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ー改変の章 6- 【理(ことわり)】

「フム。中々に筋が良いのである。さすがは貴様なのである」


 信長は波旬はじゅん合一ごういつを果たしたあと、第六天において、力の使い方を教わることになったのである。まずは単純な自分の身体能力をあげる方法について学ぶ。これは、自分の肉体の使い方を研究してきた信長にとっては修得するのに、さほど時間は要さなかったのである。


「うーん。この筋力アップは純粋に使える御業ですね。これ、通常の3倍の速度で身体を動かすことができますよ?今なら、未完成であった【神域に達する御業バージョン3】を放てそうな気がします」


「なんである?その変な名前の技は?」


「ええとですね。簡単に説明しますと、つっぱりを放つときに身体に回転を加えているのですよ。ただ、回転させているのではなく、地面を起点に、足、ひざ、太もも、腰、背中、肩、腕、そして手へと回転を重ねることにより、人間の本来持つ力を数十倍に引き上げているのです」


「はあああ?貴様、ひとの身である頃から、大神おおかみの力を手にいれようとしてきたのであるか?それは、天手力男神あめのたぢからおの得意技【はっけい】である。まさか、そんなことがひとの身でできはるがないのである」


「いやいやいや。訓練を積んだら、できるようになんったんですって。うーん。言っても理解できないでしょうから、ここは実際にやって見せたほうが早いですねえ?」


 信長はそう言うなり、自分の背丈はありそうな大岩の前に立つ。そして、軽く深呼吸をし


「神域に達する御業バージョン1です!」


 信長は地面を起点に、足、ひざ、太もも、腰、背中、肩、腕、そして手へと回転を重ねていく。そして、右手は大岩の表面にぶち当たる。


 その瞬間、大岩の上半分が3メートル後方に吹っ飛んでいくのであった。これに驚いたのは第六天魔王波旬だいろくてんまおうはじゅんである。


「おい、貴様。ふざけているのであるか!本当に【はっけい】を放つ馬鹿がどこにいるのであるか!」


 信長の脳内で波旬はじゅんが喚き散らす。


「えええ?やって見せなきゃ、波旬はじゅんくん、納得しないじゃないですか?だから、やって見せたまでですよ?」


「そう言うことではないのである!【改変された世界】の影響は、ここ第六天にも及んでいるのである!」


「うっわ。伊弉冉いざなみの力ってすごいんですね?だって、ここ、ひのもとの国じゃないですよ?第六天なんだから、波旬はじゅんくんの世界じゃないですか?」


「創造神の力を甘くみるな!である。伊弉冉いざなみの力は世界の法則自体を改変させているのである。わかりやすく言えば、あの世とこの世がつながっているのである!」


「うーん?そんなこと言われても、ぴんとこないんですが?もっと、わかりやすい説明を求めます」


 信長の要望に、思わず波旬はじゅんも、くっ!と唸らずにはいられなくなる。


「そもそも現世と死後の世界は、ニンゲンや神、そしてそれだけではなく、生きるもの全ては一度、死なねば行き来できない法則があったのである。それを改変したのが伊弉冉いざなみなのである。だからこそ、その力を恐れた伊弉諾いざなぎが黄泉から出れぬように天岩戸で、伊弉冉いざなみを封印したのである!」


 波旬はじゅんの説明に信長がふむふむと頭の中で頷くのである。


「で?それがどうかしたのですか?先生が天手力男神あめのたぢからおの【はっけい】を使うと何か影響が出るのですか?」


「この第六天もまた、ほかの世界と繋がったと言うことである!現世だけならまだしも、畜生界、餓鬼界、さらには神界にまでつながっているのである!」


「あれ?極楽浄土には繋がらないのですか?如来たちが住んでいる世界ですよね?」


「そもそもとして、浄土は生と死の法則から逸脱した世界なのである。あの世界に辿りつくのはイニシエの大神おおかみと言えども、不可能なのである。そもそもとして、禁忌に守られた世界なのである」


【禁忌に守られた世界】?また意味不明な言葉が出てきましたね?


「貴様が知る必要のない【ことわりの外】の話なのである。絶対に、その領域に手をだしてはいけないのである!」


「絶対と言われたら、絶対にやれよってことだと先生は想っているのですが?」


 き、貴様!と波旬はじゅんは想わず毒づきそうになる。だが、信長は膨大な気というか、力の発現を肌で感じ取り、波旬はじゅんの言葉をさえぎる。


「何か来ます!すごい力ですね!これ、このまま、ここに居たらまずいんじゃないですか?」


「くっ!やってきやがったのである。貴様、われの力を使って身体能力を最大限まで引き上げるのである!まともに奴の神気を喰らえば、いくらわれ合一ごういつした貴様とて、無傷では済まされないのである!」


 波旬はじゅんの言いに信長は鬼気迫るものを感じるのである。それゆえ、いつもなら減らず口を叩くのであるが、ここは素直に波旬はじゅんの言うことを聞き、急いで第六天魔王としての力を引き出せるだけ引き出すのである。


 次の瞬間であった。ドオオオオオオン!と言う何かが地面にぶち当たる音が周囲に響き渡るのである。


「オウオウオウ。波旬はじゅん、久しぶりでもうす!いやあ、かれこれ500年振りの再会でもうすかな?元気にしていたでもうすか?」


 なんでしょうか?この勝家かついえくん似の筋肉だるまは。まるで脳みそまで筋肉で出来上がっていそうなのですが?


「んんんー?あれあれーーー?確かに波旬はじゅんの神気を感じたと想ったのに、目の前に居るのはニンゲンなのでもうす。おい、お前。波旬はじゅんはどこに逃げたでもうす?」


「誰ですか?このひと。知性の欠片も感じられないんですけど?」


(そいつは天手力男神あめのたぢからおである!適当に言いくるめて、神界に帰ってもらうのである!)


「あのお。もしかして、あなたが天手力男神あめのたぢからおくんでしょうか?」


「オウオウオウ。そうでもうす。我輩こそが相撲を司る大神おおかみ天手力男神あめのたぢからおでもうす!」


「これは説明ありがとうございます。先生は第六天魔王信長です。以後、よろしくおねがいします」


「ガハハッ!よろしく頼むでもうす。ん?ちょっと待つでもうす。今、第六天魔王とか言わなかってでもうすか?」


「はい。そうですよ?前々から現世のほうでは名乗っては居たのですが、大神おおかみ相手に名乗るのはこれが2度目ですね。先生がこのたび、正式に新たな第六天魔王となった信長です」


 信長がニコニコとした顔つきで天手力男神あめのたぢからおに向かって、自分の右手を差し出す。天手力男神あめのたぢからおもまた、差し出された信長の右手に対して、己の右手を差し出すのである。


 そして、2人?いや、2柱は固い握手を結ぶことになる。


「いたたたたたたたたたたっ!この筋肉馬鹿!本気で先生の手を握りつぶそうとしてくるんですけど!」


「ガハハッ!大神おおかみ同士の挨拶でこれくらいの力を込めるのは普通のことでもうす。いやはや、新米の大神おおかみには少し、手厚い歓迎であったでもうすかな?第六天魔王のぶながくうううん?」


 目の前の筋肉だるまがにやついた顔で信長の顔をじろりと睨んでくる。


「上等ですね!先生、大神おおかみが相手と言えども、ここまで舐められたのは初めてですよ!ええっ、わかりました。先生、少し力を緩めすぎていましたね?さあ、ここからが本当の挨拶です!」

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