表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/124

ー神有の章82- 命芽吹く国

「えっ?ちょっと待ってほしいの鳴り!八岐大蛇(やまたのおろち)草薙剣くさなぎのつるぎが同質のモノとはどういうこと鳴り?八岐大蛇(やまたのおろち)草薙剣くさなぎのつるぎが変化したモノと言うこと鳴りか?」


道雪どうせつ。おぬしの言う通りなのじゃ。だからこそ、アレが復活せぬように代々のみかどは自分たちの血を使い、封印してきたのじゃ。しかし、アレと同質と言うだけあって、草薙剣くさなぎのつるぎの神器としての力は他の神器よりも遥かに質と神力も最上級なのじゃ」


 天照あまてらすの応えに道雪どうせつは想わず、身震いするのである。


草薙剣くさなぎのつるぎバージョン2ですら、奪われた太陽を取り戻すことに成功したの鳴りよね?ならば、オリジナルの草薙剣くさなぎのつるぎを使えば、この改変された世界すら、元に戻すことは成功するのか鳴り?」


 道雪どうせつはそう立て続けに質問をする。しかし、天照あまてらすは、ふうううと長いため息をつき


「それは無理なのじゃ。伊弉冉いざなみによる世界の改変は、この世の【ことわり】すらも書き換えたのじゃ。それを今更、どうにかするのは無理なのじゃ。老人が若返り、赤子となるくらいに無理なのじゃ」


「そう、鳴りか。世界は元通りには戻らない鳴りか」


 天照あまてらすの応えに道雪どうせつは肩を落とす。


「しかしじゃ。オリジナルの草薙剣くさなぎのつるぎを使えば、このひのもとの国が再び、命が産まれる土地に戻ることは可能なのじゃ」


 天照あまてらすの言いに、吉祥きっしょうが、はっとなる。


天照あまてらすさま!それって、もしかして、伊弉諾いざなぎ復活計画のことを指しているのかしら!?」


「ふむっ。さすがは思兼おもいかね合一ごういつを果たした吉祥きっしょうなだけはあるのじゃ。1を聞いて10を【知る】とは、まさにこのことじゃな」


「なあ、吉祥きっしょう。以前から、伊弉諾いざなぎ復活計画のことについて、色々と探っていたけどさ?まさか、ひょうたんから駒みたいに情報を得られるとは想わなかったな?」


 万福丸まんぷくまるがそう吉祥きっしょうに言うのであった。


「ええ、そうね。僕も伊弉諾いざなぎ復活計画が進行中であることは、信長さまと天照あまてらすさまとの会話では察してはいたわ。でも、それにオリジナルの草薙剣くさなぎのつるぎが関わっていることまでは知らなかったわ」


「ふむっ。吉祥きっしょうに情報を与えすぎたようなのじゃ。まあ、それは良しとして、わらわと朝廷は伊弉諾いざなぎ復活計画において、どうにかして、オリジナルの草薙剣くさなぎのつるぎを手に入れようとは画策しているのじゃ」


「そのオリジナルの草薙剣くさなぎのつるぎが手に入れて、いったい、どうするつもりなの?僕が出来ることがあれば手伝うのですわ?」


「これは、わらわとみかどとの【約束】に関わることじゃ。だから、吉祥きっしょう、おぬしには手伝いを願い出るかは、今のところ、不明なのじゃ」


「そう、なの。で、でも、僕に何か出来ることがあるのなら、遠慮なく言ってほしいのですわ?そのためになら、僕はどれほどでも力を貸すのですわ?」


「えへへっ。伊弉諾いざなぎさまが復活すれば、また、この国では赤ちゃんが産まれるなあ。そしたら、俺と吉祥きっしょうの間にも子供ができるってことかあ。これは、是非とも頑張らないとな!」


 万福丸まんぷくまるが鼻の下を伸ばしながら、そう言うのである。吉祥きっしょうは想わず、手に持っていた分厚い書物で、万福丸まんぷくまるの後頭部をぱこーーーん!と一発殴るのであった。


