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隠れ少女  作者: 未知風
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1章 少女

「もういいかい?」

「まーだだよ?」



 私たちはこの頃まだ知らない。私たちが成長すると共に、あの悲劇が復讐に変化することを。

 部屋が広々としている場所で大人になった同級生たちと共に俺はいる。司会が立つ所には『小学校の同窓会』という文字が書かれていた。文字通りこの日は小学校の同窓会だった。


「おーい、藤谷」


 声がする方を見る。大柄のショートヘアーの男がいた。名前は杉田洋一。彼の周りには最も仲が良かった男女の友人たちがテーブルを囲みながら腰をおろしていた。


「よう……」

「相変わらず声が小さめだな。それもかくれんぼの天才と言われた作法なのか」

「やめてあげなさいよ、バカ」


 私をかばってそう言うのは彼の横に座ってる島崎実架さん。いつもロングヘアーである。同窓会のためスーツを履いているが、子供のころはジャージかジーパンだった。スカートを履いたところを見たことがない。人が何か悪いことをすると怒鳴って暴力を振るう。彼女を"正義の凶暴女"と呼んだりする。しかし今はまだ冷静である。大人になったからか。


「バカじゃない……」

「まったく昔からあんたは彼に挑戦するライバル精神があるわよね」

「そうそう」

「そしていつも負けるのよね」

「そうそう……って、おい」

「何よ、本当のことでしょ?じゃあ、昔みたいにジャンケン三連発やってみなさい。どうせ負けるんだから」

「やったるぞ。最初はグー、ジャンケンポイ……ホイ……ホイ……ぐはっ」


 彼の言葉に合わせてグー、チョキ、グーとリズミカルに合わせて出す。そしてすべて勝つ。


「ほら」

「ふふふ」


 その笑い声は彼の前に座っている坊主頭だった。名は霜村亮平。なぜか額の真ん中にほくろが三つ「∴」並んでいることから大仏と呼ばれている。


「おお、やってるね」


 襖の方を見ると明るい表情で私たちを見つめる女性がいた。彼女の名前は川島紗季さん。黒髪のポニーテールで瞳がなぜか赤い女性だった。子供のころから目が赤く、親も外国人ではないし別に変った事情もない。カラーコンタクトもはめてない。この目と髪型が彼女の昔からの特徴だった。

 彼女は私たちの方へ進んでいき大仏の隣に腰を掛ける。私にとって凶暴女の隣に座らせるのは遠慮させたい席だったのでそこに私は座っている。

 しかしそんなことよりも私は彼女が入ってきた襖を見つめていた。彼女はそんな私に気が付いたのだろう。話しかけてくる。


「どうしたの?そんな襖なんか見つめちゃって」

「……お前、子どもいるのか?」

「はぁ?何よ、急に」

「だって、あの襖に……」


 私は襖を指で示して言ったが、誰もいなかった。でも、いたんだ。彼女の後ろで後ろ向きに立っている、黒髪のショートカットの少女が白いワンピースを着て裸足で立っていたんだ。


「何よ、何もいないんじゃない。それに私は独身よ。子供なんて夢のまたその夢の話よ。だいたい誰かさんのせいでね……」

「そうだったな。悪いな。同窓会で再会したのに空気を壊してしまって……」

「そうでもないみたいよ、周りのバカどもにとっては……」


 少し苛立ちながら川島さんは言う。周りを見たら前にいる大仏たち二人が口笛を吹いていた。


「初恋気分が思い出しちゃったかな?」


 島崎さんが私たちをそう言って茶化す。彼女の言うとおり、川島さんは私にとって初恋相手だった。彼女も同じった。だから彼女は島崎さんの言葉を聞いて赤面した。


「いや、だからいたんだって」

「小声だから幽霊が集まったんじゃない?」


 杉田もさらに茶化す。


「それは断じて違います。それに幽霊だったら私を見て逃げるでしょう?」


 大仏がかばうかのようにそう言った。


「そうだったな」


 彼の言葉に杉田は納得したようだった。

 私たちはこのようにして再会した。そして司会者とともに楽しい宴が始まるよう……だった。

 私たちはしばらく酒を飲みながら世間話とともに小学校卒業後何をしてたか、について話していた。

 私たちは小学校を卒業した後、別々の学校に旅立った。川島さんと私と大仏は違う学校ではあるが私立の学校に行き、他二人もそれぞれ異なった公立の学校へ行った。特徴でなんとなく納得がいく学校生活をみんなしていたようだ。

