ー神有の章103- あと1週間
吉祥が天照に女からもしろと言われて、何をしたらいいのかしら?と疑問に想っているところをさえぎるように邇邇芸が発言する。
「むむ!?おばば様、今なんと?男女のずっ魂ばっ魂でゴザルか?では、尾羽の直剣から神力を吸うだけではなく、自らも吸われることが肝要と言いたいわけでゴザルな?」
「その通りじゃ。想えば、素戔嗚は南蛮語で言う所のプレイボーイなのじゃ。あやつのいちもつは果てることを知らぬのかというくらいにずっ魂ばっ魂しておったのじゃ。ならば、あやつが尾羽の直剣を使いこなせていたのも納得といったところなのじゃ」
「な、なるほどなのでゴザル。さすが、根の国の百襲姫すら口説き落とし、嫁にするだけは有るのでゴザル、素戔嗚叔父上は。ううむ。それがしの今のずっ魂ばっ魂の腕前では、尾羽の直剣をうまく使いこなす自信がなくなってきたのでゴザルよ!?」
「そこは要訓練といきたいところじゃが、生憎、期日まで1週間ときているのじゃ。博多の地の民を安全のために避難を開始させている今、延期は難しいところなのじゃ」
八岐大蛇を無理やり復活させて、博多の地におびき寄せる策を用いるため、博多の地の住人には避難勧告が2週間前から出されていた。八岐大蛇をうまく誘導できれば博多の地の中心部で戦うことはないだろうが、そうでなければ、そこに住むニンゲンたちに多大なる被害が出ることも考えられる。
「おい。宗麟、博多の地のニンゲンたちの避難はどれほど進んでいるのじゃ?」
「道雪からの報告では3割といったところなのでしゅ。壇ノ浦に近い地域に住む住人はすでに避難を完了しているでしゅ。でしゅが、あと1週間と考えれば、5割がいいところでしゅね。博多の地の東半分といったところでしゅかね」
「そうかじゃ。まあ、あの地に住む5万近くの半数も避難できれば上等といったところなのじゃ。周辺の村々はどうなっているのじゃ?」
「そちらもやはり、壇ノ浦直近のところの避難は完了しているそうなのでしゅ。ただ、そこより少し離れた土地の住民たちは産まれた土地より離れたくないのと、秋の収穫時期とかぶってしまい、遅々として避難が進んでいないのでしゅ」
宗麟の報告を聞き、天照はふうむと息をつく。
「言われてみれば、米の収穫期なのを失念していたのじゃ。9月15日が決行日ゆえに、米を収穫し、さらにそれを運び出すとなれば、ギリギリもいいところなのじゃ。ちょっと、稲刈りの手伝いでもしてきたほうが良さそうなのじゃ」
「ん?草薙剣バージョン2の神力を使うのか?きれいにぱっかーんと縦に真っ二つに割れているけど、大丈夫なのか?」
万福丸が怪訝な表情を浮かべて、天照に問うのである。
「ふむ。稲刈り程度なら支障はないのじゃ。そこはさすが草薙剣と言われるだけはあるのじゃ。アレを叩き切ろうと想わぬ限りは、草薙剣バージョン2が粉々に砕け散る心配はないはずじゃ」
「ないはずね。なんだか、不安感が押し寄せてきそうな気がするけど、天照さまが大丈夫というのであれば、大丈夫なのでしょ。でも、天照さまが稲刈りに出向くと、邇邇芸さまに助言を与えるモノがいなくなるわね?」
「吉祥よ。邇邇芸は尾羽の直剣を扱うためのコツを掴んだようなのじゃ。あとは小子との仲を深めることだけじゃ。さすれば、意のままに尾羽の直剣を操れるようになるはずじゃ」
「吸うだけでなく、吸われるでゴザルな。わかったのでゴザル。残り1週間、なんとか、してみるのでゴザル!」
「その意気じゃ、邇邇芸よ。まあ、ぶっちゃけ、おぬしと小子が直接、三日三晩、ずっ魂ばっ魂したほうが、早い気もするのじゃが、そんなことをすれば、婦女暴行で邇邇芸が番所に連れていかれるのは火を視るより明らかなのじゃ」
「ふえええー、怖いよー。あたし、邇邇芸さまに初めてを無理やり奪われちゃうよー!」
「小子ちゃん?もし、邇邇芸さまが寝所に入ってきそうになったら、誾千代さんを呼ぶといいわよ?誾千代さんは宗茂さんをコテンパンにするほどの鞭使いみたいだし、邇邇芸さまがいくら大神といえども、コテンパンにできるはずだわ?」
「吉祥ちゃん、それ、本当ー?あたし、邇邇芸さまとひとつ屋根の下で今は暮らしているけど、邇邇芸さまに襲われることはないー?」
「誾千代さんには僕からもお願いしておくわよ?だから、小子ちゃんは安心してね?」
涙眼で瞳をウルウルさせている小子の頭をよしよしと優しく右手で撫でる吉祥であった。
「な、なんだか、それがし、えらく不信感を募らされているのでゴザル。小子殿の身を直接どうにかしようとする気はないのでゴザルのに、吉祥殿と、小子殿からまるで汚物でも見ているようかの視線を喰らうのでゴザル」
「まあ、好きでもない男に身体を自由に弄ばれそうになるってんなら、そりゃ汚物でも視るような視線を飛ばされてもしょうがないんじゃね?」
「でも、その視線がこれまた心をくすぐられるのでしゅ。人妻を手籠めにする時に、あの視線を突きつきけられたら、ぼくちんのいちもつがビッキイ!となってしまうのでしゅ」
「おーーーい!おまわりさん、ここに婦女暴行の犯人がいるのでゴザルううう!」
「邇邇芸さま!や、やめるのでしゅ!実際に婦女暴行をしているわけではないのでしゅ!プレイの一環として、わざと汚物でも視るかのような視線を人妻に突きつけてもらっているだけでしゅ!おまわりさんを呼ぶのはやめてほしいのでしゅ!」
宗麟が通報されてたまるものかとあたふたとあわてながら弁明を開始するのであった。
「男性陣は何をアホなことを言い合っておるのじゃ。さて、小子よ。それほど怯えなくてもいいのじゃ。おぬしの身の代わりに、おぬしが具現化した尾羽の直剣を邇邇芸が抱き枕が如きに、寝所に持ち込むだけじゃ。少し、身体をついばまれる感触で、身体が火照ってしまうかもじゃが、直接、その肌に邇邇芸の汚い手が触るわけではないから安心するのじゃ」
「天照さま、そうなのー?なら、少しだけ安心だねー。身体をついばまれるような感触は慣れていけばなんとかなるだけだしー。邇邇芸さまー?あんまり、尾羽の直剣にひどいことしないでねー?」
「あれ?この流れ的に邇邇芸さまが寝所に連れ込むのは、小子ちゃんじゃなくて、尾羽の直剣の方なのか?うっわ。なんか、邇邇芸さまのいちもつがズタボロになりそうな気がしてきたぜ?」
「そんな、裸で尾羽の直剣に抱き着くわけじゃないと想うわよ?」
とそこまで吉祥が言ったあと、少し、うーーーんと唸り
「邇邇芸さまって、天照さまの孫なだけあって裸属なのかしら?それなら、邇邇芸さまのいちもつがズタボロになるのは回避不可能ね?」
「ちょっと、待つでゴザル!?それがしをおばば様のような裸属と一緒にするのはやめてほしいでゴザルよ!?」