ー神有の章25- 【通心】と【雷電話】
「ちょっ、ちょっと!よっしーさん、今の真っ黒い雲は何なのかしら?誰かと話しているように見えたのけれど!?」
吉祥が喰いかかるように、よっしーに尋ねるのである。よっしーは、あっと口からこぼし
「ああ、説明も何もなく、さっきのを視たら、それは驚くの無理がないのでごわす。あれは【通心】なのでごわす。で、さきほど、黒い雲が出てきたでごわすが、その【通心】を行うためのモノなのでごわす。道雪はさっきの黒い雲のことを【雷電話】と呼んでいるのでごわす」
【通心】?【雷電話】?どういった神力なの?よっしーさんの言っていることがよくわからないわ?と想う吉祥である。
「ああ。簡単に説明するとでごわすが、【雷電話】を使えば、遠く離れた地に居る大神と会話ができるのでごわす」
「ちょっと!そんな便利なものがあったら、とんでもないことになるのよ!?よっしーさん、自分が言っていることのすごさがわかってるの?」
しかし、よっしーは、きょとんとした顔つきで、何がでごわす?と言い出す始末である。吉祥は、はあああと深いため息をつく。こんな便利なモノ、使いようによっては、この世界そのものをひっくり返すことになりかねない代物であることにまるで気付いていない。よっしーの鈍さに頭が痛くなる想いになる吉祥である。
「まあ、それはいいわ。深く考えるのはやめとくわ。とりあえず、その【雷電話】がほかの大神と【通心】ができる。それだけ理解しておくことにするわ」
「ん?なんだ、吉祥。その含みのある言い方」
万福丸がそう聞いてくるがあえて無視を決め込むことにする吉祥である。
「でも、道雪が調べてくれるのはありがたい話だわ。連絡を取ってくれてありがとうね。よっしーさん。でも、その【雷電話】は、おいそれと他神には見せないほうがいいわよ?」
「そうなのでごわすか?便利なのでごわすがなあ?」
その便利さがダメなのよ!とツッコミを入れたくなるが、ここはなんとか抑えておく吉祥である。
「なあ。その【雷電話】って、一体、どういった仕組みなんだ?よっしー?」
「これは、道雪が、彼と合一を果たした大神の分御霊なのでごわすよ。その自分の一部と言って良いものを【雷電話】へと変えたのでごわすよ」
「ん?よっしーさん。その【雷電話】ってそもそもが道雪の身体、いえ、魂の一部を元にしているのね?でも、分御霊をしたとしても、大神とその大神本体との分御霊同士でなければ、繋がりはできないわよね?それに分御霊んは色々と制限が多いわ。分御霊自体、そんな都合の良い存在でもないし」
「ふむっ。原理はよくわからないのでごわす。しかし、道雪は雷は神鳴りと言い換えられる以上は声を乗せられるのでないかと、やってみたら、なんと上手くいったのでごわす。それで、分御霊を行い、その分御霊を元にして【雷電話】をふたつ用意したと言うわけなのでごわす」
雷ね。と言うことは、道雪は雷に関する大神と合一を果たしたと推測できるわね?でも、いくら雷は神鳴りと言えども、それに声を乗せてみようと発想するところがすごいわ?うーーーん。とんでもない御業だわ。と吉祥は想う。
まあ、分御霊を行わなければ【雷電話】は生成できないみたいだから、悪用されることはなさそうね。心配しすぎて損した気分よ。飲み直しましょう。
吉祥は、そう想い、自分の盃にお酒を注ごうとすると、万福丸がとっくりを右手に持って、吉祥のほうに向けてくるのであった。吉祥は、少し軽めにふうううとため息をつき
「手酌なんかしてても、お酒は美味しくならないわね。万福丸、ありがとう。ありがたくいただくわ?」
「どういたしまして。さて、結局、今のところ、龍造寺家がなんで博多の地を狙っている理由がいまいちわからないのはしょうがないとして、俺たち、どうするんだ?明日にでも、龍造寺家にカチコミに行くのか?」
「うーーーん。そうね。邇邇芸さまの言っていた件の大神がいつ九州にやってくるかわからない現状、のんびり構えている時間があるかも怪しいものね?でも、龍造寺家と大友家が戦をやっているところにいきなり飛び込むのもねえ?うーーーん」
「大友家の旗色が悪いと言っても、1日2日で大友家が負けるわけではないでごわす。道雪も参加している戦でごわすから、決着もつかずに龍造寺家は一旦、下がることになると想うのでごわす」
「じゃあ、その戦が終わって、龍造寺家が撤退していくところを襲うか?それなら、兵も疲れ切っていて、俺たちを妨害できるほど、力も発揮できないだろうしさ?」
「万福丸にしては良い案ね?でも、どれくらいで龍造寺家は撤退を開始するのかしら?それいかんでは、結構、時間を取られることになるわよ?」
「ふむっ。まあ、少なくとも2カ月は続くはずでごわす。島津家が大友家に加勢すれば形勢不利とみて、退くのは早くなると想うでごわす」
「じゃあ、すぐにでも大友家に加勢しようぜ?よっしー」
「うーむ。そうは言っても、ここ、内城は九州の南端なのでもうす。大友家に加勢しようにも、今から軍をまとめて、博多の地まで到達するだけでも2週間はかかることでごわす。まあ、その間に戦が終わるわけではないでごわすが」
よっしーが歯切れ悪く、そう言うのである。
「島津家が軍を集めていると言う情報を手に入れた龍造寺家が一旦、退く可能性がでるわけね?それで、博多の地に向かったところで、無駄足になりかねないと、よっしーは危惧しているとこかしら?」
「きっちゃんの言う通りなのでごわす。まあ、どちらにしろ、島津家が黙って、龍造寺家と大友家の闘いを静観していれば、大友家と島津家の関係は悪化するのでごわす。なんとか、両方に矛を収めてもらいたいと想っていたでごわすが、事ここに至っては動かざるえないでごわすなあ」
「心中、お察しするわ、よっしーさん。でも、殴ってくる相手とは交渉の席にはつけないの。これだけは、はっきりしているわ。どうなるかは予断を許さないけど、やることは決まっているわ。龍造寺家の頭を一発ぶん殴ってやりましょう?」
「まあ、俺は馬鹿だからむずかしいことはわからないけど、考えるよりまずは行動しろ。だよな?」
「そうね。色々、考察を積み重ねてきたけど、結局、やってみないとわからないことが多いものね。天照さまにも言われたことだわ。僕たちも力になってみせますわ?よっしーさん」
万福丸と吉祥の言いを聞いた、よっしーは、彼ら2柱に深々と頭を下げる。
「わかったのでごわす。兵を招集するのに3日。そして、それを含みで博多まで2週間と行ったところでごわす。ぷくちゃん、きっちゃん。九州の動乱に決着をつけるために力を、いや、神力を貸してほしいのでごわす!」
「ああ、任せといてくれ、よっしー!俺が龍造寺隆信と鍋島直茂をぶっ飛ばしてやるぜ!」