「いってえええ!角が、角が後頭部に突き刺さったあああ!」


 万福丸まんぷくまるが後頭部を両手で抑えながら、地面をゴロゴロとのたうちまわるのである。その一連のやりとりを視て、周りの皆が、はははっと笑うのである。


「いやあ。しかし、また、この国に命が産まれることが可能となると聞くと、心がワクワクする鳴りな。うちの娘である誾千代ぎんちよ宗茂むねしげの間にも子が産まれる鳴りな。これでひと安心なのだ鳴り」


「話が飛躍しすぎでゴザルよ。オリジナルの草薙剣くさなぎのつるぎは、未だ、壇ノ浦の海底深くに沈んでいるのでゴザル」


「ああ、そうだった鳴り。ぬか喜びをしてしまったの鳴り」


 邇邇芸ににぎのツッコミに道雪どうせつがまたもや、がっくりと肩を落とすのである。


「だがしかし、アレが復活するのは好都合とも言えるのゴザル」


「好都合クマー?邇邇芸ににぎさまは八岐大蛇(やまたのおろち)が復活することには賛成なのかクマー?」


 隆信たかのぶが怪訝な表情で邇邇芸ににぎに問いかけるのであった。


「いや。アレが復活すること自体は大変、困るでゴザルヨ?でも、アレが復活するということは、海底から、わざわざ、草薙剣くさなぎのつるぎが陸地に上がって来てくれるということでゴザル。だから、その点においてだけ、好都合なのでゴザル」


「じゃ、じゃあ、八岐大蛇(やまたのおろち)を倒せば、オリジナルの草薙剣くさなぎのつるぎが手に入るんだクマー?」


「アレを倒せればでゴザル。時に建御雷たけみかづち合一ごういつを果たした道雪どうせつ殿は経津主(ふつぬし)合一ごういつを果たしたモノとは出会えたでゴザルか?」


経津主(ふつぬし)鳴りか?いや、そういうモノとは出会えてない鳴り。それはどういう意味鳴り?」


「あれ?建御雷たけみかづちからは話を聞いていないのでゴザルか?経津主(ふつぬし)はかつて、あなたの神器だったでゴザルよ?」


「いや、全くもって、その話は建御雷たけみかづち本人からは聞かされていない鳴り。それよりも、肉体を渡せとばかりに神蝕しんしょく率を上げろとばかり要求してくる鳴りよ?」


 邇邇芸ににぎは顔色を明らかな不満の色に染め上げるのである。


「どういうことでゴザル?建御雷たけみかづち殿は道雪どうせつ殿に協力的ではないのでゴザルか?」


「わらわの見立てでは、どうやら、道雪どうせつの言う通り、建御雷たけみかづち道雪どうせつ自身に無理強いをしているみたいなのじゃ。だから、この前、建御雷たけみかづちをびびらせてやったのじゃ」


 天照あまてらす道雪どうせつに変わって、そう説明するのであった。


「びびらせたでゴザルか。ううむ。建御雷たけみかづちはいったい、何を考えているのでゴザル?少し、問い詰めた方が良さそうでゴザルよ?」


「すまない鳴り。どうも、天照あまてらすさまの神気にあてられてから、ここ、建御雷たけみかづちの意識が表面化しなくなってしまった鳴り。我輩が問いかけても何も返事をしない鳴り」


「あらら、だんまりを決め込んでしまったでゴザルか。これは困ったことになったのでゴザル。建御雷たけみかづち経津主(ふつぬし)の神力をも視込んでのアレの討伐計画であったのに、いきなり頓挫したのでゴザル」


「なんじゃ。邇邇芸ににぎ、おぬし、建御雷たけみかづちの神力を当てにしておったのかじゃ。これは失敗したのじゃ。こうと知っておれば、建御雷たけみかづちをびびらすことはなかったのじゃ」


「まあ、おばば様が九州の地にやってくること自体が予定外だったのでゴザル。しかし、こうなれば、おばば様にもアレと対峙する時はご出陣を願わなければならなくなったでゴザル」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

cont_access.php?citi_cont_id=32148659&si

ツギクルバナー

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