 また、大仏は僧へ、杉田はサラリーマン、川島さんは保育士。意外と思ったのは島崎さんだった。なぜなら凶暴な性格の彼女が彼女は看護師になっていたからだ。

 彼女の職業に反応して茶化す奴がいる。杉田だった。彼は見事に頭を叩かれ、激しい頭痛によりほんの少しだけ太もものズボンを濡らしていた。


「注射器など必要以上に刺しまくりそうで怖い」と口にした彼が悪いのである。彼らはこのようにして大人に変わっていったのだった。


「……そんで藤谷は何になったの?」


 私はあることを言おうとしたがやめて質問に答えた。だが、やめたほうも質問の答えではある。


「会社名はあえて言わないけど、商品を企画する……」


 話す言葉を止めてしまった。私は子供の笑い声が聞こえた。それと共に子供の声以外周りの音が聞こえなくなった。


「ねぇ、正也くん。みんなと一緒に……」


 明るい声で聞いたことがある声だった。どこか懐かしく寂しい声だった。


「おい、大丈夫か?」


 その野太い声と共に大仏の大きい手に肩を掴まれた。それによって周りの音が聞こえた。


「大丈夫。悪いけど俺、お手洗い行かせてもらうよ」


 そう言って立ち上がったら体がよろけた。


「おい、本当に大丈夫なのか?」

「あぁ、いつものことだ」


 そうだ、私はただ酒に酔ってるだけなんだ。幽霊なんているわけないじゃないか。そう願いたかった。


 私は便所を済ませ、手を洗う。手をゆすぎ蛇口を回した時だった。誰もいないはずなのに急に隣の水道から水が流れ始める。私はなんとなくそちらに行って前の蛇口も回して止めた。その時無意識にさっき立っていた前の鏡を見てしまった。白いワンピースを着たさっきの少女が歩いていた後ろ姿が見えた気がした。しかし私は何もなかったかのようにその場を出て廊下を歩いて行ったのである。


