ー神有の章94- 女心は複雑
「口説く!?小子殿を口説くでゴザルか!?ちょっと待ってほしいでゴザルよ!?」
邇邇芸が尾羽の直剣の神力により、グルングルンと大空を舞いながら思考に入るのである。
「うーん。あたし、邇邇芸さまは趣味じゃないのよねー。いくら、年上が好きでも5歳以内までかなー?」
「そういえば、小子ちゃんと邇邇芸さまというか、その肉体である島津義久さまは35歳くらよね。20歳差は親子ほどに離れているから、無理ね?」
「そうそうー。うちのお父さんとお母さんは晩婚だったから、今、40歳くらいだけど、親と変わらない年齢のおじさんに口説かれても、嫌かなー?」
小子と吉祥がそう言いあうのであった。
「というわけだから、邇邇芸さま。小子ちゃんを口説くのは諦めてくれー!」
万福丸が容赦なく、邇邇芸にとどめを刺しに行く。
「それがしに救いの手は無いのでゴザルううう!?」
邇邇芸はそのまま、グルングルンと大空を舞い続けることになる。
「何をやっているのじゃ。20歳差くらい、克服する気はないのか?なのじゃ。イニシエの大神ともなれば、夫婦の年齢が100歳差くらい当たり前になるのじゃ。木花咲耶姫を嫁にした時のことを想い出すのじゃ!」
天照が、そう、邇邇芸に助言する。だが、邇邇芸は
「あの時は木花咲耶姫が、それがしにひと目惚れしてくれていたので、なんとかなったのでゴザルううう!小子殿はどうやら、それがしに興味がなさそうなのでゴザルううう!」
「って、邇邇芸さまが言っているけど、小子ちゃんとしては、まったく、邇邇芸さまには興味がないわけ?」
「うーーーん。歳の差を考慮しないで、興味があるかってことー?邇邇芸さまは顔色に精気を感じないところが、ダメかなー?」
「なるほどね。確かに、死にかけの義久さんと合一を果たしてしまったからか、顔色に精気をあまり感じないわね?邇邇芸さまー?まずは顔色を良くしたほうが良いらしいわよー?」
吉祥がそう邇邇芸に助言する。
「か、顔色でゴザルか!?ちょっと、身体能力向上の御業で、義久殿の顔色を良くしてみるでゴザルううう!」
身体能力向上の御業って、なかなかに便利なのね?まさか、体調の悪そうな顔色まで変えれるとはと吉祥は想うのである。
「おお。すげえ!身体能力向上の御業の無駄使いを見せつけられているぜ!どんどん、邇邇芸さまの顔色が良くなっていってやがる!しかも、にっこりと笑顔だ!」
「万福丸くん。これはなかなかに高得点だよねー。やっぱり、体調が悪そうなひとを視ていると、こっちも心がざわつくもんねー?」
邇邇芸が喜色ばって、歯を見せながらニコニコと笑いながら、グルングルンと大空を舞うのであった。
「ハハハッ!次は何でゴザル?小子殿が気に入る男に変わって見せるのでゴザルよおおお!?」
「じゃあー。次は包容力を見せてほしいところかなー?あたしって、わがままなところがあるから、そんな、あたしの全てを許してくれるって気持ちを見せてほしいー」
「これはなかなかに難しい注文がきたわね。包容力なんて、見せようと想って、見せれるものじゃないわよ?」
「しかし、吉祥よ。やはり、男は包容力じゃな。おい、邇邇芸よ。包容力を見せるのじゃ!」
「ほ、包容力でゴザルか!?この状態でどうやって見せれば良いのでゴザル!?」
「俺も男として包容力を示したいと常々、想ってはいるけど、なかなかに難しいよな。吉祥は俺に包容力って感じてるのか?」
「さあ?そこはノーコメントよ」
「むふふー。吉祥ちゃんと万福丸くんはラブラブで羨ましいなー。万福丸くんは吉祥ちゃんだけには優しいから、もっと大人になったら、他の女性が、万福丸くんにちょっかいを出してくるかもねー?」
「だ、そうよ?万福丸。良かったわね?僕より良い女がいたら、乗り換えてくれていいわよ?」
「ちょっと待ってくれよ!俺はいつでもいかなるときでも、病める時も、年老いた時も、吉祥一筋だからな!?俺にとって、吉祥以上に良い女なんて存在しないからな!」
「というわけじゃ。おーい、邇邇芸よ。これくらい、ひとりの女を愛するくらいの気概を見せるのが包容力へと繋がるわけじゃ。木花咲耶姫より、小子を愛していると示してみせるのじゃ!」
「こ、木花咲耶姫よりも小子殿を愛していると示せというのでゴザルか!?木花咲耶姫は嫉妬深いのでゴザルよ!?いくら、尾羽の直剣を使いこなすためとは言え、小子殿に愛の言葉をささやけば、それがし、帰る家を失くしてしまうのでゴザルよ!?」
「なあ、吉祥。そもそもとして、妻子持ちの男が14歳の娘を口説くのって、ただの犯罪だよな?」
「それもそうね。でも、仲の良いお友達として付き合うって言うのなら、ぎりぎり犯罪よ?軽犯罪ですむ程度で収めれば、僕としてはアウトね」
「どっちにしろ、吉祥殿の基準ではアウトなのでゴザルううう!」
邇邇芸は小子を口説くのを諦めかけた時であった。
「邇邇芸さま!男というモノはハーレムを築きたいと常々、想うものでしゅ!ぼくちんなんか、人妻に手を出すほどのハーレム好きなのでしゅ!邇邇芸さまも、ぼくちんを見習うのでしゅ!妻子持ちであることを恥じる必要はないのでしゅ!」
大友宗麟が、ハーレム形成を熱く語りだすのである。
「大名となれば、妾の3人や4人、当たり前の生活になるのでしゅ!しかし、ハーレムにおいて、大切なのは、きみが1番大切なんでしゅ。きみがいなければ、ぼくちんは生きていけないでしゅと、全員に言うことなのでしゅ!」
「おおお!宗麟殿。今、初めて、それがし、宗麟殿が立派に視えるのでゴザル!そうでゴザルよ。全ての女性を平等に愛することこそが、肝心なのでゴザル!」
「とか、宗麟さんと邇邇芸さまが言っているけど、すっげえクズ発言だよな。俺、この2人をぶん殴ったほうが良いのかな?」
「と想うでしょ?でもね?万福丸、よく聞いて?女心は複雑なのよ。ハーレムを形成されたとしても、貴女が一番なのですよ?って耳元でささやかれたら、コロッと騙されちゃう生き物なのよ?」
「そうだねー。うちのお父さんも、2人の女性と同時に結婚したもんねー。なんで、こんなろくでなしと結婚したのー?ってお母さんたちに聞いたら、ろくでなしだから、放っておけなかったのよー?って返されちゃったしー」
「大名とか偉い武士の家なら、わかるけど、小子ちゃんのお父さんは叩きあげの元農民の出って話だものね?あたしのお母さんとも、小子ちゃんのお父さんと友達付き合いをしていたみたいだけど、あれほどの馬鹿はいないもんだっしーって、呆れ半分、感心半分で言っていたものだわ?」
「馬鹿は一筋じゃ。その一筋さに小子の母親たちは惚れこんだと考えられるのじゃ。邇邇芸は頭が回りすぎて、女からは小賢しく視えるのじゃ。そこがマイナスなのじゃ」