ー神有の章78- 邇邇芸との話し合い
「さて、皆さん、聞きたいことがあれば聞いてくれて良いのでゴザル。まあ、それほど期待されても困るでゴザルがな?」
島津家久、いや、彼と合一を果たした邇邇芸がニヤリと笑う。対して、天照がふんっと鼻を鳴らす。
「では、わらわから問わせてもらうのじゃ。草薙剣と八咫鏡を手に入れて、おぬしはどうするつもりなのじゃ?」
「それは、やっぱり、それがしの攻撃力と防御力が跳ね上がるからでございます。おばば様も知っている通り、それがしの武具は、元は草薙剣と八咫鏡でゴザルから」
ん?どういうこと?と吉祥は想う。草薙剣はそのまま武器にできるけど、八咫鏡は何に使うのかしらと。
「ふむ。まこと、筋が通った回答なのじゃ。だが、それだけでは無いはずじゃ。何か目的があって、そのふたつを手に入れようと想っているのではないか?じゃ」
「それは応えたくないので応えないのでゴザル。まあ、おばば様が貴重な情報を教えてくれるというのであれば、交換に教えるのでゴザル」
「面白きことを言うやつじゃ。わらわの何を知りたいのじゃ?スリーサイズで良いのかじゃ?」
「ぼくちん、天照さまのスリーサイズが聞きたいのでしゅ!」
そう言うは邇邇芸の神気で吹き飛ばされた大友宗麟であった。彼はいやらしい眼つきで天照の身体を舐めるように視るのであった。
天照はその視線を気にもせず
「上から110、70、900じゃ。ほれ、教えてやったのじゃ。草薙剣を手に入れたい本当の理由を言うのじゃ」
「ちょ、ちょっと待ってほしいでゴザル。それはそれがしが聞きたいことではなくて、そこの宗麟殿が知りたいことでゴザルよ?」
「うお。110センチメートルってすごいクマーね。いったい、カップで言ったら、どれくらいなのだクマー?」
「ううむ。わからないので候。多分、えいち、いや、あいくらいはあるのではないので候?」
龍造寺隆信と鍋島直茂がふむふむと頷きながら天照の胸をじっくりと観察し、そう感想を述べる。吉祥はここの男どもの頭を一発ずつぶん殴りたい気持ちになるが、努めて、それを抑え込むことにする。
しかし、そこでふと立花道雪が無反応なことに吉祥は気付くのである。
「道雪さん。どうして、あなただけ無反応なの?普通、男って言うのは大きければ大きいほど良いんじゃないのかしら?」
「ふんっ。誤解しないでほしいのだ鳴り。我輩はおしとやかなおっぱい派だ鳴り。我輩には天照さまのおっぱいはただの脂肪の塊にしか視えない鳴り」
「うおおお。すげえ。道雪さん、あのすいかのようなおっぱいを脂肪の塊と言い切りやがった。俺、ちょっと、道雪さんを尊敬の眼で視てしまうかも?」
それはそれでどうなのかしら?と想う吉祥であるが、まあ、万福丸がじろじろと天照さまの胸を視ていないのでそれで良しとするのであった。
「ほれ、わらわのスリーサイズを教えてやったのじゃ。はよう、草薙剣を欲しがる本当の理由を言うのじゃ」
「だから、それがし、おばば様の身体に興味はないのでゴザル!何故、親族のスリーサイズを知って、喜ばなければいけないのでゴザル!」
「吉祥。大神と言えども近親はやばいものなの?」
「うーん。そんなこと言い出したら、朝廷や帝の血筋なんて、やんごとなきヒトたち全員、親族みたいなものよ?多少は外の血も混ざってはいるかもだけど、ほとんど、高位の方々の血族で占められているわよ?」
「男系は連綿と続く血筋でゴザルが、嫁はよそからもらっているでゴザル。そこは勘違いしてほしくないところでゴザルよ?」
「あら、そう?でも、一時期、藤原姓に嫁の座を独占されていた気もするけど、気のせいなのかしら?」
吉祥の言いに想わず、ぐっ!と唸る邇邇芸である。
「ま、まあ、その辺りの話はやめるのでゴザル。で、別におばば様のスリーサイズを聞いても嬉しくもなんともないでゴザル。それがしとしては、貴女のスリーサイズを聞いたほうがよっぽど嬉しいのでゴザル」
「おい、ちょっと待て!俺の嫁確定の吉祥のスリーサイズを聞きたがるなんて、図太い神経してんな!吉祥、こいつ、ぶん殴っていいか?」
「ダメよ。それと安心して?万福丸。誰にも教える気はないから」
「そっか。それなら、安心だな。って、ちょっと待って!?俺にも教えてくれないってこと?」
万福丸がそう言った瞬間、吉祥は手に持つ【理の歴史書】で、ばこーーーん!と万福丸の後頭部をぶん殴るのであった。
万福丸は頭を両手でおさえて、その場でうずくまることになる。
「おお。怖い怖いでゴザル。いやあ、貴女、意外と暴力的でゴザルな」
「貴女じゃなくて、吉祥って呼んでくれてかまわないわよ?邇邇芸さん?」
「ふむ。失礼したでゴザル。いやあ、あまり女子の名前を聞きたがるのは不埒な男だと想われては困ると想い、なかなかに聞けなかったでゴザル」
まあ、それもそうね。古来から男が女性の名を聞くのは求婚の証になるものね。特に帝ときたら、歌にするほどのロマンチストだし。貴女と呼ばれていたほうがマシだったかも?とちょっと後悔する吉祥である。
「さて、それがしが応えたのでゴザルから、今度はこちらが聞かせてもらうのでゴザル。何故に今更、九州3大勢力は手を取り合うことになったのでゴザル?一か月前ほどには戦を起こすくらいの仲だったでゴザルよ?」
「それは、【議論】をかわし、互いの誤解を解いたからだクマー。その【議論】の場で、邇邇芸さまの使いとして現れた、雉の鳴女が龍造寺家には草薙剣を、大友家には八咫鏡を手に入れろと言ってきたことが判明したのだクマー」
「それで失礼ながら、邇邇芸さまが我らをわざと相争わせようとしているのでは?と想い、休戦となったので候。何故に、このような戦が起きそうなことを我らに指示したので候?」
隆信と鍋島が逆に邇邇芸に説いただすのであった。
「ふむ。相争わせる気はなかったのでゴザルよ?互いの土地に侵入せねば、草薙剣と八咫鏡は手に入らないのでゴザル。それなら、【話し合い】で解決することにより、より【円満解決】に向かうと想っただけのことでゴザル」
「その口ぶりだと、数年前に3大勢力の会合で起きたことを知っているクマーね?邇邇芸さま。あれは、邇邇芸さまが仕組んだことと想って、間違いないのか?クマー」
隆信がそう邇邇芸に詰め寄る。だが、邇邇芸は、ははっ!と笑い
「まさか、そんなことが可能なわけがないのでゴザル。そもそも、きみたちが合一を果たした大神たちは、それがしの配下でもなんでもないのでゴザルよ?仲たがいさせたいのなら、信頼できる自分の配下を使うに決まっているのでゴザル」