 私は彼らのいる席に戻ってきた。なぜか紗季が結んでいたゴムバンドを外していた。


「よかった。平気みたいだったわね」

「あぁ、悪いな。紗季」

「ちょっ……ちょっと下の名前で呼ばないでよ。……っていうかあんた、顔青ざめてるよ」


あんまり言わないほうがいいとは思っていたが、酔っていたせいでつい口に出してしまった。


「お前ら、幽霊って信じるか?」

「はぁ?お前、そういう映像見すぎじゃねえのか?」


杉田が答える。そういうのも無理はない。


「どちらかていうとそういうのを考えるほうだよ」


 だからさっきこいつの質問に答えるのをやめたんだ。小説家になって執筆し始めてるって言ったらからかわれるからだ。


「そっか。じゃあ、辛い思いからの幽霊出現って奴か?」

「ねぇ、この話で何だけどさ……」


 こう話を持ちかけたのは島崎さんだった。


「おう、どうした?」

「この後いつもの場所に行ってかくれんぼしない?」

「いつもの場所って?」

「子供のころ、遊んでたじゃん。あの神社」

「あぁ。あそこか。そういや俺ら急にあそこで……」


 彼女の言葉に返していた杉田の前で水をこぼす者がいた。川島さんだった。


「ごめんなさい。でも今からなの?」


 彼女は謝って聞く。私も同意見だった。


「あら、ウサギちゃんは怖いのかしら?」


 白いウサギが赤目をしいることから紗季のことを初めて会ったときから彼女はそう呼んでいる。


「そのあだ名はもうやめて。それに怖くないから」

「あらそう。ずいぶんおびえたような顔していると思ったのに」


杉田は真剣な表情でこう言う。


「おい、言い過ぎだぞ。お前は酔い過ぎなんだ。それに何かあれば大仏がいるんだしな。そうだろ、大仏?」

「えっ……あっ、はい。怪しいものが出たら駆除いたします」

「お前も行くよな、かくれんぼの名人だしな」


私はさっきまでの出来事で怖くなっていた。しかしこいつからの挑戦状は必ず受けてやると心に誓っていた。だから私はこう告げた。


「もちろんだ」


それを聞いた川島さんがこう言う。


「あんたが行くなら私も行くわ」

「そうなるわね、ウサギちゃん」

「その名で呼ぶなって言ったでしょ?」


 島崎さんとのやり取りで彼女は大丈夫そうだった。私はこの時、もう一度全員の顔を確認しておくべきだった。まさか私以外にもあんな目になるとは……。


 私たちは車に乗っている。大仏が運転していた。酒は一切飲まなかったらしい。助手席には杉田がいてその他の私たちは後ろの座席にいる。

 隣に座っている紗季に話しかける。急に初恋の時に告白みたいに恥ずかしさが出たが意地で堪える。


「本当に平気なの」

「……怖いっていうわけないでしょ。子供じゃないんだし。それに……」

「それになんだ?」

「なんでもない」


 彼女がそう言った時だった。ラジオから雑音が乱れる。


(…ザザザ…ま……ザザ…って…た……ザザザ…よ…ザザザ…おか……ザ…えり…プツン)


 そして元に戻った。雑音の部分を抜かして読み上げたらこうなる。


『まってたよ。おかえり』


 声の主はさっきの同窓会で聞いた女の子のようだ。だがその言葉が意味しているは分からない。

 俺たちを待っていたのかは知らないが、自分にしか聞こえなかったことにしておこう。そう思ったが横を見てそれはできなかった。紗季が泣いていたのである。


「さっきのなに?」


 そう涙声で言う彼女に対して彼女の隣に座る島崎さんはこう告げる。


「ラジオの嫌がらせか何かじゃないかな?」

「それならいいけど。もし何かあったら……」


 運転席から大仏が言う。


「当り前だろう。女を守るのは男の使命なんだから」


 頼もしい言葉だと私は心の中でつぶやいた。あとでこのつぶやきが後悔に変わるとは思ってなかった。


「ありがとうね、大仏君」


 私は彼女にあえて勇気づける言葉を言う。


「俺がいるから大丈夫だ。だから泣くな」

「かっこいいことを言って私を慰めてる気なの。馬鹿じゃないの」

「馬鹿じゃない、アホだ。そこ間違えるな」

「訳が分からない。でもありがとう」


 俺は彼女の頭をなでるつもりで触れた。無洗米を手に取りながらこぼしていくように彼女の髪はさらさらしていた。だが彼女が嫌な顔をしていたのでやめた。


しばらくして目的地に着いた。そして鳥居の前で車を止めた。

 俺らは二十段の階段を駆け上がり次の鳥居へと立つと木々に囲まれて神社の敷地がそこに広がっていた。そしてお賽銭の前で立つ。

 寒い風が吹きあがり落ち葉が舞う。


「久しぶりに戻ってきたわね」

「あぁ。ところで大仏。何やってるんだ」



 大仏は何かの儀式を始めている。神社に置かれた木魚をたたいたり鈴の棒を振ったりしている。人形の紙を渡されて全身をなで破ってこのライターの火にあぶれと言われたので指示に従った。そして彼が言うには儀式は終わった。


「これで大丈夫だと思う。……たぶん」

「たぶんっててなんだよ」

「実はお前らに言おうと思っていたんだけど、俺、まだ僧の卵なんだ」

「えっ?じゃあ、今までの行為や言葉は?」


私がそう聞く。


「すまん。全部俺のノリだ」

「まぁ、いいじゃない。まだ何も起きてないんだから。まぁ、あのラジオはあったけど」


そうか、みんなは見てなかったんだよな。あの子のことを。


「まぁ、いいや。儀式が済んだんだしじゃんけんでもしましょうじゃないか?」


杉田が言う。

 私はどうしても疑問があることがある。こいつのあだ名を思い出せないことだ。

 こうしてじゃんけんをすることになった。みんなじゃんけんの姿勢になりこぶしを出す。

 おや、おかしいぞ。手の数が六個ある。白い小さな手があった。

手を出した主は黒いスーツを着た俺らとは違って白いワンピースを着た少女が笑顔で立っていた。同窓会にいたのはこの子だ。


「あんた。誰よ」

「もしかして迷子じゃない?」

「まさか大仏、幽霊駆除じゃなく出現の儀式をしたんじゃない?」

「そんなこと言ったって……卵なんだもん。それに幽霊だったら人に被害を与えるし……」


彼女は彼らのやり取りを遮るかのように言った。


「私、迎えに来る人を待っているの」

「そうか。じゃあ念のため名前教えてよ。嫌ならいいけど」

「……分かった。おうしげここっていうの」

「どんな字を書くのかな」

「王様の『王』に茂みの『茂』子供の『子』が二つ」

「へぇー。珍しい名前だね」


 私が聞いたら彼女は答えていった。彼女が言うには『王茂子子』と書くようだ。

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