壊されたみやこが、どうして生きていたのか」


「つまり、ケイブの血を飲むと死ななくなるってことなの」


「いいえ、死なないわけじゃないわ。ただ、ものすごく強い回復力を得ることになるの。頭の破壊くらいなら、すぐに再生する。

日常の怪我なんて、痛いと思った次の瞬間にはなおってるくらいよ」


「そこまで治るのに、死なないわけじゃないの?」


「心臓を破壊されると、流石に再生が追い付かないみたいね。それでも暫くは生き残るから、すごいんだけど」


「へえ……」


 まあそれでも、滅多なことで死ななくなるんだから便利は便利なんだろう。


「じゃあ探索の人達だけじゃなくて、世界中の人が飲んだらいいのに」


「色々問題があるのよ。ケイブの血の絶対量も足りないし、添加物もすごく高いものを使ってるからコストもかかる。そもそも、体に合わない人もいるから。合わない人が飲んじゃうと、ひどい副作用があるみたいだし」


「ふうん。薬って、そんな色々あるんだ」


「そうよ、結構難しいんだから。でも、一応その薬の物質を違うものに置き換えた薬は、

全ての人達が飲むようにってことになってるのよ。

一般国民がそれを飲む理由は、治癒力じゃなくて、放射能への耐性を持つためね」


「放射能にも抵抗出来るの? 銀杏さんは、除染が進んだからって言ってたよ」


「もちろんそれが一番大きいんだけど。でも、この薬の効果もそれなりに重要よ」


「へえ……」


 人間って、本当にいろんなことしてるな。こんな人間でも、隕石には勝てなかったんだ。

大変だね、と僕が言うと、本当にね、と肩を竦める。


「それじゃ、私は銀杏のところに行ってくるわ。多分もうことも落ち着いて、今は事後処理でもしてるだろうから。

アンタが連れていかれるの、気付かずに見送っちゃった責任もあるしね。手伝ってくる」


「僕も行く」


 手伝いたいわけじゃなくて、単純に銀杏さんとお喋りしたいだけだけど。でも、銀杏さんが

新しいおやつでもくれるなら、手伝ってあげなくもない。

なんて思っていたのに、お化けの子が急に僕の前におりてきた。


「おい、私のことを忘れるな」


 あ、まだいたの。というか、本当にずうっといるけど、僕に何の用事なんだろ? 助けてくれたお礼待ちかな。そういえば言ってなかった。それは言わなきゃ。


「翼、やっぱりやめる」


「え、あ……そう? 今、ものすごい一瞬で気が変わったのね」


 僕が意見をころっと変えたから、翼は不思議そうだったけど、そんなに追及はされなかった。


「まあ、ついてきたいって言われても連れて行ってあげられないんだけど」


「そうなの?」


「アンタにはまだ、入れる場所と入れない場所があるからね」


「え。僕、うろうろしたらダメなの」


「あれ、言われてなかったの?」


「うん、そんなの全然知らない」


「まあ、そこまで制限するつもりはないのかもね。ただ、とりあえず今はちょっと大人しくしといてほしいわ」


「そうだったんだ。多分そのうち暇になるから早く教えてね」


「ええ、勿論。あと、もし退屈なら部屋の中で二足歩行の練習でもしておいてくれる?

その方が、外に出られるようになった時絶対便利よ」


「なるほど。そうする」


 頑張って、と翼は僕の頭をかいぐりまわしてから部屋を出ていった。重い扉の音が、部屋に響く。


「やっときちんと話せるな。随分待たされたものだ」


 僕の鼻先にくっつきそうなくらいに顔を寄せて、お化けの子が言った。真っ白のワンピースの裾が揺れる。


「ああ、返事はするなよ。この部屋にはカメラがついてるって、銀杏も言っていただろう? 私はお化けだからカメラにも映らない。妙に思われるからな」


 じゃあどうやって返事をすればいいんだと思っていると、額を軽く小突かれた。


「お前は返事を考えるだけでいい。私が読み取ってやる」


 何それ、テレパシーみたいだ。おばけの特権能力?


「ま、そんな感じだな」


 ……早速読まれてしまった。お化けってすごい。

まあそういうことならと、僕は布団に寝転びなおす。かたわらのおばけの子を見つめて、頭の中で声をかけた。


『さっきは助けてくれてありがとう』


「構わん。私も話したいことがあったからな」


『あなた、子供なのにおじさんみたいな話し方するね』


「お前が気に入らないなら変えるが?」


『えっ』


 リアクションが予想外だった。なので試しに、「他のパターン見せてみて」と思ってみると、彼女はにっこり笑った。


「いいよ!」


『え』


「じゃあ、まずは自己紹介からだね! 私はココ。歳は十歳で、見ての通り女の子です! よろしくね!」


「…………えっ。怖……」


 思わず漏れた言葉に、お化けの子は途端に真顔になった。


「お前が別のパターンを見せろと言ったんだろう」


『でも、そんなに変わると思ってなかったし。二重人格なの?』


「大袈裟だな」


 お化けの子はちょっと口元を緩めた。その笑顔の方が自然だ。僕としてもそっちの方がいい。

さっきのはちょっと気持ち悪い。


『もう一回普通に自己紹介して』


「いいだろう」


 彼女は空中でまっすぐに立って、僕を見下ろした。まるでそこに床があるかのようだけど、でも、浮いてるんだろう。素足に

 白のワンピースというのは、僕の服と似ている。靴下を履いてる分、僕の勝ちだと思うけど。


「では、改めて。――私の名はココだ。こういう言い方が正しいのか知らないが、いわゆる〝お化け〟をやっている」


 以後お見知りおきを、と彼女はワンピースの裾をつまんで、優雅に頭を下げて見せた。

これはどうもご丁寧に、と僕は頭を下げ返す。彼女はそのままふわりと動いて、僕のベッドに腰かけた。

 僕の手におしりが乗っちゃってるけど、全然重くない。お化けだから体重がないのかな。


『ねえ、ココ。お化けってことは、ココは死んじゃった人なの? なんで死んだの?』


「随分率直に聞くな」


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