猫町さんのお土産
今日は、猫町さんが缶詰をくれました。
猫町さんは猫山駅の助役で、難しい仕事はみんな猫町さんに取りしきってもらっています。シルバーの虎白で、ノルウェーの森にいそうな長い毛をしています。
缶詰は、旦那さんの海外出張のお土産だそうです。
「お猿の駅長さんにって、買ってきてくれたのよ」
猫の世界では人間は猿の一種だからまあいいとして、猫町さんは喋りだすと長いんです。
「南の国ではね、お猿さんが街中を普通に歩いているんですって」
「そうなんですね」
「なんでも、神様の使いだとかで、大事にされてるんですってよ」
「そうなんですね」
人間の世界にいるときにも似たような話を聞いたことがある気がしますが、今の私は、猿側の立場です。
「取引先の重役が、王様のいとこのお嫁さんの妹の旦那さんなんですって」
「そうなんですね」
「宝石をいっぱいつけた帽子をかぶってたそうよ。部屋の中なのにね」
「そうなんですね」
「コーヒー専門のお手伝いさんが、コーヒーを入れてくれたんだって。あっちのお金持ちは違うわね」
「そうなんですね」
最後には、
「旦那は出張ばっかりで、家のことはほとんど私。ほんと、大変だわ。まあ、たんまり稼いでくれるからいいけれど」
「そうなんですね」
「上の息子がほら、受験生でしょ。塾やらなんやら、やっぱりお金は大切よね」
「そうなんですね」
ちなみに、猫村さんのくれたのは、南の国のマンゴスチンの缶詰でした。もちろん、おいしくいただきましたよ。