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ー神有の章41- 証(あかし)が示すモノ

 万福丸まんぷくまるが神気を発し、神力へと変換し、【ことわり】を口から発する。


【喰らう】


 万福丸まんぷくまるがそう声を口から出すと同時に、彼の両足を包み込むように銀色の脚絆きゃはんが具現化する。


 そして、万福丸まんぷくまるはさらに【ことわり】を口から発する。


【流す】


 すると、さきほどまではチョロチョロッチョロとしか出せていなかった水の量が明らかに増したのである。


「おおお。すごいのでごわす。これは、庭に水を撒く程度には役に立つのでごわす。これは便利でごわすなあ?」


「うーーーん。もっと、何かを破壊できるくらいの水量が具現化されると想っただけに残念ね?でも、これで水の勢いを増せば、攻撃にも使えるってことかしら?ちょっと、万福丸まんぷくまる?その辺の、ああ、あの石の灯篭が良いわね?あれに想いっきり、その水をぶち当ててくれるかしら?」


「ああ、わかったぜ。じゃあ、ちゃんと見ていてくれよ?俺の恰好良い雄姿を!その眼に焼き付けやがれ!」


 そんな口上は良いからさっさとやりなさいよと想う吉祥きっしょうであるが、もしかしたら本人のやる気次第で威力が上がるかもしれないので、そこは口に出さないのであった。


 万福丸まんぷくまるが神気を絞り込むように右手に集中していく。それと共に彼の右腕の手甲てっこうに浮かび上がっていた赤黒い神蝕しんしょくあかしが鋭く明滅し始めるのである。


 そして、水量はそのままに水流の勢いは増して行き、ついには石の灯篭を押し倒したのである。


 3柱は想わず、おおおと感嘆の声をあげてしまう。


「すごいわね。万福丸まんぷくまるの神気と神力に比例して、水量も水流の勢いも変わるのね。これ、すごい大発見よ?」


「ああ。俺も、最初はかわやで用を足したあとに手を洗う程度にしか、使い物がならないって想ってたけど、これなら、攻撃に使えそうだな?俺、もしかして、知らない間にすっごくパワーアップしてしまっちゃったのか?」


「ううむ。大神おおかみ同士の闘いには使えるレベルには達していないでごわすが、相手がびっくりする程度までには威力は上がっているのでごわす。要は使い方次第でごわすな。出来るなら自在に操れていれば、もっと、応用が効くのでごわすが、そこまで求めるのは贅沢なのかも知れないのでごわす」


「どうなのかしらね?万福丸まんぷくまるは無意識なのか意識的なのかはわからないけど、確かにあの時、自在に操っていたわよ?万福丸まんぷくまるの隠された能力が真に開花した時に、それが可能になるのかもよ?」


吉祥きっしょう、それはさすがに物語の読みすぎだろお?そんな、物語のようにある日突然、真なる力に目覚める方がおかしいって」


「まあ、それもそうね。【波多野はたの一人旅物語・全国漫遊編】を読みすぎた悪影響かしらね?あれは読んでて、心が湧き立つ想いだったわ?ぜひ、著者の波多野さんに会ったら、花押かおうをもらわないといけないわね」


吉祥きっしょうはそのシリーズ、好きだもんなあ?今は、【死国行脚編】だったっけ?あれ、どこまで刊行されるんだろうな?」


「できれば長く続いてほしいと想っているわ。たまに丹波たんばへ応援の手紙を書いているけど、残念ながら、返信がないのよね。ああ、一体、どんな豪胆で、筋肉まみれな肉体で書いているのか興味が湧くわ。一度で良いから直接、そのご尊顔を拝謁したいわね」


「おいどん、なんとなく結果が予想できるのでごわす。現実とは非情にむごいことが多いのでごわす。おいどん、少年少女の夢を壊したくないので、これ以上は口に出せないのでごわす」


「まあ、俺もふっつうのひとだと想ってんだよな。でも、そんなことを口走った日には、その辺の田んぼでゲコゲコ鳴いてるウシガエルを晩飯に提供されないからな」


 などと、よっしーと万福丸まんぷくまるが言っているのだが、その一切が夢想する吉祥きっしょうの耳には届かないのであった。


「さて。水を自在には操れるわけではないけど、使いようによっては何か出来そうな感じなのはわかったぜ。これは立派な収穫だなあ?」


「そうね。でも、やっぱり、砂漠のど真ん中に放り出された時のほうがよっぽど重宝しそうな気がしてならないわね。って、あれ?万福丸まんぷくまる、その右腕を視て!」


「ん?なんだ?また、俺の右腕がなにか粗相でもしたのか?って、えええ?」


 万福丸まんぷくまるは右腕の手甲てっこうをよくよく見ると、赤黒い神蝕しんしょくあかしが先ほどまでは、右手の人差し指の爪から肘あたりまであったのが、今では手首までにしか伸びていなかったのである。


「おいおいおい。これ、一体、どうなってるんだ?この不気味な神蝕しんしょくあかしが、その主張をかなり抑えめにしてんだけど?何か、俺、こいつの機嫌が悪くなるようなことでもしたっけ?」


 こいつと言う呼び方もどうなのかしら?と想う吉祥きっしょうであったが、そこは口にしない。


「推測の話になるのだけれど、もしかして、神力を使い過ぎたと言う印なのかもよ?ねえ、万福丸まんぷくまる。試しに、もう一度、石の灯篭を押し倒したほどの水を具現化してもらえる?」


「ああ、わかったぜ!出でよ、俺の水龍!そして、全てを薙ぎ払え!」


 だから、そんなことをいちいち口に出さなくていいわよと想う吉祥きっしょうである。だが、万福丸まんぷくまるの言葉の勢いとは裏腹に、水が全く具現化されないのである。


「あ、あれ?今度は水が全然、出せないんだけど?なんなんだ、一体。もしかして、もう品切れなのか?」


 万福丸まんぷくまるがおかしいなあと言う顔付きで右腕をぶんぶんと振り回す。だが、それでも水は具現化されることがなかったのであった。


「うーーーん。やっぱり、僕の推測が正しかったと言う証明になるわね。万福丸まんぷくまる。その右腕、いえ、いまは右手首ね。それは、他の大神おおかみの神力を【喰らった】量を示しているのだと想うわ?だから、それを全部、吐き出した今は、赤黒い神蝕しんしょくあかしが手首までしか視えないと推測できるわね」


「えええ?じゃあ、俺、もう水龍をバババッ!って具現化できないわけなのか?なんだよ。せっかくパワーアップしたって言うのに、その神力を全部使っちまったら、意味ないじゃねえか、ちぇっ」


「いいえ?そう悲観することは無いと想うわよ?これも推測の話で申し訳ないんだけど、そもそもとして、万福丸まんぷくまるが、よっしーさんの水を【喰らった】から、万福丸まんぷくまるが水を具現化できたわけよ。だから、もう1度、よっしーさんの神力を万福丸まんぷくまるが【喰らえ】ば、水を具現化するための神力を蓄えられる可能性があるのよ?」


「おお。なるほど。よくわからないけど、とりあえず、よっしーの神力を【喰らえ】ばいいわけか。いやあ。せっかくのパワーアップが意味ないのかと焦ったぜ!」


「でも、ひとつ問題点があるのよ。よっしーさんの神力が万福丸まんぷくまるに【喰われた】場合、よっしーさんは果たして、どうなってしまうのか。それがわからないと、おいそれと、よっしーさんの神力を【喰らう】ことは危険だわ?」


「確かに、それは問題だなあ?よっしーは、俺に水を喰われた時は、何か身体に異変は起きなかったわけ?何か、身体の力が抜けたとか、肉体の一部が破損したとかさあ?」

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